魔術医師
国立手野大学附属病院。
大きく3つの診療棟と入院棟、それに院内学校がある、総合病院だ。
病床は一般病床750、魔術病床150、療養病床と精神病床がそれぞれ100、感染症病床と結核病床がそれぞれ50ある。
なお、結核病床は、緊急時には感染症病床として使用することもできるように作られている。
また、バイオセーフティーレベル4の研究所も併設して設置されている。
診療科は、総合病院と言うだけあり、多岐にわたっている。
精神科、アレルギー科、リウマチ科、小児科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼下、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、病理診断科、臨床検査科、救急科、歯科、小児歯科、歯科口腔外科、和漢診療科、魔術診療科。
さらに、内科として消化器科、循環器科、呼吸器科、血液内科、感染症科、腫瘍科。
また外科として、一般外科、胸部外科、乳腺外科、甲状腺外科、小児外科、肛門科、整形外科、形成外科、魔術外科がある。
私は、その中で魔術診療科に勤めている医者だ。
「岸本先生」
岸本、というのが私の名前だ。
本名は岸本志穂という。
手野大学魔術学部東洋学科卒、魔術大学院修了、魔術研究所研究員を経て、附属病院魔術診療科所属となった。
高校までは、地元兵庫にある公立校に通っていたが、さすがにこの学部に推薦で受けれるとなれば、受けることにした。
大学卒業時点で高等学校魔術科の一種教員免許を取得、魔術師資格を有しており、大学院修了時点では高等魔術師という国際資格を取得した。
研究所では、魔術事故と呼ばれる事故の発生原因やその回避法について研究をしていた。
だが、それから発展して、事故後の処置についても研究の範囲にしたことが縁で、この病院に勤めることとなった。
ちなみに、魔術医師という資格が存在をしているが、診療をしない場合は必須ではない。
私は研究所での研修を受けて、取得することができた。
さて声をかけてきたのは、現在研修医として病院に勤務している根岸居芦だ。
彼女は今年の3月に卒業したばかりの魔術医師で、大学卒業と同時に資格を取得したそうだ。
そのまま研修医として附属病院へと来たらしい。
「どうしたの」
「休憩時間は終わりですよ」
「あら、もうそんな時間?」
喫茶スペースでのんびりとお茶を飲んでいる場合ではないらしい。
そういうこともあり、私は読んでいた文庫本をパタンとたたみ、根岸について、戻ることにした。