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絶望少年と希望少女  作者: 塩入り水
絶望の始まり
4/4

理解されない少女と理解できない少年

 ローク=ディスペア

 彼には祖母以外に隠してることがあった。

 ある者はそれを奇跡と呼んで崇め讃えるが、

 ある者はそれを呪いと呼んで忌み嫌う。

 彼はそんな自分の消えることも、飼い慣らされることもない力を墓場まで持って行くつもりだった。

 しかしこの力と同じように人生というものには計画通りも予定調和も無いことを知ることになった。


 **************************


 手放したはずの意識が帰ってきた時、その瞳には眩むような太陽と絵の具で絵の具で塗り潰されたような青空が映り込んだ。背中からは無機物特有の硬さと冷たさが伝わってくる。

 つまり俺は現在仰向けの姿勢で屋上に放置されていた。

 これ以上仰向けになってても意味が無いと思いこんなことになった経緯を思い出そうとするが…


「駄目だ…全く思い出せない」


 思い出そうとしても頭には「袋」「白」「パンツ」の三つのワードしか浮かばない。というか俺は覚えてない間に何をしたんだよ。

 もはやこれ以上壊れた脳みそで考えても無駄だと思い体を起こそうとした瞬間、背後から鼓膜を破るような爆発音が発せられる。


「やっと起きたわねローク=ディスペア」


 どうやら爆発音の正体は扉を開いた音らしい、

 飛び散る破片と背中に突き刺さる狂器(凶木)でわかる。

 さて、なぜか後ろの相手は怒りと羞恥に満ちた声が聞こえる…


「本当に申し訳ないんだけど、ここまでの記憶がほとんどぶっ飛んでるんだよ…って危ねぇ!?」


「ああんた私のパ…パンツ見たいて忘れたって…!!」


 あ、思い出した。


「お前は確かホワイトパンツァーホープ=カプリース」


「誰がホワイトパンツァーだ!!」


 **************************


「一つ覚悟しなさい!ここからはあなたには人権も拒否権も無くなるわ!!」


 未だ爆発の煙が漂っている中またも教室と同じように仁王立ちで宣言された。あまりの勢いとカリスマについ承諾してしまいそうになるがなんとか我に返ってくる。


「ふっふっふっ…いきなりのことで驚いてるようね」


「だけれどあなたは私を満足させる義務があるよ!」


 反論しようとするが全く隙がないのでいつまでたっても切り出せない。


「私はねとにかく面白いことが大好きなの!」


 もう勢いが強すぎて軽い後光が見えるような気がする。


「あなた今朝面白いことしてたでしょ!」


 一瞬、空気が凍りついた。

 相手もそれを感じたせいか先ほどまで暴れた牛のように手のつけられなかったホープが口が止まる、悪魔に憑かれたような形相で諦めを混ぜた言葉をボロボロと吐き出し始めた。


「面白いこと?そんなんただ人に親切したかっただけだ、そこにはお前の望む面白いことも何も無いただの日常だ」


「じゃあなんでそんなに苦しそうな顔であんたは生きてるの」


 いつの間にか背中から出ていた後光は消えていた。

 だが、その代わりに突き刺すような視線でこちらを見ている。


「知らねえよ、仮に知っててもお前に教える義理はねぇよ」


 そう言うと今まで胡座を解いてその場から立ち去ろうとして無意味に爆発した扉を通り過ぎようとする。


「待ちなさい!私の光魔法が火を噴くわよ!」


 光なのに火を噴くという表現に疑問を覚えながら光魔法について脳内を探る。

 魔法

 知識を有するあらゆる生物が持つ攻撃手段であり防衛手段、大気中に漂ってる五属性のマナの一つを体内の器官を通じてこの世に発現させる。

 火、水、風、闇、光の基本属性からさらに細かく分類されているのだが確か光属性の使用者はかなり少なかったはずだ。


「本当にあなたは何なの!?」


「強いて言うなら何者でもねーよ」


「本気で答えないと本当に撃ち抜くわよ!」


 背中越しにでも分かる量のマナを一点に集めていつでも身体を撃ち抜けるようにスタンバイしている。そんな状況でも少年は少女の方を向かずに余裕を見せている。


「どうせ撃たないだろう分かりきってる事だ」


「っつ!!」


 考えを見透かされた少女はとても短絡的な考えで口から言葉を飛ばす。


「あなたもしかして能力保持者ホルダー______」


「お前だって階級制度くらい知ってるだろ」


 そう、この国には遥か昔から階級制度が存在する。

 しかし実質その制度は無いに等しい。想像してるような厳しい差別はないし、その制度のせいで理不尽な暴力を受けることもない。しかし唯一この国の階級制度の存在する理由がある。


奴隷スレイブは能力を持てない」


 それだけ言い残すと彼は屋上から出て行った。

 そうだこれでいいこうやっていつも通りの日々に戻って行けばいい、例えそれが誰も信じられないような日々でも。

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