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アルスベルの冒険譚  作者: ブレイン


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2/5

アルスベル誕生

どんな英雄も、最初はただの子どもだった。

この章では、後に「白銀の英雄」と呼ばれるアルスベルが、どのような町で、どんな家族のもとに生まれたのかを描く。

華やかでも壮大でもない、けれど確かに息づく“はじまり”の物語だ。

――白歴五十七年。

 十年以上続いた戦争が終わり、帝国の旗が焼けた城壁に掲げられた年。


 世界は、ようやく静けさを取り戻した。

 けれど、それは平和というには、あまりにも儚い静寂だった。

 荒野にはまだ焦げた匂いが残り、

 人々の心にも、恐れと空虚だけが根を張っていた。

 その年の春、辺境の村ルヴェルで一人の子が産声を上げた。

 小さな木の家。吹き抜ける風の音。

 外では、遠くの山々にまだ雪が残っていた。


 母の名はセリア。戦で兄を亡くし、それでも笑う強い女性だった。

 父の名はグラン。かつては帝国軍の鍛冶師で、

 今は戦を嫌い、村でひっそりと暮らしている。


 その二人の間に生まれた子の名――アルスベル。


 幼い彼の瞳は、まるで曇り空を映すように灰色だった。

 けれど、その奥には小さな光が宿っていた。

 それはまだ誰にも気づかれない、

 “世界を変える”ほどの好奇心の光だった。


 産声が収まると、

 グランはそっと窓を開けた。春の風が、温もりと共に部屋を包む。


「……お前の時代は、穏やかであってほしい」


 父は小さく呟いた。

 しかし、風はその願いをどこか遠くへと運んでいった。

 その風の向こうで、まだ終わらぬ戦の火種が、静かに燻っていることを、

 誰も知らなかった。

この章では、「英雄アルスベル」という存在の最初の息吹を描いた。

何気ない家庭、普通の両親、穏やかな町。

物語の壮大さは、決して特別な出自から始まるとは限らない。

次の章では、幼いアルスベルが初めて“世界の広さ”を知る瞬間へ――。

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