海運改革の幕開け
ーー ドラゴン狩りから始まる船造り
シフトは今回、ファーストの姿ではなくシルバー(獣人)の姿で森にいた。
獣人の姿でレベルを限界まで上げるつもりだった。
現在のシルバーのレベルは60、獣人のレベルの上限がわからないが人族とそこまで変わらない気がする。(人種は80が限界)
収納していたあの剣を取り出して身体強化を最大にする。
獣人族の身体強化は人族のものより強力なのだ。
気配を消しながら最初の目標地竜に近づく。
5頭ほどの地竜がいくつかの群れを作って固まっている。
一番大きいのが雌なのか?
体長70mはあるかと思われる地竜を中心に50m級がそれを取り巻く感じ。
2頭の地竜が群れから離れて水を飲みに移動し始めた。
「これはチャンスだ。」
シルバーは今回2頭同時の討伐を考えていた。
前回の様に首を一息に切り落とせれば無理でない話、しかし切りそこなえばかなりヤバい。
湖の対岸側に移動して収納から薬(眠り薬)を取り出して水魔法で水の膜で包む。
それを湖に流す様に地竜が出てくる方に移動させる。
地竜がやって来た。
一頭が水を飲み始めたのを確認して薬入りの水の膜を口元に、
「うまく飲み込んだぞ。」
と思ったら、次の地竜が水を飲みに現れた。
直ぐに次の薬入りの水の膜を流してうまい具合に飲ませた。
水を飲み終わった地竜が戻り始めた、すると一頭が別方向に。
「餌でも食べるのか」
外れた一頭を追いかけて様子を見ると、あの魔素を多く含む実がなる木がここにも茂っていた。
その実をムシャムシャと食べているうちにその地竜は眠り出した。
首元まで近づいたシルバーは、殺気を出さない様に剣を持つと身体強化大で振り下ろした。
「ズーン」
地竜の首が落ちた、見事な切り口だ。
直ぐに地竜を収納すると先ほどのもう一頭を追いかけた。
群れと湖の間で眠りこけている先ほどの地竜を見つけこれも同じように首を切り落とした。
今回大型のマジックバッグを5個持ち込んでいた。
何故なら地竜は一頭で一杯になるからだ。
2頭の地竜を確保したシルバーは、他の群のドラゴンを探し始める。
先ほどの群れから1kmほど離れたところに別の地竜の群れがいた。
様子を伺っていると一頭が湖の方に歩き出した。
シルバーは先回りして湖に潜む。
今回も同じ様にして地竜に薬水を飲ませることに成功した。
その後を追いかけようとしたところで、空から一頭の飛竜が現れた。
この湖はドラゴンの水飲み場の様だ。
ついでにと飛竜にもこっそりと薬水を飲ませることに成功。
しばらく様子を見ていると北の方向に飛び立った。
「後で北の方向に探しに行こう。」
地竜の後を追っていくと、予想通り途中で寝込んでいた。
その地竜も一太刀で首を斬り飛ばして収納に成功した。
その後シルバーは北の方向に走り出す。
どこまであの飛竜が飛んでいったかわからないからだ。
1時間ほど走ると樹々が押し倒された様な様子が見え始めた。
「この辺りに落ちたのか」
すると直ぐに樹々を枕に眠りこけている飛竜を見つけた。
飛竜は胴体が細く翼のあるドラゴンで、綺麗な鱗をしていた。
看破を使い弱点を探すと。
[ 首元と胸 ]
と出た。
樹々のおかげで胸の下側に潜り込む空間がある。
シルバーは胸の下に潜り込み剣をドラゴンの心臓目掛けて突き出した。
「グオー」
飛竜が一声声を出した。
しかし直ぐにぐったりと横たわった。
シルバーの身体中に熱が籠る。
[ スキル 限界突破でレベルが上がりました。 ]
新たなメッセージが頭の中に響く、しかしそれ以上に危険察知のスキルが反応する。
直ぐに飛竜を収納するとその場から離れて息を潜める。
すると直ぐに空に飛竜が3頭姿を見せて降りて来た。
