最高のライブ
2011/10/16(日)<2>
スーパーダッシュ中のヨッシーですよ。
てか、ホント最後まで忙しい!
しかし、フルマラソンを完走した実力なら・・・(それはもう良いです
そんなわけで、ホノから呼ばれて向かってるとこなんですけどね。
ホノがどこにいるのかはわかってます。
ただ、この辺の地理に詳しくないので、そこまで行く道のりが怪しいんですよ(ぉぃ
とはいえ、1度は行ったことあるんで、見覚えのある道を選んでは進みましてね。
何とか到着しました。
そこは、ヨーが交通事故にあったという、あの道です。
まあ、普通にホノがいましてね。
「ホノ、何やってんだよ?」
そんな風に声をかけたんですが、ホノはそこにあった花束をじっと見ているだけでした。
そして、俺は少しだけ待つことにしましてね。
「・・・急に、ここに来たくなったの。それで来たら、動けなくなっちゃったのよ・・・」
ホノはそんな風に切り出しましてね。
「私、本当は1人でいようとしてたのよ。私が死んだ時、悲しむ人をあまり作りたくなくて・・・」
てか、ちゃんと聞いていませんでしたが、ホノもガンの治療をしている様子がなかったんです。
まあ、言い方を変えれば、治療出来る状態じゃないということなんでしょうけどね・・・。
「でも、ヨーは私が死ぬ時まで、ずっとそばにいたいって言ってくれたの。なのに、ヨーが交通事故にあって、私よりも先にいなくなって・・・」
そこで、ホノの目から涙が零れましてね。
「今、この子だけは産もうって、それだけを思って生きてるの。この子さえ産めれば、私は死んでも構わないって・・・」
そこで、ホノは言葉を詰まらせましてね。
「でも、時々死ぬのが怖くなるのよ!この子が一人前の大人になるまで、私は見守っていたいの!もっと生きたいのよ!」
ホノは少しだけ気持ちを落ち着かせるように深呼吸をしましてね。
「ごめん、いつもはすぐ落ち着くのよ。なのに、今日は無理なの・・・。もうすぐライブもあるのに・・・」
そのまま、ホノは顔を伏せてしまいましてね。
それまで、俺は黙ってたんです。
何を言うべきか、わからなかったからなんですけどね。
ただ、ここでマサのことを思い出しました。
そして、自然と言うべきことがわかったんです。
「マサも最期の時まで、もっと生きたいって言ってた。だからマサが死んだ時、もっと生きてもらいたかったと思った」
今だって、出来ることなら俺達のライブを見てもらいたいって思ってますしね。
「でも、そうやってマサが最期の時にもっと生きたいって思えたのは、幸せだったからだと思ってる」
そして、ここでホノの言葉を思い出しましてね。
「ここはつまらない世界だと思うよ。上手くいかないことばかりだし」
そこで、ホノは顔を上げました。
「でも、だからこそ上手くいかせようと努力出来るわけで、その結果が報われれば・・・いや、報われなくても努力すること自体、楽しいじゃん?」
これが、ホノの言葉に対する自分の答えってやつですかね。
「そんな、楽しくてつまらない世界で、俺もホノも生きてるじゃん。ホノだけでなく、俺もいつかは死ぬ。てか、人間いつ死ぬかなんてわかんないし」
そのまま、俺は話を続けました。
「だけど、今生きてるんだから、出来ることをやろうよ。最期の瞬間に、もっと生きたいって思えるようにしようよ」
ホノは俺の話を真剣に聞いてくれましてね。
「だから今は、ACOUSTIC YEAHのライブをやろうよ」
「・・・うん」
そこで、ホノは笑いました。
てか、ホノの説得が出来たの、マサのおかげですね。
ホント、今でも感謝ですよ。
そんなわけで、ホノと一緒に戻りました。
まあ、大遅刻したわけですが、リハーサルも普通にさせてもらいましてね。
てか、みんな事情を察してくれたのか、特に聞いたりしてこなかったのが嬉しかったですよ。
そんなこんなでライブが始まりました。
とはいえ、自分達の番は最後なんで、まだ時間ありますけどね。
ここでちょっと動きます。
「ヒロ、休憩してきなよ」
