第二話
清が行方不明になって三日になる。
彼の家族から聞いたのは、清はとても万博に行きたがっていたということ。
彼の家は町工場を家業としていて、この夏 大きな注文が入り、清を万博に連れていくことができなかったらしい。
もうひとりの親友 敬一は「信雄が万博に行くことを自慢したから、ひがんで家出したんじゃあないのか?」
と、私を責めた。
そのことがあってから、敬一との仲がギクシャクし始め、一緒に遊ぶこともなくなっていった。
夏休みが終わり、新学期が始まった。
依然として、清の行方は解らないまま。
もやもやした気持ちを抱いたまま、中学一年は終わった。
そして、二年生、三年生と 互いに別の友達が出来たり、高校受験を控え、清のことは 気にはなってはいたが、身近なことではなくなっていった。
1980年 春
私は 社会人の一年生となった。
一人暮らしを始めるため、荷物の整理をしていたとき、小さな紙箱を見つけ、中を開けてみた。
あの大阪万博の記念メダルにシルバーの星がセットになったものが3組。
清の失踪があり、二人に渡すことが出来なかったメダルと星。。。
事件のことを思い出しながらメダルを見つめているうち、不思議なことに気がついた。
全く同じセットを買ったはずなのに、敬一の名前を刻印したメダルと星は青色がかり、清のは赤みがかっている。
自分のは銀色のまま。
そういえば、その後の清が見つかったのかどうか、情報を得ていない。
もう一人の親友だった敬一とは、ずっと連絡もしていない。
記念メダルに付いている星の鈍い輝きを見て、落ち着かない気持ちになった。
敬一の自宅に電話をかけたが、その電話番号は別の人が使用していて、彼とは連絡がつかなかった。
清の自宅には、電話をかけづらかったが、星の赤い色が気にかかり、電話をかけてみたが、その番号は使われていなかった。
次の休みに、直接 二人の自宅を尋ねてみようと思った。
休日までの数日間、二人に渡すはずだったメダルの星は、さらに鈍い色が濃くなっていく。
ようやく休日を迎え、二人の自宅へ向かった。
敬一の自宅があった場所は、最近オープンしたホームセンターの駐車場に姿を変えていた。
清の自宅 兼 工場の場所は、付近一帯更地になっていて、区画整理で道路が出来ると、近所の人から聞いた。
二人の家族が、何処へ引っ越したのか、情報は得られなかった。
平日に区役所で調べるしかないなと思った。
ふたつの星の光りは、はっきりと、青色、赤色になった。