表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/16

序章 世界の始まり

 

 

 簡単な話だ。


 この世界には神がいて、それがこの世界を創った。


 大地も、空も、木々も、人も、魔物も。


 それぞれが何らかの神に愛され生まれてくるのだ。


 大地や空はそう思っていないかもしれないが、少なくとも人だけはそう信じていた。


 彼らには愛されているという自信があった。


 人だけが扱える、クリスタルと呼ばれる結晶がその証拠だ。


 人はそれを用いれば、普通では起こすことのできない力を発揮することができた。


 何もないところから火を起こし、風を吹かせ、清浄な水を沸かせる。


 個人よって得手不得手はあるものの、その超常の力を人間は、「愛されている」という証拠にしてきた。


 人は神に感謝し、生きた。


 故に、人は争わなかった。


 魔物や動物との小競り合いはあった。


 が、彼らも髪に愛された存在なのだ、と、人は他の種を殲滅することは無かった。


 平和だった。


 人間は集い、国を作る。


 が、決してその領土を争いはしない。


 何故なら、大地は他ならぬ神の創ったもので、自分たちはその上に住むことを許されているという認識があった。だからこそ、多くを望まず、只ひたすらに神に感謝をし、日々を過ごしていた。


 そんな世界に、異変が生じ始める。


 クリスタルを使えない、または使いこなせない人間が生まれ始めたのだ。


 危険だった。それを扱えない、という事は、神に愛されていないということだから。この世のすべてが神に愛されているというのに。


 人は彼らのことを咎落ちと呼んだ。


 生まれながらに罪を持ち、故に神から愛されない人間。


 人は彼らを恐れ、それぞれの街から追放した。


 彼らには神から愛されない人間がいる、という事が恐ろしかったのだ。いつか、自分も愛されなくなるのではないかと。


 だからこそ、彼らを遠ざけた。


 すると、咎落ちの人間はぴたりと生まれなくなった。


 やはり我々は正しかった。人々は安堵した。


 咎落ちした人間と子を成すと、必ず咎落ちが生まれた。


 彼らを許容するものは居なくなった。人が差別を覚えた瞬間でもあった。


 咎落ち達は住処を追われ、やがては一つの場所にたどり着く。


 彼らの内の一人が言った。


 ここに我々だけの国を建てよう、と。


 誰からも迫害を受けない、誰からも憎悪の視線で見られない、我々だけの国を。


 希望を失いかけていた咎落ちに、一斉に希望の光が灯る。


 たとえ神に愛されていなくても、我々は生きていくのだ、と、声を高らかに上げて。


 その建国の最中に、一人の男子がこの世に生を受ける。


 彼も例外なく、咎落ちだった。


 たとえ神に愛されなくても、母親と父親、両方の祝福を受け、その子は生まれた。


 父親はその子に名前を付ける。


 子どもが元気に、丈夫に育つように願って。


 数年後、その名前が恐怖と暴力の象徴になることを、彼らは知る由もない。


 そして、神に愛された人間も、愛されなかった人間も、一様に神を信じている。


 誰も見たことがない。


 誰も話したこともない。


 それでも人は、神を信じている。

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