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無能少年とイケメソ騎士様

作者: 変人

ブラウザの前の皆さん、おはよう

まぁ取り敢えず、自己紹介と洒落込もうか

私は皆(?)の大好きな『異世界生活物語』の、所謂主人公だよ。崇ろ。奉れ

皆も御察しの通りではありますが、一平凡な(学内変人ランキング三位ではあるが)男子中学生ことこの私は、何の説明もなく、出会いもなく、この魔法っぽい何かと人外渦巻く異世界に召喚され、大きな一歩を踏み出すのです

「と、雄々しく宣言したい今日この頃。陽の恵みが届かない地下からお送りしております....」

「私語を慎め!犯罪者!」

「ひぇっ!?わかりゃっしたぁ!」

白い鎧を身につけた男性、30歳半ばであろうか?顎髭がよく似合うその人に叱られてしまった

その声は張りのある若々しい声であったが、いかんせん怒鳴り声。恐ろしさのあまり若干呂律が回らなくなってしまった

それからは当然のだが、静けさが戻ってくる

異世界生活二日目を迎えたこの私は

今現在、傷害罪で捕まっている




昼餉の買い物に勤しむ主婦やメイド、またそれに対応し、それぞれの店で物を売る店主達の声で、街の露天は賑わっていた

ある者は値下げに挑戦していたり、ある者は物珍しい商品を買おうか迷っていたり、ある者は商品を盗み、捕まっていたりと、思い思いの行動をしている

そんな通りに、とある青年がいた

その青年が通りを歩けば、女性は振り返り、溜息をつく。男性はその姿に黒い感情を浮かべるが、やはり溜息をついてしまう

まず目を惹くのはその美貌

整った顔立ちは勿論のこと、その瞳の蒼さたるや、サファイアの如く光り、心の奥の静かな炎を、素人目にも感じさせる

次に歩き方

堂々且つ軽快、滑らかな歩みは、育ちの良さと威厳、そして人の良さのような物が感じ取れる

その二つだけでも、十分注目されるに値するだろう

しかし、彼の偉業を聞いたことのない人物はまず居らず、また国単位での有名人であれば、注目されない訳がない

「店主、この果物を五つ」

「ありがとうごぜぇやす!!!恐悦でごぜぇやす!!!」

「いつも言ってますけど、普通の客として扱って下さいよ.....」

「んなめっそうもない!!」

これまで何度と交わした会話、しかし彼の願いは未だ届く様子はない。それどころかオマケを貰う始末だ

その名は『パンドライ』

当然本名ではないが、本人が知らないと言うのだから仕方ない

「知らない風景、見知らぬ人と人じゃない何か、天候不一致.....」

彼が城から抜け出し、市場を練り歩く姿は時折見られてはいるが、騎士長という大層な名前の役職ではある

趣味が自炊という男にしては珍しい物で、調達すれば良い物をなぜか市場に来ては購入している

友人にはメイドを雇えだの、結婚しろだのと色々言われてしまうが、趣味なのだから、それは許して欲しい

「何なのだこれは.....どーすれば良いのだ.....って感じですわぁ....」

不機嫌そうな友人の顔を思い出し、偶にはご馳走してやろうと考えて笑みが漏れる

買いたい物もない、今日はもう帰ろうかと考える

