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しゅうまつ☆しんかんさん  作者: ひとつ
第2話、新人のお仕事
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08、ギルドカード

 今日は太陽の日、久々の辺境都市カイラス。張り切って開門と同時にやって来たわけだが、早々に問題に気がついた。


「お、久しぶりだな。そんじゃ冒険者ギルドのカードを見せてくれ」


 太陽の日が当番なのか、初めて訪れたときに対応してくれた門番のおっちゃんが声を掛けてくれたんだが……。


「あー、それが登録はしたんですがカードを受け取ってなくて」


 先週のあの日、焦っていた俺は冒険者登録証であるギルドカードすら受け取らずに帰ってしまったのだった。そうすると当然身分証がないわけで……。


「お前なぁ。その様子だと他の身分証もないんだな? そんじゃ悪いが規則だからな、入街税で銀貨1枚だ」

「……はい」


 うーむ、冒険者なら本来は無料でカイラスに出入りできるのに、銀貨1枚損してしまった。さらに言えばゾンビなどの魔結晶もセリーヌに預けたままだし、冒険者としてやっていくならもっと金にシビアにならなくちゃいけないな。

 「さっさとカードを受け取っておけよ」と門番のおっちゃんの声を背中に受け、俺は冒険者ギルドへ向かう。

 まだ日が昇りあまり時間がたっていないからだろう、先週通った時には大通りの左右にあった露店もなく人も少ないのでたいして時間もかからずに冒険者ギルドへ着くことが出来た。


「まずはカードだな」


 朝一番のピークは過ぎたのだろう、まだ人こそ多いがぶつかることなく歩ける程度の冒険者ギルド内へ入り、初心者受付へ向かっていると声をかけられた。


「リーンさん? よかった、言っていた通りきてくださったんですね」


 名前を呼ばれそちらを向くと並んでいる受付の一つに座っているサヤさんが手を振っていた。頭を下げサヤさんの元に向かうとサヤさんが笑顔で迎えてくれた。


「この間はすぐに帰っちゃうから困ってしまいましたよ。また会えて良かった」


 立ち上がり机越しに俺の手を取ったサヤさんが嬉しそうにそう言うと、周囲がざわついたのが分かった。おや、妙に視線が痛い。「あのガキ誰だ?」「知らねえがちょっとサヤちゃんに馴れ馴れしすぎだな」「おいおい、手を握ってやがる」「マジかよ」「……ぶっころ」、うん、なんだか物騒な話が聞こえるな。


「えっと、渡すものが色々あるから座ってくれる?」

「あ、はい」


 なにやら自分の背後の棚を漁っているサヤさん。おそらく20台後半だと思うが絵に描いたような美女だ。ちらりと周囲を確認すると結構な数の冒険者がこちらに注目していた。そこには女性も含まれるのだがやはり圧倒的に男が多い。……ずいぶん人気があるんだな、サヤさん。


「えっと、良いかな?」

「ああ、すみません。なんでしょうか?」


 おっと、いつの間にやら色々と机に並べたサヤさんが待っていたらしい。気にしていてもしょうがない、目の前に集中しよう。


「まず、これが冒険者登録証。通称ギルドカードね」


 それは金属にしては妙に温かい不思議な素材で出来たトランプのようなカードだった。薄い灰色なのだが裏表を見ても何も書かれたりはしていない。不思議そうに眺めているとカードに魔力を流すよう、サヤさんに促された。


「へえ、こりゃすごい」


 言われた通りカードに魔力を流すと表面に白い光が走り文字が浮かび上がってきた。表側には名前、冒険者レベル、主な技能、所属、前回の更新日が表示されていた。俺なら順番にリーン、2レベル、神官、なし、今日の日付、となっている。裏はなにも書いていないが免状や賞罰が有る場合記載されるらしい。これは本人の魔力と反応するようになっており、他では冒険者ギルドでしか確認できないとのことだった。

 ちなみにカードは冒険者のみが持っているわけではなく、冒険者ギルドに所属していれば灰色のカード、商人ギルドが黄色いカード、魔法使いギルドが赤いカード、城などの行政関係の役人が青いカード、騎士団の団員が白いカードを持っているらしい。

 ようするにサラさんは冒険者ではないければ冒険者ギルド所属なので灰色のカードをもっているし、門番のおっちゃんは城から派遣されている警備兵なので青いカードを持っているとのこと。書かれている内容は色ごとに違うのだが、そこまで気にする必要はないらしいので、今回は聞かなかった。


「無くしたら再発行には手間と時間が結構かかるから気をつけてくださいね。後は必要なら初心者用に戦闘訓練とか有料での魔法口座も受付もここで出来るんだけど」

「とりあえず必要ありません」

「だよね」

「それでレベルが2になっているんですが、これは?」


 冒険者に登録したばかりだと1レベルから始まり、実績を積み上げることでレベルが上がっていくと初日に説明を受けていたのだが。


「3人でとはいえゾンビを1日で40体以上の討伐したでしょ? 職員がアサちゃん達に話を確認したけど、2人に頼っていたわけでもないし最低限の力はあると判断されたの。早いレベルアップだけど元々実力がある人には珍しいことじゃないのよ」

「なるほど、それじゃ素直に喜んどきます」


 レベル1と2じゃ受けれる依頼も違う。これは素直にうれしいな。


「それじゃカードの受け渡しはこれで終わりです。あとは私用なんだけど、これはセリちゃんとアサちゃんから」


 差し出された布袋を開くとそこには大量の銀貨が入っていた。先週の分け前ってことだろう、ありがたいことだ。


「銀貨で42枚ね。すぐに使う予定がないなら金貨に両替するけど」

「いえ、ちょうど手持ちが少ないのでこのままで大丈夫です」


 銀貨は10枚で金貨1枚、金貨は10枚で大金貨1枚に両替可能だ。本来は多少の手数料がかかるが、冒険者特権でギルドでの両替は無料でできる。


「そう? セリちゃんたちが挨拶もしないでいなくなっちゃったで怒ってたからまた相手してあげてね?」

「ありがとうございます。また相手をしてくれるならこちらから頼みたいくらいですよ」


 さて、カードも受け取ったしサヤさんとも再開出来た、ではなくそれなりの資金も出来た。まずは装備を整えるか、それとも依頼をなにか見積もるか。


「あとはこれで最後ね。腐食の沼地への討伐隊は上級冒険者2組で行われました。結構な深部まで行ったみたいだけど結局ジャック・プリンスはいなかったみたいね。その変わり他の上級アンデットをそれぞれ狩ってきてくれたし、アンデットの数自体もかなり多くなっていたから無駄にはならなかったけれど……ちょっと気がかりね」

「まあ、すぐに出てくることはないと思いますし。いざという時のことは考えておきます」


 ジャックの件はやはり保留だな。おそらくこうなるだろうと思っていたので特に戸惑いはない。 

 サヤさんに礼を言いつつ受付を出る。相変わらず物騒な視線が飛んでくるが実際になにかしてくる様子はないので、無視して依頼の提示版へ向かおうとすると、受付の一つから大声が聞こえてきた。


「なんでだよ! もう正規の冒険者なんだから良いだろう!」


 そちらに目を向けると若い、おそらく俺よりも1~2歳年下の少年たちが受付の男性に食ってかかっているところだった。

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