第1話 転生
あれから約3年の月日が経った。
最初は慣れない環境で知らない言語そして赤ん坊の身体。
不可解な事で混乱したが、やはりこれは転生したという事で間違いがないらしい。
前世ではあの忌々しい病気になる前はライトノベルや小説家になったろうとかにハマっていた為、こいう事に関しては喜びを感じてしまう。
「あら、ノスト起きたのね」
と、芝生が生え茂り様々な花を咲かす我が家の中庭で、今までの生い立ちを振り返っていると、金髪翠眼の優しげな顔をしているグラマー体型の女性が現れて俺に声をかけた。
「はい。お母様おはようございます」
「ふふ、おはよう」
そう、この人こそががお腹を痛めて僕を産んだ実の母親『フローリア・アトラス』である。因みにノストというのは僕の愛称であり、本名は『メノストリア・アトラス』という。アトラス家は貴族であってそこそこの地位の家系みたいだ。
そして、この世界の言葉は最初こそ理解ができなかったが、1歳の時に前世の記憶と幼児の記憶力のおかげかは分からないがすぐに覚えてしまった。
「ふふ、ご飯の時間よー。おいで。」
と、招き手をして俺を呼ぶ。この世界のご飯はなかなかに美味しい。
というよりかは、病院でいつも点滴や直接食べ物をチューブで送り込まれていた為故にかもしれない。
▲▼▲▼
家に入って食卓にいくと、既に長テーブルには僕とお母さんの分の食事が用意されていて、隣には赤髪をポニテールのように縛り凛々しい顔で真面目そうな雰囲気を醸し出す『ラミア・レーベル』という名前のメイドさんが立っていた。
それにしても、10人は一緒に食える長テーブルに、たった2人の食事分しかないのはいつ見ても寂しいものである。
お父さんは世界に10人しかなれないA級冒険者であり、一家を支えるためにいつも難しい依頼をこなしている大黒柱のため、食卓には滅多に顔を出さない。
こうやっていい生活ができるのもすべてお父さんのお陰なのだろう。
「ラミアー、一緒に食おうよ」
流石に2人は寂しい。そう思いメイドのラミアを食事に誘う。いつもラミアは見ているだけで、食事が終わると食器だけ片付けてまた家の家事に没頭するのだ。
「いえ。私はいいので、ぼっちゃまは母様と一緒に食事を楽しんでください」
そういって断る。もうこれは10回目である。いつも誘ってもこんな風に断ってくるのだ。
仕方ないか、と納得して、僕はお母様と一緒に食事に向かってお祈りをする。
「「生の女神ライフよ、貴方に感謝を捧げん」」
この世界には6人の神がいる。
武術の神『武神スアノス』魔法の女神『魔法神マジノ』生の女神『生神ライフ』魔族のの神『魔神アクノス』鬼族の神『鬼神スサノオ』獣族の神『獣神チワノコ』
それぞれの種族は神の加護を受けていて、人間は基本的に武術の神の加護を受ける。だが、その本質的に人間は全ての神の加護を受けれるため、希に様々な加護をもつ人間……『勇者』などが現れる時もある。
今回のような、食べ物を食べる時には、必ず生の女神『ライフ』に祈りを捧げるのが人間の宗教では当たり前だと言う。
「ラミア!すごいおいしい!」
「はい。ぼっちゃまありがとうございます」
「ラミアはいつも私とノストの好きな味を理解して出してくれるのよね」
「いえいえ。私はメイドですから当たり前の事をした迄です。」
お辞儀をしてかっこいいセリフ吐くメイドであるマリア。
いつの世も、家事が出来る人はかっこいいものである。
僕も一応家事に関しては、一人暮らしに備えて一通りラミアから教わっている。そのためラミアの凄さが酷く痛感できる。
彼女は本当に欠点がない。どんな家事も迅速にかつ的確にこなすのである。
なにより、1度驚いた顔が見たくて、後ろからバレないように驚かすイタズラをしようと尾行して、角に曲がって1秒でもいなくなると、僕の背後に現れて「イタズラはまだまだですね」と言って逆に驚かすのだ。彼女は一体何者なんだ……
何はともあれ、今はご飯を食べることに集中しよう。
何故なら、今日はあの作戦を実行する時なのだから。
あの作戦が何かって?それは夜が来てからのお楽しみだ。
「あらあら、ノストちゃん。美味しいのはわかるけどはしたない顔で食べるのはおやめなさいな」
「すみませんお母様」
「ええ、いいのよ」
どうやら、夜が楽しみで仕方なく顔にでていたようだ。
▲▼▲▼
「時は来た。」
お母様もラミアも寝静まった今こそが絶好のチャンスなのだ。
僕は書斎と書かれたドアの前に仁王立ちしていた。
どういう訳かは分からないが、この書斎はラミアはともかく、息子である僕でさえ立ち入り禁止と言うのだ。
一体全体何があるのか……子供の好奇心と相まってとてつもなく興味を惹いてしまう。
「ゴクリッ」
僕は緊張のあまり唾を飲んでなるべく音を立てないようにドアを開けた。どうやら鍵は掛かっておらず、案外簡単に空いてしまった。
書斎の中は、樫の木がベースの部屋で、数々の本が本棚の中に隙間なくぎっしり敷き詰まれていた。試しに本の題名を読んでみると『勇者物語』などの様々な童話や歴史の本などが大半である。
「なんだ、別に隠すようなものじゃないじゃん。」
そう思った時だった。
「あそこ……?」
なんだか名状し難い気分に囚われる。
まるでなにかに呼ばれているような……そんな気分である。僕は原因を探ろうと当たりを見回すと1冊の本が目に入る
『アンロックの書』
…これが、僕の人生を加速させる……始まりの原因だった。
次回からがやっとファンタジーになります