が、先程から店の隣に座り、陰鬱そうにしている少年に目を向ける

身なりは綺麗だが、この店に来てからずっと独り言を呟いている

孤児ではなさそうだが、狂人や病人のソレに近いうわ言に同情してしまう

「どうした少年?迷子かい?」

「この歳で迷子とか洒落になりませんわ」

パンドライは優しく問いかけ、少年は人見知りもせずに答えてくれた

素直そうな少年だと感じつつ、話を続けてみる

「僕はパンドライ。知ってるかな?」

「何故知ってるか聞くのか分かりませんけど知りませんね」

捲し立てるような早口と抑揚のない喋り方に、やや気まずさを感じる

すると少年は、目線をパンドライの後ろの方に向け、目を細めた

釣られてパンドライも振り返ると、そこには老人が倒れていた

突然倒れたようで、老人の周囲には買った物と思しき物が転がっており、数人が気付いていた

パンドライが駆け寄ろうと思うと、少年が既に走っていた

少し呆気にとられるが、自分もすぐに老人に向かった



「ここ馬車とか通る!?」

「え!?いえ!あまり通りません!」

「OK!」

老人を見守る女性の一人に肩を掴んで問うと、うわずった声であったが答えてくれた

その女性を押す形ではあったが、老人に近付き側に寄る

「大丈夫ですか!?大丈夫ですか!!大丈夫ですか!!!!」

老人の肩を叩いて起こそうとするが、いくら強くしても、声を大きくしても意識は戻りそうにない

「誰か!!人が倒れています!誰か!!!!」

そう叫ぶと、野次馬が一気に増え、周囲にちょっとした人集りが出来る

「あんたはAED!AEDねぇな!えーっと!!なんかこう!!緊急機関とかそんな感じの呼んで!すぐに!!」

適当な人物に指を向け、そう叫ぶと、その人物は走って何処かへ向かっていった

今度はこっちだと、倒れた身体を仰向けにし胸に耳をすますが、心音も呼吸も確認できない

「胸骨圧迫初めてなんだけどなぁ...!!」

そう弱音を吐きつつ、老人の鳩尾やや上に手を重ね、圧をかける

ゴキリという音と感覚、ゴムよりも硬く、嫌な感触が手を包む

しかし一度ではやめない、二度、三度、四度と続け、十数回ほど過ぎただろうか?誰かが肩を掴んで来る

「少年!何故老人を襲う!?やめろ!!」

後ろで叫び声が聞こえる。声からしてさっきのイケメソだろう

しかしここでやめる訳にはいかない

イケメソの手を振り払い、三十丁度で一度止め、右手で鼻をつまみ、左手で顎を少し持ち上げる

続けて老人の口と自分の口を重ね、空気を二度送り込む

老人の胸が上下するのを確認し、再び胸に圧をかけ始める

するとどういうことだろうか、肩に再び手が掛けられた

今度は一人でなく、多数の手が

当然何人もの力に勝てる筈もなく、そのまま後ろに倒され、大人数に押し込まれる

「怪しげな儀式なんぞしおって!」

「暴力を許すと思うな!」

思い思いの声が聞こえる中、「違う、離せ」という叫びは届くことはなかった

しかし全く動けなくなる中、先程のイケメソが老人へと近付き、何かを振り撒いた

するとどういうことだろうか、人の影と意識の靄に埋もれる視界の中で、老人が体を起こし、イケメソに感謝していた

(良い所奪って行きやがった...)

