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06、神の加護

あけましておめでとうございます。


間違いなく05の続きになりますのでご心配なく。

「邪魔ですね」


 その言葉とともに圧倒的な悪意が押し寄せた。いつ動き出したのか、滑るように近づいたジャックが差し出した杖の先がマント越しに俺の胸を穿った。もしマントが間に合わなければ本当に体に穴を開けていただろう杖による衝撃に体は九の字に折れ曲がり、宙を舞った。


「シッ!」


 持って行かれそうな意識を必死になって繋ぎ止め、前を向くとそこには目にも止まらぬほどの速さの一撃を放つアーサーがいた。ジャックは間一髪それをかわしたように見えたが、カボチャ頭に浅く傷がつく。血の一滴も漏れないがその変わりに僅かながら魔力が拡散するのが感じ取れた。


「素晴らしい!」


 ジャックが歓喜の声を上げると2人の間に無数の闇の刃が現れた。ジャックの影から生まれたその刃はアーサーだけでなく、いつのまにか庇うように俺の前に来ていたセシルにも襲いかかる。

 なんとか闇の刃を避けはじき返す2人だが、守りに手一杯で攻撃に移ることが出来ない。またたく間に細かい傷が2人の鎧に刻まれ始めた。

 俺も戦線に復帰したいのだが体は動かない、思ったよりも重傷なようだ。声すら出ないので意思を振り絞り回復系神希魔法ヒールを無詠唱で発動させるもなんとか動くので精いっぱいだ。せめてセシルの負担を減らすべく後ろに転がり、闇の刃から距離を取る。それだけでも苦痛の声が出るのを防げないのが情けない。

 

「フレイムバニッシャーッ!」


 そこへセリーヌの放った火炎球が襲った。ジャックが動き始めてからほんの数秒の間に中級魔法の詠唱を終えたのは見事と言うしかない。火炎球はジャックの脚元に着弾、爆炎を上げ破裂した。セリーヌとしてはジャックを捉えられないと思い、爆炎によるダメージを与えるか、最低でも俺達3人が立て直す時間を稼ごうと考えたのだろう。しかし、それが標的を変えることになった。

 ジャックの動きを僅かでも見逃すまいとしていたからこそ分かった。爆炎にまぎれ、一直線にセリーヌへと向かう影に。俺は悲鳴を上げる体に鞭を打ちその影へと手を伸ばす。……だが、俺の手は空を掴んだ。そして魔法を放ち無防備になったセリーヌの胸をジャックのステッキが貫いた。


「かはっ」


 セリーヌは自らの胴体から背中まで突き抜けたステッキを見て顔をしかめ、血を吐くと糸の切れた人形のように倒れた。


「セリーヌ!」


 爆炎から顔をかばっていたアーサーが叫ぶ、その隙は一瞬だったが致命的でもあった。闇の刃はアーサーの右腕を斬り飛ばし続いて左腕、左足、そしてその首を刈り取った。

 ほんの一瞬の隙に2人を殺したジャックは笑っていた。楽しそうに肩をゆすり、絶望を顔に浮かべるセシルを見て笑い、そして俺を見て不思議そうな顔をして、笑った。


「おや、まだ希望があるようですね? まだ私を楽しませてくれるとは素晴らしい。どうやってその希望を絶望に塗り替えましょうかねえ?」


 ウフフフフッ、と笑うその声を聞いた瞬間悟った。ジャックは初めから俺達を簡単に殺せたのだろう。それこそセシルやギルバートを逃がしたのだってわざとだったのだ。それは少しでも多くの絶望を引き出すため。自らの楽しみのために希望があるように見せかけた。

 ならば、やりようはある。そう、ジャックが油断している内に倒せば良い。たとえば、初めに俺に攻撃を仕掛けてきたときに。

 俺にならばそれが出来る。


「ラージャよ、盟約により汝の加護を七度借り受ける。これはその一度目だ」


 ラージャに祈る。思い出すのは赤い瞳。初めて出会ったあの日の満月のような赤い瞳。そして、再開をしたあの日の真摯な瞳。右手の指輪から温かな光が溢れ、やがてその光は俺の瞳に宿った。もし俺を見ている者がいたのならば俺の瞳が赤く変じたことに気がついただろう。

 時空神ラージャから預かった7度だけ使える神の加護、その名は……。


「時よ巻き戻れ、クロノスアイズ」


 「時間の流れとは糸を紡ぐようなもの」ラージャは俺にそう語った。時の空に広がる雲のような綿、幾千万もの可能性をゆっくりと纏めたった一本の糸へと紡ぎあげる。人の力では一度紡いだ糸を解けば、それはバラバラに散らばってしまい、元の糸どころか綿にすら戻らない。待っているのは破滅だけ。

