勇者達は脱出を試みる2
迷宮の攻略が始まって6時間ほど経過した。
坂藤や鈴坂、翁力院達はサポート系のスキルもあってか既に疲弊し始めている。
だがそれよりも、それよりも重要なことが一つだけある。
これは迷宮ではないということだ。
先ほどから進める道は一つだけ。
壁画が描かれている道のみだ。
その道は真っ直ぐ続いておりもはやただの通路となっている。
「これ、結局のところ迷路でもなんでもないただの遺跡っていう感じか?」
「そうだと思いますよ。ですが私たちをここに拉致した者はここは迷宮であり魔物も出ると言っていたのですから警戒は怠らないようにしたほうが良いかと」
「でも魔物も出ていない」
「でもさ〜、これが遺跡だと仮定してなんであの天の声野朗はオレ達をここに連れてきたのかな?」
「この壁画の内容を伝えたかった。もしくは足止めをしたかった」
「それよりも、あいつは他の勇者が大変なことになっていると言っていた。お前達は急ぐ必要があるんじゃないか?」
「まあ、そうだな」
その言葉に緩みかけていた空気が再び引き締まる。
その時、翁力院が何か気がついたように通り過ぎかけた曲がり角を見つめた。
「シャネルさん。一ついいですか?」
「なんでしょうか?」
「あそこの通路に何かしらの攻撃魔法を打ってみてください」
「わかりました。いいですよ」
シャネルさんが無詠唱で火の玉を発射する。
すると壁が盛り上がりその魔法を食べた。
「っな!?」
「なるほど擬態捕食口・壁か。魔物が多いということはそういうことだ」
「どんな魔物なんですか?」
「ミミックの種類は多くてな。壁や床、宝箱とか扉とかに擬態して近づいたものを食らう魔物なんだ」
「口だけの魔物でして倒し方は爆発系魔法や毒を食べさせれば勝手に死んでくれますよ」
「つまり、この道以外は全部魔物ということか」
「スズサカさんの音で調べるスキルも私の探知魔法も基本的に物を調べる魔法ですから気が付かなかったということですね」
「あ、壁画が途切れてるぞ」
「それはつまり、、」
「ここで行き止まりということか?」
「いえ。違います」
連れ去られたどの人とも違う凜とした声。
その声を俺達召喚された勇者は聞いたことがあった。
聞き覚えのある声に壁画が途切れている方向に私たちは振り返る。
その声の主はアゼルア王国第一王女、ミリーナ・フォン・アゼリアだった。
「どうしてここに?」
「それはこちらのセリフですよ。どうしてこのような場所にいらっしゃるんですか?」
「私たちはあなた方の指示の通りこちらの『紅蓮疾風』のお二人の講義を受けようとしていた所、地面が隆起して私たちを飲み込み気がついたらこの迷宮の前についていたのです」
「何故?と言いたい所ですがまずはここを出るのが先ですね。ついてきてください」
ミリーナ王女についていき通路を進む。
少し進んだ所に扉があり、ミリーナ王女を待っていたかのように自動的に開いた。
「ミリーナ王女殿下。謹んでお聞きしますがこの迷宮は一体どのような場所なのですか?」
「これの存在がばれてしまった以上説明しないわけにはいかないでしょう。ここは王城が襲撃となどで危機的状況になった時に王族が脱出できるように作られた逃走用通路です」
「本当にそれだけ?」
「坂藤。やめておけ」
「いえ。逃亡用通路というのはただ単に副次的な物に過ぎない。それだったらもっと複雑になるし壁画は必要ない」
ミリーナ王女が立ち止まる。
「ミリーナ王女」
「坂藤さん。それ以上は、、、」
流石にこれ以上はまずいと感じたのか、静恵が坂藤さんを止めに入る。
「“これ”は何?」
沈黙がその場を支配する。
私には坂藤さんの言っている質問がよくわからなかった。
他の五人もよくわかっていないと思う。
ミリーナ王女と坂藤さんしか意味のわからない会話。
風の音が反響しだんだんと大きくなっていく。
「分かりました。説明しましょう。ですが、それは他の十大勇者の方々がそろってからでよろしいでしょうか?」
「構わない」
ミリーナ王女が歩き始める。
それについていきながらも私は坂藤さんの隣に行く。
「坂藤さん。一体何の話?」
「話されたらわかる」
「だからこれって何」
「あれはあれ。今は知らない方がいいかもしれない」
「それはそうとして坂藤さん。流石に今のは失礼に値しますよ。以後気をつけて下さい」
「わかった」
そのあとは、誰もしゃべらなかった。
「むりぃぃぃ!!!」
水花さんの聖法が幽霊?を消滅させていく。
水花さんが壁を一直線に打ち抜いたあと、幽霊のような魔物が大量に集まってきた。
その時突如水花さんは叫び声をあげ全力で魔物を駆逐していった。
私は特に何もしていない。
何かやろうとしてもその前に水花さんが魔物を消滅させるからだ。
「来ないでぇぇぇ!!!」
「水花さんって幽霊苦手だったんだ」
「なんか新鮮だね」
「ちょっと水花さんを誰か正気に戻してくれないかな?ちょっとこの魔物を使役してみたくなったから」
「無理だな。近づいた瞬間に消されるぞ」
「霧島。周囲の魔物は後どれくらいいるんだ?」
「ほぼ全滅だ。この砦の反対側以外はもういない。魔物に関してはこのまま水花に任せておけばいいだろう」
それから五分して魔物は全て消え去った。
「はぁはぁはぁはぁ。疲れましたね」
「あれだけ暴れたらさすがに疲れますよ」
「それよりも早く船に行きましょう」
「さらっとさっきの奇行をなかったことにしようとしている気がする」
男子たちは軽口を叩きながら水花さんの後についていく。
瓦礫に気をつけながら歩いていくと破壊された三つ目の壁に旗がかけてあった。
気になって手に取る。
「真理究明」
視界に紋章についての説明文が現れる。
『バルレット帝国国旗の紋章:第三次人魔戦争の人類側三大大国・バルレット帝国の国旗の紋章。
各国家の軍隊の識別のために使われた物で通常は使わない』
気になるワードは三つ。
第三次人魔戦争、三大大国、バルレット帝国の三つ。
第三次人魔戦争の言葉に真理究明を重ね掛けする。
『第三次人魔戦争:魔族と人類・聖族の三回目の戦争。
魔族側が勝利を収めたが魔大陸からの魔族の上陸はなかった』
三大大国の言葉に真理究明を重ね掛けする。
『三大大国:第三次人魔戦争勃発時存在した人類の三つの大国』
バルレット帝国の言葉に真理究明を重ね掛けする。
『バルレット帝国:第三次人魔戦争勃発時存在した人類の三大大国のうちの一つ。
絶対君主制を敷いており横暴な貴族が多数存在した。
第三次人魔戦争終結後不満を持った平民が第二皇子を主軸に革命を起こし滅んだ』
多分だがこの第三次人魔戦争という出来事自体がかなり昔のものだと推測できる。
「おーい。金切りさーん!置いてくよ!」
中田さんに呼ばれて私は船がある方向に向かっていった。