仲間を探しているのか暫く飛竜の血を確認していたがまた何処かへ飛び去っていった。
「危なかった、飛竜を狩るときには気を付けなければならないようだ。」
と呟きながら今回はこれで帰ることにしたシルバー。
それから5日かけてカオス村に帰ると。
5日ほど家族団欒の生活と船用のエンジンを創りながら楽しむと、スガルの街に出掛けていったのであった。
シフトはその際
「お父さん、お母さんお話があります。」
「何ですのシフト。」
「僕、大人の姿になれる様になったんだよ。」
と言うとファーストの姿に変身した。
それを見た母は
「その姿が大きくなった貴方の姿なのね。かっこいいわね。」
と喜んでいた、父は
「それで何か話があるのか」
「うん、今の姿にファーストという名前で冒険者や商業ギルドに登録したんだ。だからそのことを聞きにくる人がいたら、遠縁の者ということで話を合わせてもらいたいんだ。」
「訳があるんだな、いいだろう。まあ大人でなければ登録もできないし、商談も出来んだろうからな。」
と意外とすんなり話を合わせてくれることになった。
ーー スガルの屋敷に戻ったシフト
スガルの街に戻ったシフトは、直ぐにファーストの姿で商業ギルドに向かい
「またマジックバッグが出来たので売ってくれ。」
と中型5つ、小型5つを取り出すと販売を依頼した。
「はいお預かりします。でも既に買い手が決まっております。その中で隣国エーデンス王国の商業ギルドからも予約がありました。売ってもよろしいですか?」
「エーデンス王国のギルドね、いいだろう。俺はまた船造りをするので口座に振り込んでおいてくれ。」
と言い残して港町に向かった。
ーー 船大工 ウヰスキー side
別れる際に
「次の船の準備よろしく」
というファーストに
「何艘分用意しておけばいいのか?」
「そうですね、ドラゴンの数次第でもありますが・・・3艘お願いします。」
と言って帰っていった男の言葉に、ウヰスキーは船大工協会に協力を求めにいっていた。
「そうか、3艘か。何人出そうか?」
「今後のことを考えれば設計と内装専用が数人、船大工が5人は欲しいな。」
「よし暇なやつも付けて技術を身につけさせよう。」
と長老が言えば直ぐに人が集まり、船造りが始まった。
普通ならドグに数隻の船が入っているにだが、流石に今回の巨船は一隻が入るのが精一杯。
そこまで大きな船を作ったことがない船大工らは興味津々で構造の研究と技術の習得に熱心だった。
「流石に大きいな、しかも知らない技術が溢れていやがる。」
「だろう、俺も最初に設計図を見せられたときに驚いたもんだ。」
「で、ドラゴンの素材は手に入りそうなのか?」
「知らんが、アイツが捕って来るんだ自信があるんだろ。」
と話をしていたところにファーストが顔を見せた。
「おお、依頼主様が到着だ。素材は集まったか?」
「やあ今回は人が多いな、素材は集まったぞ最低でも3艘分。」
「流石はドラゴンスレーヤ殿だ、地竜かな?」
「地竜が3頭で飛竜が1頭だ。飛竜はどんな性質の鱗かわからねえから今回は使わないかもな。」
という話を横で聞いていた船大工協会長が
「おい、その地竜を見せてもらっていいかい。俺はいまだに地竜の姿を見たことがねえんだ。」
「いいぜ、ただし解体を手伝ってもらいたいんだがいいかな?」
「そりゃドラゴンの素材を解体できるなら喜んで手伝わせてもらうぜ。」
「ありがたい、船に使わない素材は格安で譲ってもいいけど。」
「本当か、よし今からみんなで解体だ!」
というノリで別のドッグに地竜を出してドワーフみんなで解体し始めた。
噂を聞きつけた商人達も怖いもの見たさとドラゴンの素材を手に入れられないかという僅かな期待で来ていた。
ーー カージナル辺境伯領主邸
