02
「っで、どういうこと?」
お兄ちゃん改め航生くんに「せやっ!」と正拳を食らわせ、ヒーローのごとく手を引いて私を救出(?)した姉と帰宅すると、まず繰り出されたのはそんな質問だった。
「えっと……」
マユちゃんの気持ちを知っていてのあの事態なのだから、その質問ももっともだと思う。だけど、自分でも事態が飲み込めていないのでそれ以上言葉が続かない。
なんであぁなったんだろう? 好きってどういうこと?
多分マユちゃんが聞きたいことと同じ疑問が頭の中をぐるぐる巡る。
「……コウに何もされなかった?」
そんな混乱を察したのか、マユちゃんが質問を変える。私は素直に頷いた。
すると−−−−
「良かったぁ……」
今度はマユちゃんが私をギュッと抱きしめてくれる。
あれ?
耳元で聞こえたその声が本当に安堵を教えてくれて、私の胸に新たな疑問が落とされる。
「マユちゃん、怒ってないの?」
心から尋ねたのに、「えっ、なんで?」とマユちゃんも心からわらかないという顔で首を傾げる。噛み合ない会話。どうしてこうなったんだろう?
「だってマユちゃん、航生くんのこと好きだよね?」
それぞれ個室を持ちながらもよくよく枕を並べて寝る私たち。眠りに落ちる前のひと時の会話に航生くんが出て来ないことはなかった。それくらいマユちゃんにとって航生くんは大きな存在なはずなのに……。
ようやく私の疑問に気付いたらしいマユちゃんは苦笑して告げた。
「あぁ。あんなの嘘よ」
「嘘?」
それにしてはたっぷり情感が籠っていた気がしたけど、本人に「コウをあんまりカナに近付けたくなかったの。ゴメンね」と言われてしまえば追求なんて出来ない。
その後、結局何だかよく分からないことばかりで混乱したままだった私は、どうにかこうにかマユちゃんに宥められて眠りについた。そして、それまでこんなことは一度もなかったのに、その日の夢でまた航生くんに抱きしめられたのだった。