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『ダイオウイカ先生の診察カルテ』   作者: ツナ缶
『ダイオウイカ先生の診察カルテ』 全7章
1/7

第1章:深海の診療所(タツノオトシゴ)

ざぶん… ぽとり… くるり…

潮の流れが静かに診療所の壁を撫でる。

そこは、深海にぽつんと灯る場所――ダイオウイカ先生の診療所。


ふわりと触腕を巻きながら、先生は今日もカルテの棚の前に佇んでいる。

じっと音も立てず、でも確かに「誰かの心」を待っていた。


そのとき、そより…と訪れたのはタツノオトシゴの患者。

小さなヒレをふるわせながら、ゆっくりと先生の前まで泳いできた。


「先生…背中が重くて、深く息ができないようなんです。」

その声は小さく、けれど沈むほど真っ直ぐだった。


ダイオウイカ先生は、すぅ…と触腕を伸ばし、胸のあたりに吸盤をそっと添える。

ぴとん… とくん… 胸の鼓動が、静かに響いてきた。


「小さな体に大きなものを抱えると、潮に逆らっているような感覚になるんです。

 でもね…あなたが沈まずにここまで来たことが、すでに強さの証です。」


タツノオトシゴはふるふる…と身体を震わせながら、そっと眼を閉じた。

その姿は、“ほんの少し誰かに聞いてもらえた”心の形だった。


先生はカルテにさらさら…と診察記録を書き、棚の奥に静かにしまった。


---


今日の診察記録。

その最後の行に、こう書かれていた――


『小さな体でも、背負えるものは大きい』


---

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