そして薄れていく意識の中、私はイケメソに怒りを覚えた



そんなこんなで

上を見ても、左右を見ても、当然下を見ても石。暖かさなんて一つも感じない

隅ではカビと思しき物が繁殖している、あるいは苔的なサムシングがもしれないが、調べる元気はない

精神衛生にすこぶる悪いし、身体衛生にも当然悪い

吐息は気温によって白く濁り、体は熱を生み出そうと震えて、ベットが軋む

その度埃が部屋を舞い、密室は埃を追い出す術なく充満を許す

そんな最悪な部屋で心細い思いをしていると、閉塞感を醸し出していた鉄の扉が重々しく開き始めた

しかし希望は湧かない。知り合いもいないし、第一、二人部屋なので新人さんが来るだけとしか考えられない

そんなブルーな気持ちで居ると、門番である30歳半ばのその人の声が部屋に響いた

「出ろ、釈放だ」



「ここで待ってろ」

何故か妙に綺麗な部屋に通され、椅子に座らされる

見たところ窓はなく、出入り口は一つだけ、しかし椅子はソファのようなもので、机も頑丈そうだ

ぱっと見、応接室のような部屋に通された訳だ

面会でなく釈放の筈

目の前に書類はなく、手続きはなさそう

そして私は現在『暴行及び怪しげな儀式未遂』という不名誉極まりない烙印を押されている

ならば、釈放は可笑しな話でしかない

取り調べの記憶は9割覚えてないが、終わってから取り調べのオジさんは溜息と舌打ちをしていた

色々訳がわからないというのが正直なところだ

思考を巡らせていると、扉が再び開き、人が入ってきた

金髪で高身長、爽やか顔で目がブルー、そして良い所を奪っていった気品高そうな青年、通称イケメソだった

イケメソは私の顔を見ると、気まずそうに笑う

「そんな顔しないで欲しいな。一応恩人だよ?」

そう言いながら目の前に座るイケメソ。多分私は死ぬ程嫌そうな顔をしていたのだろう

まぁ隠すつもりは毛頭ないが

「まぁそれは有難うございます。それで?何ですか?私に用ですか?」

「えぇ、まさに。貴方が老人にしたことについて、少し気になりまして」

やや煽り口調になるが、気にも留めない態度に少し気味悪さを感じる

しかし、聞かれて答えない訳にもいかず、イケメソに自分の知る胸骨圧迫について説明することにした

なるべく事細かに、説明漏れのないようにと、全てを話す

イケメソも、話し終わるまで何も質問知る事なく、真剣な表情で耳を傾けてくれた

まぁ事細かにし過ぎて「臓器ぐらいは知ってるよ」など色々突っ込みは入ったが、無事説明を終えることができた

「って感じなんですけどぉ↑....質問とか..........そんなサムシングは?」

不安のあまり、よく分からない事を口走ったが、イケメソは少し考える素ぶりを見せ、口を開いた

「.....酸素というのは、大気中の魔力の一種なのか?聞いたことがない」

「あぁ元素系統の知識はないのね.....でも、んなこと言われても知りませんし、魔力的な何かと言われたらまぁそんな気もしますけどねぇ」

パンドライは博識な訳ではなかった

しかし学は積んでおり、それなりの素養もあるが、聞いたことのない話に不気味さを覚えていた

「その胸骨圧迫....というものの証明は出来るか?」

先程の少年の説明を信用していない訳ではなかったが、どうしても摩訶不思議な話としか思えず、ホラ話の一種かもしれない

そういった思考から質問すると、少年は腕組みをし、「私は今考えています」とアピールするように首を傾げた

邪魔せずに待っていると、腕組みを解いた少年は顰めた顔をしながら口を開けた

「.....存在定義は簡単ですね。出来るかは分かんないですけど」

そうして、異世界少年と騎士長の胸骨圧迫証明物語は始まった



「いやはや大変でしたね。植物実験で証明したことを、ネズミを使った実験で利用したり、火を使って説明したり....でもコレで酸素という存在は定義できましたよ」

「君が瓶に火を入れて蓋を閉めたり、植物とネズミを一緒に入れて暗闇に放置したりした辺りは、正直何をやってるのか分からなかったけどね」

「これ....説明するなら教科書で1発なのになぁ....絶対無意味だよ....」

「何を言ってるのやら....少年、君は世紀の大発見をしたのに誇らしくないのかい?」

そうパンドライは背中を叩いてくれるが、全然嬉しくない

今時、こんな証明小学生でも出来る。問題は魔力と酸素は≠を認めさせることと、何を証明したのかを明確に説明する事だけ

しかも、それを加味しても中2で説明できるだろう

パンドライを含め、国王にすら賞されたものの、気恥ずかしさのあまり死にそうになる

説明するんじゃなかったと、心の片隅でぼやく私だった

いやはや、雑終わり、雑短編申し訳ない....まぁ証明編はやる気があればやりますが......需要は皆無なんですよね

ともかく!読んで下さりありがとうございました!またお疲れ様でした!

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