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第九話 ゴーレム屋敷のお話

やっと投稿できました。

長い間時間を空けてしまったので、書き方、誤字脱字あると思いますが、楽しんでいただけたら嬉しいです。

あの台風のような少女(人形老に聞いたところ名前はリデットというらしい)が去った後、俺たちは屋敷の客間に案内されていた。

そこには色々なゴーレムに関する書物やパーツが飾られており、まさに“人形老”の名にふさわしい部屋だ。

「ちょっとまっとれ…小僧お前には後で聞きたいことがある」

そうつぶやくと人形老は部屋を出て行ってしまった。


待っているのも暇なので、クルルと一緒に飾られているパーツを見る。

「すばらしいのう。

我も人間が作るゴーレムを見たことがあるが、もっと大きく形も大雑把なものがほとんどであったぞ」

「ああ、大抵ゴーレムってのは力仕事が主だからな。

形じゃなくてパワーなんだ。

どれだけ頑丈でどれくらいの力がでるのか。

ゴーレムを作る職人やそれを必要とする人間ってのは大抵そこに注目するからな」

そこまで言っておれは顔のパーツのまえで立ち止まった。

通常のゴーレムが雪だるまの顔程度の完成度なら、目の前の顔は人そのものだったからだ。

精巧な部品のなかでも、特に精巧に作りこまれている。

文化レベルで言えば中世のこの時代にこれだけ精巧なパーツを作り出すのには並大抵のことでは無理だろう。

「すごいな…」

「…気になるか?」

その声に振り向くと、人形老とメイドらしき人…ゴーレムがティーセットを持って来たところだった。

「すいません。

決して盗もうとしたわけではなくて…」

「わかっておる。

モノを盗む奴らは大抵、値打ちのある核に眼が行く。おまえさんは違ったようじゃがな」


「俺を試したんですか?」

「まあ、他人に不必要に時間を与えると、どうなるか実験しただけじゃて…

それで、ダートの少年よ。

この“人形老”ジア・オウロドスに何のようかの?」

その言葉に俺はゆっくりと口を開いた。



相手がは話を聞いてもらえる状況に俺は、事細かに説明した。

ギルトの依頼でゴーレムを受け取りに来たこと。

先ほどの弟子の話とは全く関係ないこと。

とりあえず懇切丁寧に話した。


「なるほどのう…どうやらわしらの勝手な勘違いで済まんことをしたのう」

「いえ、いいんです。私もクルルも驚いただけなので、それでそのゴーレムの件は…」

「おうおう!!そうじゃの。

件のゴーレムはもうできておるでな。

とりあえず、ワシの方でギルドに届けさせよう」

「よ、よろしいのですか?」


俺は恐る恐る聞いてみる。

この爺さんは見た目以上に気分屋だ。

気を付けないとまた、勘違いしたで済まされてしまいそうな気がしたのだ。


「よいよい、心配そうな声を出すな。

以前はギルドの対応が気に入らんかったり、忙しさが災いしてすっかり忘れておったが、男に二言はない。

安心せい。」

「わかりました。

ありがとうございます」


俺は人形老の言葉に、とりあえず安心したようなフリをする。

荷物がギルドに届くまでは本当の意味で安心できないのだ。


「ところでのう…ダートの。

お前さんに聞きたいことがあったんじゃよ。

お主、あのバカ弟子のことについて何か気にかかることでもあるのか?

たとえば、あ奴の学び舎の事とか…」


安心できない。

そう思っていた矢先にいきなり先制攻撃を食らった。

とりあえず、しらを切る。


「何を言ってるのか全く分かりません。

私たちは、ギルドの依頼をこなしに来ました。

あなたがギルドから依頼され滞納しているゴーレムを受け取りに…」


「そうかそうか!

ではなぜ、お主は学院の紋章を見て顔をしかめるのかの?

ワシも理由もなく人嫌いになったわけではなくてな、嫌いになるにはそれなりの理由がある。

“探究者”は探究することが目的であって利益が目的ではない。

頭ではわかるが、どうしても許せないこともある。

ワシはこれまでワシの研究成果に群がる豚どもをたくさん見てきた。

そしてそのたびにワシも顔をしかめた。

そのワシと同じように顔をしかめるお主を見てな。興味をもったんじゃ」

「…なるほど」

俺は表情を出さないようにつぶやく。

…まずった。

俺はなるべく考えないようにしていたことを探られたことに少し苛立つ。

確かに、あの時必死に別の事を考えていた。

あの馬車に乗っているものが誰なのか。

あの子が口にした“結社”についても…心当たりなんてない…のだ。

しかし、頭は自然と考える…だが、それは考えてはいけない事なのだ。


………


俺の考えの外にあることだ…俺は知らない。

口元は自然と笑みを浮かべていた。



「何のことかわかりかねます。

私はダートです。

この世界でダートがどんな存在であるか、あなたもよく存じているはずでは?」


しらを切りながら、笑える話だと思ってしまう。

ついこの間まで、彼女たちの身を案じていたのに今はしらを切っているのだ。

俺の目をじっくりと見ていた人形老はその顔に刻まれた皺をさらに深くさせてにっこりと笑った。

「話せぬというのであればワシも文句は言わぬ。

誰しも必ず傷を持つものじゃ。

それが生きるということでもある。

そうだな、対価を払おう。

お前にワシの技術の一端を教えよう。

ダートがこの世界で生きるには必要な技術、一般の人間ではとても知ることができない技術じゃ。

むろん、他言無用じゃよ。

どうかな?

若きダートよ。

ワシには理解できる、その顔の仕草、苛立ちがよくわかる。

だからなぜそう思ったのかそれが気になるのだよ」


俺はゆっくりと息を吐く。

別に、そこまで焦ってはいない。

俺の昔話なんてたかが知れてる。

そうさ、それで俺の知らない知識が手に入るのなら五分以上だ。

「…さすがです人形老。

でもあなたがこれほど世話好きだとは思いませんでしたよ」


「それはお前さんの見立て違いというものじゃよ」


見た目も好々爺のように表情を崩す人形老、その瞳の奥に探究者としての“知りたがり屋”の顔が見えた気がした。


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