エルくんの理想と現実
はじめまして。騎士の逆ハーレムに憧れて妄想を綴ります。
「お帰りなさいませ。エル坊っちゃま。」
「ええ、ただいま帰りました…。」
「……!!坊っちゃま!!そのお顔はどうなさったのですか!!!」
「う…これは……、」
昼間の事を思い出し、ため息を吐いたエリオット・ルーヴ・ハインズは念願の王子付き騎士団に合格し、本日初出勤であった。
だが、彼の憧れた騎士団とかけ離れたその風紀の悪さに彼は先輩騎士に物申してしまったのであった。
そして、「新人のくせに歯向かうな」ということで、いいのを一発頬に食らったのであった。
エリオットの憧れた騎士とは尊敬すべき主人に忠誠を誓い、命をかけて主を護り、どんな時も紳士として振る舞うというものであった。
それなのに、いざ、蓋を開けてみると、主人である第二王子は政を全くしなく、割り当てられた資金で従騎士たちは豪遊していたのだ。
理想と現実の違いに生真面目な彼は堪えられなかったのだ。
「エル坊っちゃま!!誰です!!坊っちゃまにこのような真似をしたのは!!!わたくしが殺って参ります!!」
「やめて下さい。クロード。」
僕の執事であるクロードは幼い頃から僕に仕えていて、かなり過保護である。
それはもう、うざったいほどに…。
「そんな!!このクロード、我主にこのような真似をした者を許すことなど出来ません!!坊っちゃまはハインズ公爵家のご子息なのですよ!!」
「落ち着いて下さい…。もう、従騎士になったのだから甘やかさないで下さいクロード。」
メイドが持ってきた濡らしたハンカチを赤く腫れる頬に当てながら、エリオットは自室に入った。
明日もあの場に行かなければならないのか…。
体格にもあまり恵まれ無かった僕は勇ましい叔父上のような立派な騎士になりたくて、幼い頃からずっと鍛練してきた。
なのに……全て無駄になったような気分だ…。
現在王国には王の御子として第一王子にカルディア殿下、第二王子にウィリアム殿下、第一王女にパトリシア殿下がいらっしゃる。
この中でパトリシア殿下だけが母君が違う。
正室の王子二人からはかなり冷遇される立場にあるせいか、王女殿下に仕える騎士は4人しかいない。
まあ、その誰もがかなりの腕であるのだが……。
パトリシア殿下にもお会いしたことは無いのだが、気難しい方であると噂されている。
「叔父上……こんな筈じゃ無かったんだけどな……。どうしたらいいのだろうか……。」
ベッドに横になり、明日を憂いながらエリオットは目を閉じた。
続きます。