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アルスベルの冒険譚  作者: ブレイン


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3/5

幼き光

剣を持つよりもずっと前に、アルスベルは世界を見つめ、音を聞き、風に触れた。

その好奇心こそが、のちに彼を世界へ導く“最初の羅針盤”となる。

アルスベルは、泣くよりも“見る”子だった。

抱かれながら、いつも天井や人の顔をじっと見つめていた。

母セリアはそんな息子を抱きしめながら不安そうに笑った。


「この子ね、ほとんど泣かないの。

でも、目がよく動くのよ。まるで何かを探してるみたい」


父グランはぶっきらぼうに頷き、鍛冶場へと戻る。

「……親に似たんだろ。俺も昔は、なんでも分解して怒られた」


カン、カン、カン――。

鉄を打つ音が、家の中に響き渡る。

アルスベルはその音を聞くと、不思議とその方向をみる。

その瞳はまるで、光の粒を追いかけるように輝いていた。


一歳を迎えた頃には、もうハイハイでどこへでも進んでいく。

ある日、母が目を離した隙に鍛冶場へ入り込み、煤だらけになって笑っていた。


「まったく……お前は火の中にでも行きそうだな」

グランはため息をつきながらも、どこか嬉しそうだった。

その目には、幼い頃の自分を重ねていたのかもしれない。


二歳の春、アルスベルは初めて外の世界を見た。

母に抱かれ、畑の外の丘へ出たとき――

眩しい光、青い空、鳥の声、風の匂い。

すべてが新しく、すべてが未知だった。


「アル、見える? あれが空よ。広いでしょ」


アルスベルは答えられない。

けれど、その小さな指が空を差した。


家に戻ると、グランは黙ってその話を聞いていた。

やがて、ひとりごとのように呟いた。


「アルは、きっとこの村を出て行くな」


夜。

セリアは寝息を立てる息子の髪をなでながら、静かに言った。


「この子は、きっと世界を恐れない子になるわ」


月光が窓から差し込み、藁の上に眠る幼子の頬を照らした。

その光は、まるで未来の冒険譚を静かに祝福しているようだった。

英雄譚の始まりは、戦いでも運命でもない。

ひとつの光、ひとつの音、ひとつの笑顔。

この章で描いたのは、まだ“何者でもない”アルスベルの最初の冒険。

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