第九話(完)
最近、屋根裏部屋の荷物を片付けていて、見覚えのない日記帳を見つけた。
その日記帳には書いた記憶のない小説が書かれていた。しかし その筆跡は間違いなく 20歳代の頃の私のものだ。
中学生の時、大阪万博に遊びに行くところまでは、確かに事実だ。しかし そのあとは、現実とは異なったた内容だ。
今 私は55歳。この年齢になって、今更、社内の昇進試験を受けてるオトボケだ。
そんな自分が書いた小説を全く覚えていないなんて、ボケが始まったのかな、と心配だ。
若い頃に書いたんだろうけど、結末がないんだよな。この小説には。
無事 清は戻ったのか?
敬一は自殺しなかったのか?
心配することはないんだけど。なぜなら、二人とも中学生の頃から ずっと友達だし、たまに遊んだりしてるから。
広沢さんの恋人は、彼のもとに帰れたのか?
そもそも、広沢さんって誰?そんな上司も知り合いもいないし。
そろそろ 敬一夫妻と清夫妻が遊びに来る時間だ。
妻の手料理も完成間近らしい。運ぶのを手伝ってよと、呼んでいる。
結末のない小説。
でも、全然 書いた覚えがないんだよな。。。
日記帳に書かれていた小説は、第八話の内容までで、あとは白紙のままでした。
小説に登場した二人の友人は実在し、現在も家族ぐるみで交流があります。