「何、今港でドラゴンを解体しているだと。それで何頭のドラゴンを解体しているのだ?」
「話では3頭の地竜と1頭の飛竜だと聞いております。」
「何とドラゴンを4頭も倒して来ているのか。」
「辺境伯様それ以上にドラゴンを収納できるマジックバッグの方も興味がございますな。」
「そう言えばそうだな、ドラゴンの大きさはウチが買ったマジックバッグに入る大きさなのか?」
「とてもとても、この屋敷ほどの大きさだそうです。」
「何、それではまだ大きなマジックバッグが存在するということではないか。」
「その様ですが、その大きさは売り出されておりません。」
「商売上手なことだな。」
「誰かカージナル辺境伯用の船が頼めるか聞きにいってくれるか。」
「はい私くしめが、行って参ります。」
ということで家臣が解体現場に向かった。
ーー ドラゴンの解体と船造り
仮のドラゴン解体場は大騒ぎであった。
「このナイフじゃ全く切れねえ。」
と言い出すドワーフらにファーストは自作のナイフ(ヒイロガネ製)を渡した。
「コイツでなら切れるのか?」
と信じられない気持ちでドラゴンのナイフを入れると、スーとナイフが入る。
「こいつはスゲー!何で出来てるんだ?」
すると鑑定持ちのドワーフが
「協会長!コイツはヒイロガネですぜ!」
と興奮しながら叫んだ。
「なんだと!これが伝説の金属か。おいコイツは誰が作ったんだ?」
とファーストに聞いて来た
「ああそれは俺が作ったんだよ。よく切れるだろう、ドラゴンも一振りで首が飛ぶんだぜ。」
と答えるファーストに空いた口が塞がらない協会長だった。
その様子を遠くから見ていたウヰスキーが
「そいつは非常識の塊さ。」
と呟いていた。
地竜3体の解体が済んだのは夕方火が落ちた頃だった。
ファーストはドワーフ達に
「お疲れさん。酒を準備しているから休憩がてら飲もうか?」
と声をかけると
「おい、マサ!ツマミを買ってこい。」
と直ぐに段取りが始まった。
(慣れているな流石はドワーフだ。)
皆で楽しい宴会をしていると、カージナル辺境伯の家臣がやって来て
「ファースト殿、辺境伯からのお尋ねです。辺境伯用の船は用意できるかとの確認です。」
「あの話ですね、大丈夫です。今回3艘分準備できましたので、半年以内には港に浮かんでいます。」
と答えながら
「それとお願いですが、船が大きいためあの港ではあまり止められません。港を広げてもよろしいでしょうか?許可を待ちます。」
と答えて家臣を戻らせた。
次の日には辺境伯から港拡張の許可がもたらされていた。
解体が済んだ翌日には、ファーストもドワーフ達も船造りに携わっていた。
「俺にドラゴンの外殻造りを見せてくれないか。」
協会長がファーストに頭を下げて頼んできた。
「船大工なら誰もがドラゴンの素材で船を作ってみたいと思う。しかしそう簡単には扱える素材じゃねねし、使い方もよくわからねえ。あの船を見て驚いたんだ。切れ目一つない接合の技術をこの目で確かめたいんだ。」
「そこまで言ってもらって感謝ですね。俺の技術でいいならいくらでも見てくれ。」
と言うと、出来上った。内殻に収納から取り出したドラゴンの鱗を魔力を流しながら加工して貼り付け始めた。
ファーストがふと気付くと周囲にはドワーフが皆んな集まって、ファーストの作業をじっと見ていたのだった。
(熱心ですね、流石です)
今回は船大工のドワーフが大勢参加してくれたために、一艘の製作日数が1月と破格の速さで出来上がっていった。
今回もエンジンはファーストが錬金術で組み立てた物が設置されて船は完成した。
今回、客室と馬車や荷を乗せる倉庫的な部分のレイアウトと豪華さに違いを付けて差別化を図った。
辺境伯用の船については、攻撃力も必要うだろうと大砲の設置穴や乗組員を守る飛竜の鱗を使った盾なども備え付けていた。
