人の姿で変身を使いこなす
ーー 家に戻ってきたシフト
家に戻って来たシフトを見て母メナードが喜んで迎えた。
「信じていたけどどこまで行っていたの?」
「心配かけてごめん、あそこに見える山を超えて獣人族の国まで行ってきたんだよ。お土産があるよ。」
と言いながら上質な布を積み上げた。
「まあ、上等な布ね。何の糸から織ったのかしらね。ありがとうシフト。」
と喜んでくれた。
その頃になると妹のアップルも首が座っていた。
父はというと、カージナル辺境伯から
「ドライ家の働きは目を見張るものがある。カオス村の管理を命ずるので村の発展のため一層の開拓をするように。」
という命令と共に準男爵の叙爵を受けたそうで、今村長と話し合いの最中らしい。
帰ってきた父ドライが
「家名が決まった「フルーツ」だ。」
と言い出した。
(それではあんたはドライフルーツじゃねえか!笑)
まあ兎に角家が発展したようで何よりだ。
帰ってきたシフトは、
「今度は人族でどのくらい変身できるか検証だな、村の開拓や特産品も作らないとね。」
と今後の計画を立て始めていた。
ーー カージナル辺境伯領の領都スガル
カージナル辺境伯領の領都スガルは、人口2万人の辺境としては大きな街だ。
ここは鉱山都市と魔物を防ぐ城塞都市を兼ね備えたような街で、西の森側に高く堅固な城壁と北側の高山に続くトンネル東側には大きな川が街を囲んでいるのが特徴的である。
南側の海には漁をする船と貿易用の船が停泊しているが、この世界の航海は未だ時代遅れのガレオン船である。
そのため航海は風まかせで海の魔物が出れば出航が出来ない日が続くことも珍しくない。
商人は、日程が遅れる可能性が大きな航海の運搬には基本生鮮食品は積まず、織物や鉱石それと鍛治製品を積むことが主である。
この様子を見ていたシフトは、前世の記憶の漁と船の知識を使い街を発展させることにした。
ーー 方位磁石と時間停止のマジックバッグ
6歳になったシフト、教会と森を往復していた日常に変化が現れた。
開拓村からスガルの街まで通常馬車で3日、歩きで5日かかる。
シフトの持つ馬車なら1〜2日、走れば半日である。
心配性な母に
「暫くスガルの街で商売をするために通うことにする。」
と告げると
「街に行くなら安心ね。またお土産を願いね。」
と意外と簡単に許可が出た。
馬車に乗り込み大人に変身したシフトは、スガルの街を目指した。
獣人姿で3週間も変身していたためか、クールタイムが6時間に短縮されていた。
シフトは大人の自分に名前を付けることにした。
「一番初めの変身だからファースト。これでいいかな」
次の日の昼にスガルの街についた、身分証が無いため街に入るために入場税を取られた。
「早めにこの姿の身分証を取らなくては。」
宿を決め馬車を置くと冒険者ギルドを探した。
この街は森が近いため冒険者が多い、中央にある大きな建物がギルドだった。
ギルドの建物に入るとザワザワしていた、依頼を終えた冒険者や情報交換中の冒険者が飲食をしながら時間を潰していたのだ。
受付のあるカウンターの前に並び順番を待つ。
暫くして順番が回ってきた
「ご用件は?」
「冒険者登録をしたい。」
「はい、それではこれに記入をお願いします。」
一枚の紙を渡される。
内容を確認して再度受付に並び用紙を提出する。
「これがファースト様のギルド証です、始めはGランクからです。説明入りますか?」
「お願いする。」
「それでは先ずランクとは・・・・で、依頼は自分のランクの一つ上まで・・・失敗は・・・になります。何か質問はありますか?」
「ここに来るまでに狩った魔物を売りたいがそれは可能か?」
「はい大丈夫です。右手のカウンターか裏の解体場で受け付けます。」
「分かった、ありがとう。」
ファースト(シフト)は買取カウンターに向かう。
担当の職員に
「魔物の素材の買取をお願いしたい。量がある。」
「うむ、ここに置けないほどか。分かったギルド証を出して裏に来てくれ。」
「分かった。」
職員と裏手に回る。
そこには大きな倉庫があり、冒険者が狩った魔物が所狭しと置かれて解体が行われていた。
「ここでいいから出してくれ」
職員に言われて、獣人国で狩って収納していた
・ビッグバード〜5羽
・ビッグボア〜7頭
・サイレントスパイダー〜3体
・アーマーアント〜59体
を出すと、職員が目を丸くしていた。
「これを持って待っていてくれ。」
と引換用の番号の板をもらいギルド内に戻る。
ファーストはギルドの依頼を確認するために依頼が張り出された壁に向かう。
「意外と討伐が多いな。鉱山の仕事も多い。これは漁の手伝いか?」
多種多様な依頼を見ながら明日からのことを考えていた。
酒場を兼用している待合席で待っていると周囲に冒険者や商人の声が聞こえてきた。
「何とか生鮮食品を船便で予想できないかな?」
「それができれば大儲けだろうが、海には魔物がいていつ出航できるか分からないから出来ないんだろ。」
「何でも王都の商人が時間経過がとても遅いマジックバッグを購入して儲けていると聞いたんだよ。」
「もし本当でもそんな代物俺たちには買えやしないだろ。」
別の場所から
「聞いたか?鉱山に魔物がで初めて仕事ができないと言う噂。ゴーレムだとよ。」
「ゴーレム?もしアイアン以上のゴーレムなら暫くはお手上げだろうな。」
さらに別の席から
「この辺りで上質な布を作ってる場所はないだろうか?」
「どうしたんだい」
「イスタンブルの王都で今貴族令嬢に新しいドレスのデザインが流行り出していて、それに合う布を探しているんだよ。」