 だが、神ならばそこに干渉することができる。例え今は小神となっていようとも、かつてはこの世界の時空をつかさどっていたラージャならば。 俺の目の前で世界が巻き戻されていく。その流れに逆らうものはいない。なにしろ確定した過去を戻っていくのだ、軌跡を辿るように逆回しに世界は回る。

 だがクロノスアイズにも限界はある。神ならず身で神の威を借りる俺の魂と力衰えた小神が使うがゆえにたった7度だけの奇跡であること。そして遡れる時間はわずか30秒であること。一度の時間軸での時の遡行は一度だけであること。

 そんなことを考えている間に時間の遡行が止まった。

 セリーヌもアーサーも生きており、ジャックが目の前にいる。そして……時は再び動き出した。


「邪魔ですね」


 ジャックのその言葉とともに圧倒的な悪意が押し寄せた。いつ動きだしたのか、滑るように近づいたジャックの差し出した杖の先が……俺を貫いた。 胴に穴が開く感触は厭にゆっくりと感じた。初めに感じたのは痛みよりも単純な衝撃。次いで自ら体の中に異物が入り込む嫌悪感、そして血の灼熱。

 即死してもおかしくない一撃、ましてや唱えていた呪文など途切れて当然だというのに俺はそれに耐えきった。一か八かの勝負だったが、どうやら勝てた。杖が俺を貫いたがゆえにすぐ目の前にあるジャックの腕を抱え込み、こみ上げる血の塊とともに俺は呪文を解き放つ。


「ディバインウェポン」


 瞬間、ジャックのカボチャ頭をアーサーの剣が両断し、セシルの剣が胴を貫いた。2人の剣にはどちらも黄金の輝きが宿っており、それはジャックの傷からも溢れだしていた。

 神聖属性付与系上級神希魔法ディバインウェポン。現在の俺が使えるたった二つの上級神希魔法の一つだ。ホーリーウェポンと同系列ではあるがその攻撃力上昇は数ある付与魔法の中でも随一であり、アンデットや悪魔に対してはまさに必殺の威力を誇る。問題は効果があるのは呪文を唱えてから十秒以内のたった一撃だけということだが、今の状況ならば十分だ。

 事実、2人の攻撃を受けたジャックからは大量の魔力を傷口から溢れさせており、先ほどまでの脅威を感じなくなっている。あとは最低限死なないように傷をふさいだら畳みかける!


「くははっ! なるほど、それが……それが貴方の希望ですか!」


 確かに苦痛を感じさせる声だった。だがその声は今起こったことを認識していることを示していた。そして……。


「ならば私も願いましょう! 魔法神タイーシャよ、神威を破りたまえ。インドラ・スピアーズ」


 ジャックから確かに神の力を感じた。アンデットであるはずの者が何故? あまりのことに、それすらも考えられない。ただ事実として世界が割れた。クロノス・アイズによる時の遡行が時の流れの軌跡をゆっくりと辿り戻って行ったとすれば、インドラ・スピアーズはクロノス・アイズ自体を破壊することにより新たに作られた世界すらも破壊した。そして時は再び戻ってきた。


「邪魔ですね」


 ジャックが突如出現したあの時へと。

 

「ほう、なるほど。どうにかなるとは思いますが、せっかくここまで貯めた力を失うのも面白くありません。ここはご挨拶できたことに満足して引くといたしましょう」


 カボチャ頭は優雅に頭を下げた。


「わたくしはジャックと申します。さて、神官殿、貴方のお名前をお聞かせいただけますか?」

「……ラージャ神の神官リーンだ」


 愕然としている俺にジャックが聞いてきた。正直に答える必要があったのかどうか分からないが、とっさに嘘はつかないほうが良いと思い、この世界での俺の名を告げるとジャックはうれしそうに笑い、頷いた。


「正直は美徳ですね。これでわれらは友誼を結べました。それではいつかどこかで再び相まみえましょう。……その時には存分に友情を深めましょうぞ」


 ふいに何かに掴まれたような感覚があり俺は自分の体を見下ろした。だが、その感覚はほんの一瞬にして消え去る。そして「消えた?」誰かの呟きに顔をあげると、そこにはすでにカボチャ頭は居なかった。

 そして俺は神の加護と上級魔法を使った負担と、さらには胸に穴が開いた……開いていたという衝撃により、ついには気絶してしまった。 

   

 どうやっても分かりやすく書けませんでした。申し訳ありません。

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