製作を始めて3ヶ月で船が出来上がったから港まで来て欲しいと、ファーストは辺境伯へ手紙を出していた。
そしてそれまでにと港の拡張を進めていたのが本日完成した。
港は今までの5倍ほどの規模の大きな港に生まれ変わった。
「これを見たら辺境伯様も驚くだろうな。」
と1人にやりとしながら、新たに完成した巨船用のドッグを見上げていた。
その頃、辺境伯は家臣を連れて馬車で港に向かっていた。
「予想以上に早い完成だな、しかも港も整備したと耳にしている。」
辺境伯の言葉に家臣が
「はい、部下が先日港に向かい驚いて帰って来ました。かなり港の様子が変わった様です。」
「そうか、楽しみであるな。しかし本当にあの値段で良いのか?安すぎやせんか?」
「確かに破格に安値ですが、本人もあの時もうしてましたがドライ家に繋がる者なので辺境伯様にはお世話になっているからと。」
「うむ、それは聞いておるが・・、男爵家に陞爵する事も考えておくか。」
「それは良い考えかと。」
その様な話をしているうちに港が見える場所まで来たところで。
「ん!あれに見えるのは本当にうちの港か?あまりにも大きくなっていないか。それにあの巨大な建物は?」
辺境伯の疑問に答える様に馬車はそに大きな建物に近づいてゆく。
馬車から降りた辺境伯を迎えたのは、船大工のドワーフ達とファーストその人物だった。
「辺境伯様ご足労ありがとうございます。ここが船のドッグになります。辺境伯様の船は今ここにありますのでご確認ください。」
と言うファーストの言葉に、驚きを隠せない辺境伯は
「ああ、そうか・・・それでは船に乗せてもらおうか。」
と答えるのが精一杯だった。
今回船には専用の接続用階段通路が取り付けられており、高さ20mほどの甲板まで容易にたどり着くことができた。
船の大きさに驚きながらその船内にも目を見張りながら
「この様な豪華な船だとは考えてもいなかった。」
と思わず口に出す辺境伯にファーストは
「辺境伯様がお乗りになる船ですから問題ございません。それでは機能から説明させていただきます。」
と言いながらファーストはこの船が海の上を進む砦であることを説明していった。
「何と、ドラゴンの盾を装備しておると。」
「はい、これで防げぬ魔法や攻撃はそうないと考えます。」
「確かにそうであろうな。見事な船である。大義であった。」
といたく感謝してくれた。
この辺境伯一行の見学を遠くから見ていた者達が数人いた。
一つはエーデンス王国の間者、もう一つはイスタンブル王国の関係者であった。
ーー イスタンブル王国の一室
「その報告に間違いはないか?」
「はい陛下、間違いございません。」
「それでカージナル辺境伯からの報告は上がっておるのか?」
「はい、先日報告書が届きました。それによると戦艦のお披露目に陛下の御臨席をお願いしたいとの内容です。」
「うむ、秘密にすることではなく披露するとな。戦艦という名はどういう意味であるか?」
「戦う船ということです。辺境伯の考えでは防衛の力だと書かれておりました。」
「そうか、わざわざ戦火を広げる必要もないか。それでよかろう。」
と納得に様子の陛下。
ーー エーデンス王国の一室
「只今火急の報告が来ました。あの船主があの規模の船を3艘作ったそうでそのうちの一艘が辺境伯の船だそうで。その威容はまるで海の上の砦か城の様だと。」
「そうか、戦力を持たせた船も作っていたか。」
「しかし、我が王国との仲は問題ない状態ですので可能ならば我が王国にも一艘注文をしたいところです。」
「そうだな早めに話を付けるよう指示をしておくように。」
という話ですファーストへの依頼が舞い込むことになる。