「それなら魔物の糸を織った布しかねえだろ。」
「それもそうだが、たまに出る繭玉だけでは数が足りなくてね。」
「そりゃ大変だな。」
中々良い情報が入るなここ、暇な時はここに来て情報収取をすべきだな。
と感心するファースト。
番号札を呼ばれ受付に。
「買取額が決まりました。金貨22枚と銀貨15枚です。確認をお願いします。それと今回の買取でランクが上がりました。ギルド証を出してください。」
「はいこれでEランクです。」
「2つも上がったのか?」
「はい、ギルドとしても能力のある方は早めにランクを上げてもらっています。」
と言う流れでその日のうちにEランクになったファーストは、明日から更なる討伐を受けることにした。
ーー 鉱山のゴーレム
ゴーレムの討伐依頼が来ていた。
早速ファーストは受付に依頼書を持ち込んだ。
「鉱山の魔物討伐ですね。受付ました。」
「鉱山までの道順がわからないんだが」
「それなら過ぐ近くにある乗合馬車に直通便がありますよ。」
「ありがとう」
乗合馬車はすぐに分かった。ちょうど馬車が出るタイミングだったので銀貨5枚で乗り込んだ。
小一時間馬車に揺れてトンネルを抜けると坑道の入り口についた。
坑道の責任者らしき人物が同じ馬車でやって来たファーストを含めて6人に
「魔物は2種類、アイアンモール(大きなモグラ)とアイアンゴーレムだ。討伐証拠にゴーレムは魔石モールは右手を持ち帰ってくれ。」
そう言われてその場から魔物狩りがスタートした。
坑道の穴は3つ、1、2、3人に分かれて入って行った。
穴の中は意外と明るくて夜目を使う必要もなかった。
どちらの魔物も魔石を持っている可能性があったので、魔力感知を使い索敵しながら進むファースト。
反応がすぐ右横で!突然右側の壁が動き出した。
「ゴーレムは動き出すまで分からないか」
心臓部に魔石があり頭の部分に文字のようなものがある。
先ずは心臓部に正拳を打ち抜く、予想と違い肘までめり込みゴーレムは動かなくなった。
「これでは魔石が割れるな」
とぼやきながら次のゴーレムには頭の文字部分を削り飛ばすと、電池が切れたように活動が停止した。
その後は特製のナイフで胸の魔石をくり抜き先へと進む。
次第に坑道内が荒れているのが見えて来た、あらゆる場所に人が入れる程の穴が空いている。
これがアイアンモールという魔物に仕業だな。
穴に一つに持って来た生乾きの枝を突っ込み火を付ける。
ファーストはガスマスクを被り穴の状態を確認すると、3つほどの穴から煙がで始めた。
「これが繋がっているのか、煙が嫌ならもうすぐ出て来そうなもんだが。」
と呟いた時、煙の穴から大きな赤いモグラが飛び出した。
思わず反射的に風魔法のウインドカッターで上下に斬り飛ばすファースト。
「アイアンという名の割には硬くないのか」
討伐を確認して右手と魔石を回収すると、次の穴に薪を突っ込み同じことを3度繰り返す。
4頭のアイアンモールを討伐して周囲に魔物の気配がなくなったことを確認して出口に戻った。
「早いじゃねえか、諦めたか。それもしょうがねえけどな、命あっての物種だ。」
と言う責任者に討伐品を見せると
「ええ!これを今の時間で。十分だありがとうよ。」
と答えて討伐証明書にサインをして渡してくれた。
この時ファーストは少しでも早く1人になりたかった。
何故なら、坑道の中で
「レベルが上がりました。」
と言うメッセージを受けたからだ。
人族の限界80で頭打ちしていたはずなのに。
外に出ると馬車までの時間がまだ十分あるようだったので、人のいない場所に移動してステータスを確認したらスキルに
「限界突破(1)」種族レベル81
が表示されていた。
限界突破のスキルがあるのか、と言うことは同じようなスキルを持つ者がいてもおかしくないな。
「慢心せずに強くならなければ。」
鉱山から街に戻り、ギルドに討伐証明を出して報奨金をもらう。
宿に戻ると早めの夕食を摂りスキルの検証をする。
今回の検証は、
・人族での変身の回数
である。
同じものにしか変われないのかそれとも、イメージさえしっかりしていれば複数の者に変われるのか。
持って来た姿見を目の前に置いて
「変身」
と唱えながら15歳ぐらいの青髪の少年をイメージする。
身体がひかり、目線が低くなった。
「おお、青が身の青年に変身できている。名前はセカンドでいいか。」
そこでスキルのクールタイムを確認。
「クールタイムは2時間か」
横になり時間経過を待つ。
2時間後
「変身」
と唱えながら今度は15歳ほどの少女をイメージする。
前世の記憶があるので性別についてはあまり問題ではないと考えてだ。
体が光る。
「うんうん。イメージ通りの美少女になっているな。名はショートだ。」
クールタイムが来るのを待ってファーストに戻ると、夜の街に出掛けて行った。
目的はショートの服だ。
歓楽街の近くには女性物の服を売っている店が遅くまで開いている。
先ほどショートの身長やスタイルを確認したファーストは、店員に伝え3着ほど服などを買い揃えた。
その時
「彼女へのプレゼントですね。」
と揶揄われたのは笑い話だ。
これで、人族なら3人以上で男女関係なくイメージ通り変身できることがわかった。
この後の検証は、見た者に変われるかと言う検証だ。
タイミングを見て考えよう。
そういえば今回、女性に変身または男に戻る時にかなりの魔力を使った。
成長だけではなく特性まで変わる場合は魔力の消費が激しいのかもしれない。




