『肉喰』のグルノート
ギガントデスワームを殺した後、町の冒険者を連れた『天秤』のメンバーがこちらにやってきた。
「でけえ爆発が見えたがまさかぶっ倒したとはな」
「『雨の雫』の方たちが居ないようですが、、、」
「あいつらは今は出払ってるらしい。なんでも出迎えだとよ」
「出迎え、ですか」
「噂じゃあ高名な冒険者を町に呼んだんだとよ。ここはノーミリズ王国に最も近い町だ。噂じゃあ、あのアダマンタイト級冒険者チーム『紅蓮疾風』や『龍の逆鱗』が呼ばれているかもしれないって話だ」
「そうですか。話が逸れましたね、この中に異常状態回復薬と魔力回復薬を持っている方がいると嬉しいのですが?」
「安心しろ。大量にもたせてある」
「ありがとうございます」
「よし!荷物持ってる冒険者はこいつらに魔力回復薬と異常状態回復薬を渡してやれ!他の冒険者は森の調査だ!異変を発見した場合はすぐに戻って知らせろ!それと魔族を発見したら逃げろ!」
頷く冒険者たち。
それだけで『天秤』がどれだけ信頼されているのかがわかる。
冒険者から受け取った魔力・異常状態回復薬を飲み周囲を見渡す。
地面は黒く焦げており、焦げた匂いが充満している。
あの魔物は強く、恐ろしかった。
だが今は、それを消し去った自分の力の方が恐ろしい。
この世界が弱肉強食の原理で動いているは嫌でもわかる。
最近の訓練で魔物を殺すことにも慣れたつもりだ。
だが、生き物を助ける為の薬を作る仕事をしていた身としては、未だ微かに抵抗がある。
「さて、お前らは町に戻れ。さすがに疲れているだろう」
「よくおわかりですね。みんな、行きますよ」
「あ〜、疲れた!しばらくは嫌だね」
「さすがに肩がこる。帰ったら即寝だな」
「霧島、肩凝りが治る呪薬いる?」
「それは呪いではないだろう」
「肩が凝らなくなる呪いの薬」
「それはそれで矛盾してるな。もはや普通の薬だぞ?」
「むぅ」
「私はお風呂に入りたいですね。結構汗をかいてしまいましたんで」
「私もそうしよっかなぁ。静恵ちゃん、一緒に入る?」
「いいですけど、、、」
「よし!」
「あのさぁ」
「キュイ!」
『『『『『っ!!?』』』』』
「人の配下倒しておいて帰るなんて少しひどくな〜い?」
目の前に突然少年が立っていた。
「いつの間に、、、」
「それよりもその角、魔族だな」
「正解!」
少年の頭には3本の角が生えている。
魔族。
魔王の配下であり、さっきの発言からして恐らくギガントデスワームの使役者。
肩には一体の真っ白な、そう真っ白なドラゴンのような魔物。
「さっきの爆発、すごかったねぇ。異界の科学を基にした感じかな?でも大規模殲滅用であって対個人にはそっちの聖剣使いの方が強いんじゃないかなぁ。ま、いいか」
「何が目的だ?」
「ビランデちゃんで大人しくなればよかったんだけど、僕の目的は君たちを徹底的に痛めつける事。『五喰』第五席、『肉喰』のグルノートの名にかけて失敗は許されないからね。僕が直々にやってきてあげたんだよ」
「聖法・飛斬!」
水花さんの聖属性が込められた飛ぶ斬撃がグルノートを襲う。
「つまらないトリックだね」
グルノートが手を振ると飛斬は霧散していった。
「っな!?」
「さて、どうしようかなぁ」
「太陽弾!」
陽間さんの小さい太陽のようなものが高速でグルノートに向かってく。
「お、面白い事するね君。でもその程度じゃ僕の皮膚に焦げ目さえ入れられないよ」
圧倒的な熱量を放つ小規模の太陽はその手に鷲掴みにされて大きな音を立て爆発した。
「そうだ。君たちに今から時間をあげよう」
手を叩きまるで名案だとでも言いたげにかたり出すグルノート。
「今から5分間。僕を傷つけることができる攻撃を、僕が面白いと思う方法でやってみてよ。そうしたら僕は手を引いてあげよう」
「できなかったら?」
「その時は命令に従い君たちは痛めつける」
「君たちは、だと?つまり他の冒険者は殺すと?」
「大正解!君、頭いいねぇ」
「陽炎!」
陽間さんの姿がゆらりと消える。
「大地獄炎化!噴火!溶岩操作!」
グルノートの地面から溶岩が噴き出しその周りを黒い炎が囲う。
「消えるのは面白いけど、その技は飽きたよ」
溶岩に浸かりながらグルノートが腕をふるった、筈だ。
誰もが知覚できなかった腕は背後に回った陽間さんと気配を消し横から苦無で攻撃を仕掛けた紀ノ気さんが吹っ飛ばされる。
「次は誰かな?」
「貫通上昇!身体強化!巧妙槍術!」
「巧妙鞭術!魔力付与!痛度上昇!」
岩に突き刺さる中田さんの槍が、先端が音速を超えすべての生物に痛みを与える島津さんの鞭が、グルノートの異常な防御力によって弾き返される。
「槍君は普通。鞭は面白いけど、それは痛みを与えるものであって特に意味はないよね?」
「っく!」
「っち、固すぎるなぁ」
「五分待つの飽きたなぁ。もういいや、頑張って耐えてね?食材ノっ!?」
突如飛んできた大剣に、グルノートがその身を引く。
大剣は地面に深々と刺さっており常人でな抜けないだろう。
「『紅蓮疾風』と『龍の逆鱗』、『雨の雫』に呼ばれてきたら、希望である異界の勇者がこの様か。呼び出した本人は遅刻ときてる。滑稽な話だな」
一人のローブを着た男がその大剣を引き抜きまるでナイフのように軽々と振るう。
「その容姿、君が《魔族殺し》かな?」
「そうだが?」
「ならば、同胞を殺した報いを受けてもらうよ」
「やってみろ」
強者同士の、戦いが始まった




