金太の大冒険で大爆笑した話
金太の大冒険と言うのは金太がお姫様を助け一緒に旅をする冒険を歌ったコミックソングで、最大の特徴が一部の歌詞の区切りを変える事で違う意味に聞こえる点にある。例えば「金太まもって」「金太まけるな」等は、「金太ま もって」「金太ま けるな」という感じで区切ると……隠された言葉が浮き上がって来るのである。このダブルミーニングの歌詞は三度繰り返され強調され、金太の大冒険において非常に重要な要素となっている。(というかそれしかない)
そんな金太の大冒険をyoutubeかどっかで見つけて初めて聞いて「なんだこれクッソくだらねーな」と呆れ気味の苦笑を零していた私だったが、ある歌詞に至って文字通り椅子から転げ落ちる事となる。お腹が空いた金太がマスカットの木を見つけナイフでマスカットを切ったという冒険の一コマで、「金太マスカットナイフで切る」これが三度繰り返されるのである。更にイタソーの合いの手まで添えられる。次の瞬間には私は転げまわりながらひたすら笑い続けた。引き攣った笑いが腹の底からどんどん湧き出てきて息が苦しくて仕方がなかった。
何が面白いかと言うと、それまでずっと下品な印象を受ける歌詞だったのが「スカットナイフで切る」というどこか清々しさを感じさせる歌詞と共に「それ」に対する容赦のない制裁が行われ、文字通りスカット全てが報われるような気持ちよさがあった事に尽きる。しかもマスカットにスカットが入っているという鋭い発見があってダジャレとしても完成度が高い。一方で、リズムとしては「金太マカオにつく」くらいの文字数が精々なのに「金太マスカットナイフで切る」は文字数が多すぎるため早口になってしまっており、その点グダグダといえばグダグダである。しかしこのグダグダさと曲自体の自己破壊ともいえる「スカットナイフで切る」の美しさ、バカバカしさ、面白さ全てが調和して互いを引き立て合うのだからたまったものではない。私は5分ほど床で爆笑し続ける事となってしまった。……といっても文字で説明したら理屈っぽくて面白そうに聞こえないかもしれない。かくいう私も今思い出してもクスッとくるくらいで笑い転げるほどではないが、当時の私の中は完全に壺に入っていて、理屈もへったくれもなくただひたすら面白くて仕方なかったのだった。
しかし思い返してみても、私が人生で一番笑ったのは間違いなくあの歌詞を初めて聞いた時であろう。(ちなみに二位は新保さんコピペを読んだ時)そしてこれからの人生でも恐らくあの時ほど笑う事もないだろう。……そう考えたら感慨深いものである。