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王女様と5人の騎士   作者: わんわん大好き
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決闘 2


「そういえば、エルは“魔力”の適正はどのくらいあるんですか?」


闘技場に向かう馬車の中でふとパトリシアに問われた質問にエリオットは気不味そうに視線を逸らした。


「その……魔導士が言うには…限りなく0に近いそうです…。」


「へー、珍しいねー。ハインズ家は代々強い魔力持ちが生まれる家系なのに。」


「セルくんはお家の血を色濃く受け継いでるしね~。」


「家の血とか言わないでよ。虫酸が走る。俺は家とか関係なく優秀だからねー。」



“魔力”とはこの国の人口の一割程しか持って生まれる事のない能力のこと。


後天的に着くことは無く、生まれたときに有無はハッキリとしている。


エリオットの家は家系的に魔力を絶やすことの無いように結婚も政略的なものにし、子孫までその力を代々繋いできた。


しかし、どういうわけかエリオットにはその力が現れることは無かった。


兄にはしっかりと現れ、同じように両親の血を継いでいる自分には現れなかったため、ハインズ夫人は不義を行ったのでは?と一時問題になった。


しかし、これまた強い魔力持ちの“宮廷魔術師”に真偽の占いをしてもらうと「不義は行われていない」と判明したため、エリオットは幼少期には親戚中から“失敗作” として扱われていた。


しかし、そんななかでも幸せに暮らせていたのは、そんな失敗作でも愛してくれる家族と使用人たちがいてくれたからであった。



「セル先輩はどのような魔力があるのですか?」


「俺のは氷だよ。液体なら何でも凍らせられるの。何もない所とかからは出せないけど、この相棒があればそれも可能なんだよ。」


そう言ってセリシウスは自身の剣を見せた。


全体が銀の薔薇で細工されており、鍔の部分に蒼い宝石が埋め込まれている。


「それは…魔石ですか…?」


「うん。一番相性のいいのを魔術師から貰ったんだよ。」


「凄くセーちゃんにピッタリな剣よね~♪」


「ふん。」


セリシウスはロード公爵家の長男だ。

剣術だけでなく、魔力の才もしっかりと持って生まれ、勉学に関しても大臣をあっと言わせる程の天才で有名だった。


ロード家は安泰だと言われていたが二年半前に突如として冷遇される王女の騎士団に入団したため、一族皆が卒倒した。


本人はその理由を言わないため、どうしてなのかは不明である。



「実は俺も“魔力”持ちなんだよ~。」


「え!ルイ先輩もですか!!??」


「とゆーかね、この騎士団は私とエルちゃん以外は魔力持ちなのよ~♪」


「え!ええええ!!!!???」


「うっさいなー。捨ててくよー?エルくん。」


「す、すいません…。ということは、団長も…?」


「あいつは当たり前でしょー?聖剣の愛し子なんだから。」


「それは…そうですね…それだけの才能があっても当たり前ですよね…。」


「うん?俺がどうしたって?」



セリシウスとエリオットが自身の話をしていることに気づいたマリウスは馬車の窓から視線を中の方へ戻した。



「話に入ってこないと思ったら全然聞いてなかったの…。」


「怒らないでよ~セル。いや~、多分今日は“アイツら”来ないんだろうな~と思ってさ。つまらないな~。」


「まあね。こういう下っ端のいざこざに顔出さないでしょうアイツらは。」


「アイツら…とは?」


エリオットだけが首を傾げていると、セリシウスはため息を吐いた。


「エルくんさ~、一日とは言え、金色の狼にいたんでしょー?あらゆること知らなすぎて、溜め息しか出ないよー?」


「す、すみません……。」


落ち込むエリオットにその隣に座るパトリシアは声をかけた。


「セル、そう言わず、教えてあげればいいではないですか。エルもこれから沢山知っていけばいいのですよ。」


「お嬢様……。」


「はいはい、エルくん、一秒以上お姫様と視線を合わせないで。闘技場に着く前に斬りたくなるからー。」


「セルくんってば、男の嫉妬は見苦しいよー?」


「ルイくんだけには言われたくないよ。それで、アイツらはってのは金色の狼のトップ三人の“シオン”と“キリシア”と“クロード”のこと。」


「トップ…ですか?」


「そう。挨拶とかしなかったの?」


「一日目にしに行きましたら、「面倒くさい」と言われ、部屋にすら入れて貰えなかったので、お会いしたことは無いですね。」


「あっそう。アイツらなら言いそうだよ。でも、その実力は確かだからね。他の下っ端とかとは比べ物にならないから。あんなに腐った第二騎士団の予算が減らせないのもあの三人がいて、財務が手出せないからなんだよねー。」


「な、なるほど……。」


「まあ、アイツらは今日は来ないんでしょ。なら、いつも通りで秒で終わらせればいいよ。」


少し癖のある青褐色の髪をかきながらそう言ったルイスにパトリシアも安心したように頷いた。


しかし、その中でマキナだけが嫌な顔をしていた。


「あのね?こんな事をこの空気言うのもなんだけど……今日……シオンちゃん非番届け出していたのよね…。」



その発言にその場の空気が凍りついた。

だが、またもその中でエリオットだけが状況を理解していなかった。



「え、待って。お嬢、屋敷に戻って。」


「で、でも…決闘は主が絶対参加ですし…。」


「ダメだよお姫様。アイツ、絶対来るよ。」


「100%来るな!」


「お嬢様が危ないわ~。」


「あの~、何度もすみません……。私だけ話が読めないのですが……。」


居づらそうに手を挙げたエリオットにマキナが説明をしようとしたとき、馬車が止まった。


「到着いたしました。」


運転手がドアを開け、エリオット以外の皆が溜め息を吐いた。



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