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王女様と5人の騎士   作者: わんわん大好き
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決闘4


「あ、帰ってきた。ほら、マント着けて。開会式行くよ。」


陣地に戻ると、青い薔薇のエンブレム要りマントを渡されたエリオットは先程のことをセリシウスに報告しようと口を開いた。


「あの!セル先輩!先程……!」


「やっほ~!枯れ薔薇のみんな~♪」


自信の後ろから突然声がしてビクッと驚いたエリオットの後ろから手を振りながら現れたのは先程ぶりのシオンであった。


び、びっくりした……。


背後に立たれていたなんて……全く気配を感じなかった……。


シオンの声に反応したエリオットとパトリシア以外のメンバーは人を殺せる程の眼光でシオンを見た。



「し、シオンさん……。」


「パトリシア様~!!!俺のプリンセス!!逢いたかった~!!!」


花が咲いたように笑ったシオンはパトリシアに抱きつこうと走ってパトリシアの方へ向かったが、彼女の騎士たちがそれを赦すはずもなく、シオンの前には四人の壁が立ち塞がった。



「はぁ?邪魔なんだけど。」


「こっちの台詞だから。ウザいから殺していー?」


「セル君、俺にやらしてよそれはー。前に情けをかけて半殺しにしてあげたのに、懲りずにまた来るとはね。今回は本当に殺っちゃってもいいよね?」


「おーおー!!殺れ殺れー!俺はそのどさくさに紛れてコイツの髪を削ぎ落としてやる!」


「三人とも物騒なこと言わないの!お嬢様の耳が汚れるでしょ?シオンちゃん、悪いことは言わないから、この場は退いてくれないかしら。」



好戦的な三人とは違い、マキナは穏便にこの場からシオンに退場してもらいたく言った。


その気持ちはパトリシアも同じで、そもそもパトリシア自身元来争うことを好いてはいないのである。




そして何より忌々しい三年前の内戦の記憶が昨日のことのように思い出されるからだ。




「マキナっちは相変わらず他の連中と違って血生臭くないよね~。」


「あら、乙女だもの当たり前でしょ?」


「そのキャラはどうかとは思うけどね。まあ、何にしても俺の目的はまだ果たされていないからね。帰れないよ。」


「目的……とは?」



ちょこんと脇から頭を出したパトリシアがそう問うと、その仕草を見たシオンは目を輝かせ、さらに頬を紅潮させた。


「俺のプリンセスにこれを書いてもらうことさ!

!!!」



そう言って差し出した紙をパトリシアが受け取ろうとすると、その前にセリシウスがそれをシオンの手から奪い取った。



セリシウスの手のなかにある紙には『婚姻状』と書かれていた。


「………………。」


「せ、セル先輩!!恐いです!!何も言わず抜刀しないでください!!!」


「ははっ!俺の方から死刑宣告してあげるよ~糞狼。」


「ルイ先輩も落ち着いて!!」


「あ、枝毛。」


「団長もお嬢様の毛繕いをしないでください!!この状況で!!」



まだ決闘も始まっていないというのに何なのだこの疲労感……。


エリオットは頭を抱えて、先行きが不安で仕方なかった。



「さぁ!!パトリシア様!羽ペンも持ってきてあるよ!」


「シオンさん……あの……。」


「アホ犬、それ以上お姫様に近づいたら頭落とすからね。」


「俺がついでに胴体真っ二つにしてあげる♪」



詰め寄ろうとするシオンに切っ先を突きつけるセリシウスにパトリシアは止めるように声をかけようとしたそのとき、開会式を知らせる鐘が鳴った。



「ほら!時間よ!!みんな並ばないと!!」


「そうですね!!さぁ!お嬢様、お手をどうぞ!」



何とか場を切り抜けようとエリオットが差し出した手にパトリシアは自身の手を重ねた。



「ああ!!パトリシア様!!!」


「エルくん!!何、新人の分際でお姫様をエスコートしてるわけ!?」


「シオンさん、何度もお話ししていますが、私はあなたとどうこうなることはこの先も絶対にありませんので、お引き取り下さい。このように何度も来られても正直迷惑です。」


「そんな!!未来のことを今お決めになるべきではありませんよ!!それにこんなに美形な俺を好きにならない女性がいるとは思えませんし!」


「いえ、だからあの……。」



納得してほしいのに、いつもシオンはパトリシアの話を聞かない。


いや、聞いてはいるが、決して肯定はしないのである。



「お嬢が迷惑だっていってんだから大人しく斬られてくれる?」


「る、ルイ先輩……。(殺すという前提は変わらないのか)」


「第一、こんな美しいプリンセスにむさい男が五人も群がってるなんて耐えられないよ!!」


「あーら、失礼しちゃうわ~!私は乙女だっていうのに~!」


「マキナくんキモいよ。でも、そうだね。お前んとこの騎士団の男たちの方がむさ苦しくてキモいんだけど~。」


「俺たちはあんたらの騎士団とは違って王宮のメイドにもモテるしね~。まあ、お嬢以外は興味ないから別にいいんだけど。」



収集のつかない会話にエリオットはため息を吐いた。


「何にしろ、もう行かなければ時間が迫っています。皆さん、あまりお嬢様を困らせないで下さい。」



最年少であるエリオットにそう言われ、その場にいた青の薔薇の面々は黙った。


しかし、そのエリオットの発言にまでシオンは気に食わないといった顔をして文句を言った。



「君さ、ちょっと生意気なんじゃない?パトリシア様の私物は持ってるわ、先輩騎士を注意するわ。」


「な!?紳士たるものお嬢様の事をもっと考えなければと!!」


「どこの誰だか知らないけどさ、俺、君みたいに正論でしか生きていけないような奴嫌いなんだよね。まあ?青の薔薇ってだけで反吐が出るけどさ。」



腕組をしながらそう告げたシオンは先程までのおちゃらけた雰囲気とはうってかわって鋭くエリオットを睨み付けた。



「気が変わったよ。俺も決闘に出るよ。」



嫌な笑みを浮かべながらそう告げたシオンにその場の空気が変わった。



「うっすらとしかルールは聞いてないけど、君たちは一人10人ずつ相手するんだっけ?なら俺はこの紳士くんに相手してもらおう。」


「っ!!??」



蛇に睨まれた蛙の気分だった。



「ちょっと!流石に見てらんないから!!そんなこと許すわけないでしょ!!観客席に大人しく座ってなよ!!」


「そもそも、俺の騎士団だよセリ~。決闘を仕掛けたのはうちの下っ端だけど、俺も惨めにうちの騎士団が偉そうなこと言ってるこの新人騎士に負けたなんて不名誉なレッテルを貼られるわけにはいかないからね。」



見下すような視線にエリオットはシオンを睨み返した。



「わかりました。私の相手はあなたで構いません。」


「ちょっと!エルくん!!」


「セル先輩、私も騎士なのです。」


「は……?」


胸に拳を当て、エリオットは叫んだ。


「負けるかもしれないから逃げるなんて無様な事はするわけにはいきません!!騎士たるもの最後まで相手に背中は向けたりしません!!」


そう言ったエリオットにセリシウスはため息を吐いたが、マリウスはそんなエリオットの背中を叩いた。



「よく言った!!お前は本当にいい騎士になる!!」


「だ、団長!!」



こうして、決闘が開幕するのだった______



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