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第一話 物語が始まる前のお話

「はぁ…終わった…」

と青年は学校帰りに一人呟いた。

ようやく、自分を苦しめていた人間の表情が苦労に歪むのを目撃できたのだ。

その時の顔を思い出すたび、青年の心に達成感がにじむ。相手はバレー部のエースで何をやっても人並み以上に上手くできる天才肌の人間だ。


最初に復讐を誓った時に青年は努力した。様々な本を読み知識をつけ、道場に行って体を鍛え強くなった。そしていつの間にか、青年は自分を苦しめていた人間よりも秀でるようになり、その能力を誰もが認めるようになっていた。

しかし青年は満足できなかった。

どれだけテストで良い点を取っても、どれだけ体を鍛えても彼はニコニコ笑って

「おまえやるなぁ」

としか言わなかった。


…何かが違う…


青年は自分の感情を冷静に鑑みてようやく自分の黒い感情にたどり着いた。

…アイツの苦しむ顔がみたい…

そこから青年は彼について調べた。

最初はバレー部のエースであることや同じ中学出身という以外何もわからなかった。だが、彼がクラスでも部活でも友達に恵まれている事、大学の推薦も貰っているという事など、見ていなかった彼の事がわかるようになった。


そしてようやく彼の急所を見つけた。

そいつは顔も整っていて女性受けが良かったが、ひどいことに二股をかけていた。

それを知った青年はさりげなく偶然を装って彼の彼女の友達に噂を流した。

そしてその噂は2日で広がった。

3日目にはものの見事に修羅場と化していた。

そして、慌てふためき二人の女性に許しをこう彼の顔を目撃した青年はようやく心が軽くなるのを感じた。



いじめというのはメンドクサイ、傷つけられた方はずっと引きずるが傷付けた方は何とも思っていないのだから。

たぶん彼は青年を傷つけた言葉も、もう覚えていないだろう。

だが青年は覚えている。

これ以上ないくらいに鮮明に。


当時はその一言がひどく残酷で周りの人間も便乗して青年をはやし立てた。

彼は人と少し違った、違うといってもあまり喋りたがらない事ただそれだけだ。

だがそれがいけなかった。

この「学校」という空間はそういった者に容赦がなかった。

それを知り「いじめ」という洗礼を受けようやく普通に他人となじんで話すようになるまで1年潰した。



 そして現在、別々のクラスで顔を合わせる機会もほとんどない。

だが受けた苦しみを忘れるほど青年は優しくなかった。

だから相手の弱みを見つけそこを突いた。

これで明日から気持ちよく眠れるだろう。


しかし、彼はその満足感に浸り、いつもなら気が付くはずの車の音に気が付かなかった。そこで飲酒をしていた運転手のトラックにひかれ青年は別の意味で眠りに就いた。


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