表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ】追放された悪役令嬢は断罪を満喫する  作者: ミズメ
第二章 エンブルク王国 前編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/100

28 娼館を買いましょう その1

「……なんだって?」


 わたくしの提案に、流石のお兄様も目を丸くする。それもそうだ。突飛な提案であることは自覚している。


 一度深く息を吸い、それらを深く吐き出すようにしたあとわたくしは再度先程の言葉を口にした。


「王都にある娼館をひとつ購入しようと思っています」


 ユリアーネさんから話を聞き、わたくしが出した結論がこれだ。


 彼女の話によれば、ヒロインのハッピーエンドで断罪される悪役令嬢は、前作よろしく娼館送りになる。

 エレオノーラ様は今回の流れに全く関与していないし、あの王子がそんな事をするはずがない。だが、不安の芽は摘んでおくに限る。

 わたくしがそうだったように。


「あとは……娼館の顧客の中に、どうしてもしっぽを掴みたい人物がいるので、大元を抑えたくて」


 今回、最も危険なのはローザさんだ。

 本当にゲームどおりになるかは分からないが、それでも"男爵の愛人ルート"という謎の展開は断ち切っておきたい。


 ユリアーネさんの話では、その男爵は社交界では有名な"好色家"らしく、娼館にも通いつめているそうだ。


 ……令嬢たちの耳に届くほどの変態ってどういうことなの。絶対やばい人物だ。

 そんな人に、あの純真なローザさんが望んで嫁ぐなど有り得るのだろうか。


 事実を知るために娼館に潜入することも考えたけれど、そんな事がわたくしに出来るはずも無い。

 であれば、堂々と正面から"自分のもの"にするしかない。


 お兄様はわたくしを真っ直ぐに見つめる。


「ディー。いくら侯爵家に財があると言っても、娼館は安い買い物ではないよ?」

「はい。承知しております」

「だったらどうして……」

「賠償金と、向こうの娼館から得た利益があります。娼館を買うにあたって適当なお金かと」


 侯爵家の当主はお兄様だ。その心配は妥当であり、わたくしも家の財産を使うつもりは毛頭ない。


「ふふっ、相変わらず思い切ったことを考えますね、オーナーは」


 兄妹の話に割って入ったのはセドナだ。


「私もお手伝いしますね」

「セドナ! 君は……」

「あら。私は娼館の()オーナーですよ? 経営のことはディアナ様より詳しいです。お力になれるかと」

「そうではなくて……」


 お兄様とセドナのやり取りをわたくしは見つめる。こんな風に焦った様子のお兄様は、初めて見たかもしれない。


「それで、オーナー」


 お兄様はそのままに、セドナはにこりとわたくしの方を向いた。


「お話を詳しく聞かせていただいてもいいでしょうか? その"しっぽを掴みたい人物"について」

「ええ。もちろん。むしろわたくしも、もっと情報が欲しいの。セドナも知っていることがあったら教えてちょうだい」

「ふふっもちろんです」


 そうしてわたくしは、ユリアーネさんから聞いていた話を皆に共有することにした。

 もちろん、乙女ゲームであるということまでは細かには説明はしない。


 エレオノーラ様とローザさんの近辺で怪しい動きがあること。それを阻止する為に、娼館を購入したいこと。これらの話が信頼できる情報筋からもたらされたものであること。


「俺のお墨付きの情報筋なんで間違いありません」


 クイーヴがそう添えてくれたことで、お兄様とセドナの信頼は爆上がりしたように見えた。


 そして、そのヤバそうな男爵の名を告げたところで、セドナが顔を曇らせる。


「……スワロー男爵、ですか」

「セドナ、何か知っているの?」


 そう尋ねると、彼女はどこか悲しさを含んだような曖昧な笑みを浮かべる。


「我が家の没落後に取って代わるように叙爵(じょしゃく)をしたキュプカー家の話はしましたよね? 商家の時からその家と懇意にしていたのがスワロー男爵家だと風の噂で聞きました」

「まあ……」

「ふうん。そこに関わってくるとなると、なんだかきな臭いね。よし、ではここはディーの提案に乗ろう。それから……うーん、そうだなあ、そうなってくると、私も手を打ちたくなってくる」


 先程までは反対の素振りを見せていたお兄様も、セドナのひと言で方向転換したらしい。


 何やらテキパキと書をしたため始めたかと思えば、クイーヴに言付けてどこかへと配達に行かせた。


 空の色は赤から薄い紫へと変化しており、もう夜に差し掛かる。そんな時に、なんの手紙だろう。


「なんだか大掛かりになりそうだから、ディーの騎士たちにも応援を依頼しておくよ」

「はい……? 騎士……?」

「こちらの味方は多い方がいいからね」


 パチリとウインクをするお兄様は、相変わらず美麗だ。その横で、セドナがやれやれと言った表情を浮かべている。


「ランベルト殿とアレク君だよ、もちろん。使えるものは何でも使おう!」

「お兄様……」


 なんて思い切りのいい……。

 半ば呆れつつも、わたくしは思う。


 お兄様があてにするということは、信頼しているという事だ。

 そこにあの二人が加わっていることに、どこか嬉しい気持ちになった。

お読みいただきありがとうございます。

本日コミカライズの更新日です。どうぞよろしくお願いします。そして2巻が12月に出るようです๑ ᷇ ᷆๑)♡


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミックス情報】

追放された悪役令嬢は断罪を満喫する 6巻

“ alt=

ついに6巻が発売されます。よろしくお願いします!

◤双葉社さま公式サイト ◢
漫画/茶園あま先生
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