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第十四話 挑発のお話

その日、俺たちは昼前の最後の授業を受け、学食にでも行こうかと話している所にそいつは現れた。

「失礼するよ。諸君」

「キャー! マルク先輩! こんな一年生の教室にどうされたんですか?」

「なにちょっと所用があってね。クーノくんは居るかい?」

「またあの子ですかぁ?たまには私たちにも声かけてくださいよ!」

「ハハハ! 機会があったら誘わせてもらおうかな」

「本当ですかぁ?キャー! 私期待しちゃいますよ!」

「先輩あの子じつは…」

と小うるさい女生徒共に囲まれている。

その中にはこの前話しかけてきたあの女の子の姿もある。

まあ予想はしてたが告げ口とは…

本当に予想通りに動いてくれて頭が下がる思いだよ。


そんな女子共をしり目に、俺はマルクと呼ばれた人間を観察する。

外見は金髪の髪に青い目が特徴的な男子生徒だ。

さらに顔の造形はしっかりと整っていて、髪と目を含めたその甘いマスクは普通に見れば美形の部類に入るだろう。

だが時々浮かべる笑みが人を馬鹿にしているように俺には感じられた。

「やあ、クーノ君! ちょっと話があるんだけどいいかい?」

そう言いながらマルクはまるで獲物を見つけた狼のような目を向けるとゆっくりと歩いてきた。


「ヒッ!」

と、クーノが小さく悲鳴を上げたのが聞こえた。


…まあとりあえず、なんとかしますか。

俺はクーノの腰を引き寄せるとクーノの頭に軽く、見せつけるようにキスをした。

「ちょ…あ、アルさん」

突然の事に顔を赤らめるクーノ。

しかし、特に抵抗する素振りは見せない。

「ん? 君はなんだい?彼女にそんなことをして失礼だろう?止めたまえ。先程も彼女たちから話しを聞いたがクーノ君が君のような男と一緒にいるのも何かの間違いだ。さっさと離れなさい」

此処に来て、ようやく俺の存在に気付いたのかマルクがこちらを向いた。

顔は笑っているが目だけが憎々しげにこちらを睨んでいる。

うん、良い感じだ。

後は…


周りを見渡すと皆、時が止まったようにこちらを見ている。

俺はマルクに対し、見せつけるように告げた。

「せんぱぁい、すいません。こいつもう俺の女なんですよ」

(「「!!!!!」」)

突然の事にマルクもクーノもそして聞いていたクラス全員が固まる。

そりゃそうだ。

今まで侯爵貴族様に逆らった者などいないのだから。

「な?クーノ、毎日俺のお世話してるもんな」

と確認するようにクーノに尋ねる。

「は、はい。お世話してます」

と顔を赤らめながら応えるクーノ。

その表情を確認して、俺はマルクに勝ち誇ったように「ね?」と振ってみる。


「そんなはずはない! 人を馬鹿にするのもいい加減にしたまえ! 彼女は私の物だ!他の誰のものでもない! クーノ君そいつに脅されているだろう? 今すぐこちらに来たまえそんなダートと一緒に居る必要はない!」

そう言ってクーノに向かって手を差し出す。


あーようやく本音が出てきたよこの人。

戸惑っているクーノに俺は小さく声をかける。

「お前が自分の意志で相手に伝えるんだ。やってみ」

そう言って優しく頭を撫でてやる。

「は、はい」

俺の言葉にようやく落ち着きを取り戻したのか小さく返事をする。


「わ、私はアルさんのモノです。貴方の物にはなりません! 」

小さくだが初めて抵抗の意志を出したクーノ。

しかし、アドリブで振ってみたけど、良いセリフだな。

まあ、冗談でもそういうこと言ってくれるとうれしくなっちゃうけど。


そんなクーノのセリフに俺はさらに追い打ちをかける。

「だからさぁ先輩、こっちはこっちでやるからさ。そこの女共でも誘っとけよな色男」

その言葉に

「…ふ、ふざけるな!その女は俺のものだ! 薄汚いダートにくれてやったつもりはない!」

と、ついに本性を現した。

その大声にクラス中の人間が一瞬怯むが俺は動じない。


まったく、うっせぇ先輩だな。

「ふ、あはははッ! ねえ先輩知ってた? こいつはとっても従順でかわいいんすよ。しかも俺の言った通りに(家事と掃除)シてくれる。こいつの味(料理)は最高です。いやー残念だなー。確か「階段から落ちた」でしたっけ?さっさと回復魔法を使って直せばいいものを、恐怖心を煽るために二週間、自然治癒でじっくり治してくれた誰かさんのおかげですよ。ありがとうございまーす」

そう言ってわざとらしくお辞儀もして見せる。


あーあ先輩、顔真っ赤だよ。

「許さんぞ貴様! 決闘だ! 人のものに手を出して無事でいられると思うなよ! 必ず殺してやる! 」

先輩の言葉に俺は冷静に応える。

どんな時でも冷静が一番なのだ。

「良いですよ先輩。でも俺が勝ったらクーノには金輪際、手を出さない事を約束してくださいね。悪い虫は掃うのもめんどくさいので」

と、クーノを抱き締めつつそう告げた。

「良いだろう。だが私が勝ったら貴様には死んでもらう。判定負けでも必ずだ! 覚えておけよ!」

そういうと踵を返し去って行った。


「あ、アルさん。大丈夫なんですか? 相手は地位も才能もアルさん以上ありますよ?」

とクーノが泣きそうな顔で俺に聞いてきた。

「なに、心配ないさ。たぶんだがアイツが俺の想像する通りの人物なら、俺が負けることはまずないよ」

そう俺は告げるのだった。


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