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閑話 お風呂場のお話

「さあ、此処に座ってください」

「う、うむ」

そう言ってクーノはアロワを座らせると、肩から丹念にお湯をかけていく。

「んっ」

「あ、沁みますか?」

アロワの体はあちこちに引っ掻き傷が付き、陶磁器のような白い肌にミミズ腫れのような痕が出来ていた。


「大丈夫だ、続けてくれ。じきに治るさ」

「…はい、でも痛かったらすぐに言ってくださいね」

そう言うと、クーノはアロワの体を洗い始めた。

「…」

「…」


「なあ、何で君はあの少年、アルスの所に住んでいるんだ?女子寮があるだろうに…」

と何気なくアロワが呟いた。

クーノはその声に

「えへへ」

と笑うとぽつぽつと話始めた。


「私、入学早々、マルク先輩に目を付けられてしまって。あの人、女の子に人気じゃないですか。私口下手だから、上手く断れないうちに皆と孤立しちゃって…そんなときにアルさんが教科書を隠されて困っていた私に教科書を貸してくれたんです」

「そうか…君も苦労するな」

とアロワがねぎらうように言葉をかける。


しかし、クーノは気にしたような素振りを見せず、楽しそうに答えた。

「いいえ、あの…アルさんと、約束…いえ取引したんです。アルさんがマルク先輩の事をなんとかする代わりに、私が忙しいアルさんのお世話をするって。私、初めてできた友達との約束を守ろうって必死になっちゃって、気が付いたら此処に住もうって思ってて、女子寮ではもう孤立してたから全然苦労なんてありませんでした」

たどたどしいが一生懸命話すクーノにアロハは小さく笑った。


「フフフ…そうか、ならその友達の枠に私も是非入れてほしいな」

アロワの突然の申し出に驚くクーノ。

「え?で、でもアロワさん、私と歳違うのに友達で良いんですか?」

「ああ、同じ悩みで苦労してるクーノを見てたらなんだかほっとけなくてな。何か困ったことがあったら遠慮なく私を頼ってきていいぞ」

「えへへ、初めてです女の子の友達…よろしくお願いしますアロワさん」

「アロワと言ってほしいな。出来れば敬語は無しで」

「あう…はい、よろしくアロワ」

「ああ、よろしくクーノ」

お互い緊張が解けて、知らないうちに出来ていた溝を埋めた二人は体を洗い終わると、ゆっくりと湯船に浸かった。


「ところで…アロワの胸大きいですね」

とクーノが自分の胸と比べながら呟いた。

「ああ、全くだ。騎士を目指す私にはあまり必要ないものなのだがな。それにあの連中も私を犯す間中ずっと胸ばかり触って来た。全く嫌になるよ」

その言葉にアロワは少し鬱陶しそうに答えた。

「あ! で、でもまだアロワって13歳?だったら将来もっと大きくなるんじゃないかな?」

と何気なくクーノが呟く。


その言葉にアロワは心底嫌そうな顔をした。

「なんだと…ではまだ大きくなるのか…正直切り落としたくてしょうがないのだが…」

そんな言葉に、クーノが驚いたように声を上げた。

「ダメだよ! 女の子の胸は赤ちゃんを育てるためにあるんだから!そんなことしちゃ絶対ダメ!」

「そ、そうだな」

とクーノの勢いに若干押されるアロワ。


それに…とクーノが続けた。

「アルさんが絶対になんとかしてくれます。アルさんは、私なんかよりずっとすごくて、私が諦めかけていた事も自分ひとりでなんとかしちゃって、その癖自分一人で傷ついて…だから私が出来る事を…あの人のお世話を一生懸命やろうって決めたんです」

「フフフ…確かに。あいつは一人でどんどん行動して、覚悟の上で貧乏くじを引く感じだからな」

と呟くアロワ。


「そうだ! アロワも一緒にアルさんのお世話しよ?今回の事が解決したら…ね?」

名案とばかりにクーノが提案してきた。

「い、いや私はお嬢様のお付きの騎士だから…お世話は無理かな」

その返事に若干落ち込むも、なお食い下がるクーノ。

「でも、時々なら…一緒にご飯作ったり、食べたり、お風呂入ったりしよ?」

「まあ、時々なら…」

「本当?やったー」

と元気にはしゃぐクーノにアロワが笑いながら注意をする。

「こら、危ないぞクーノ。ほら、のぼせないうちに出てしまおう」

「うん」

こうしてお風呂での秘密の会話は終わりを告げた。


「ふあーアルさ~ん出ましたよー」

風呂から上がったクーノはそう呼びかけるが、部屋はシーンと静まったままだ。

「なんだ?アルスのやついないのか?」

とアロワも着替えが終わり、クーノの後から部屋を探していく。


そして台所のテーブルに眠っているアルスを見つけた。

「何だ…アルスの奴、寝てたのか」

「か、かわいいです」

と目を輝かせるクーノ。

「全く寝顔からは普段の言動が全く想像できんな」

そう言うアロワもアルスの寝顔をマジマジと見つめている。

二人はあどけないアルスの寝顔に静かに笑い合うと、名残惜しそうにアルスを起こしにかかるのだった。


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