そんな風に言って、ミホとワタルがガミさんの手伝いを始めましてね。
手の空いたヒロはセキさんと合流して、ガミさんへのサプライズの準備に入りますよ。
「ミサ、ヒロと一緒にいて、途中で状況を知らせて。あとは・・・」
まあ、軽く説明をしましてね。
「はい、わかりました」
てことで、ミサもヒロと行動を共にさせました。
ちなみに、ガミさんへのサプライズは2曲歌った後に実施する予定です。
途中でだと緊張したままだろうし、嫌だなと思いましてね。
とりあえず、自分達の演奏が終わってからにしようと思ったんです。
まあ、2曲終わった段階で、ガミさんにはステージのそばにいてもらいたいんですけど。
「ヨッシー達のライブ、先頭で見るからね!」
この点は、ガミさんの方から来てくれるんで、問題ないですね。
そんなこんなで、時間はあっという間に過ぎましてね。
いよいよ、自分達の番が近付いてきました。
てことで、控え室のようなとこへまた行き、ギターのチューニングなんかをしましてね。
てか、周りに目をやると、みんな緊張している様子でした。
まあ、俺も緊張してるんですけどね。
「俺は1人でも多くの人に、マサのことを伝えるため、ライブをやるよ」
そんなことを言ってみました。
「エンは何のためにやる?」
そして、そんな質問をしましてね。
「自分はあまり深く人と関わらないようにしていました」
エンはそこで笑顔を見せましてね。
「でも、今は違います。だから、こんな大切な仲間がいるんだと、みんなに知ってもらうため、ライブをやります」
エンは力強い声で、そう言いました。
そして、次はアツに目をやりましてね。
「前にも話したが、俺は・・・人を傷付けた」
アツはゆっくりと、その言葉を言いました。
「そんな俺でも、人を感動させることが出来ると証明するため、ライブをやる」
てか、アツに絡んでいた不良達が来てることを、さっき確認しましたからね。
その不良達にも、伝わるものがあると良いですね。
そして、最後はホノです。
「私は多分・・・これが最初で最後のライブになると思うの」
ホノは自分のお腹に手を当てましてね。
「この子に、私がどんなことをしていたか伝えるため、ライブをやるわよ」
ホノはそこで笑顔を見せました。
「みんな、そんな思いを持ってるなら、緊張してる場合じゃないね」
俺がそう言うと、みんな笑いましてね。
うん、すっかり緊張も解けたようです。
「それじゃ、始めようか」
その言葉に全員がうなずいて、ステージに上がりました。
「ヨッシー!」
一際大きな声援が聞こえて、ガミさんの位置はわかりましたね。
その周りに、知り合いもみんないますし。
てか、普段、身近にいる人がこれだけいると、何だか安心しますね。
そこで、ミサも見つけましてね。
ジェスチャーで、ヒロの準備が終わったらしいことがわかりました。
てことは、時間稼ぎなんかをする必要なく、ただ2曲演奏すれば良いだけですね。
「どうも、ACOUSTIC YEAHです」
そんな挨拶をしたら、大きな拍手が返ってきました。
てか、メチャクチャ人多いですね。
てことで、また緊張しそうになったんですけど、大きく深呼吸をして、気持ちを落ち着かせました。
「じゃあ、1曲目、聴いて下さい。『YEAH』」
そして、俺はまた深呼吸をしましてね。
この曲は最初、自分のギターから入ります。
なので、少し時間を取って、自分のタイミングみたいなものを計ってみました。
でも、弾き出したら、あっという間でした。
少しだけ弾いて、みんなが入るとこで、軽く周りに目配せをしましてね。
みんながタイミング良く入ったとこで、急に安心しちゃいましたよ。
そして、俺、歌いました。
アップテンポな曲なので、速くなりすぎないように気を付けたりしましてね。
でも、途中から、そんなのも考えられなくなり、とにかく楽しくなっちゃいました。
親の仲が悪い
誰かを好きになれない
流行がわからない
長生き出来る気がしない
4人で挙げた悩み、どうにも出来ないことでした。
それも、今なら“YEAH”って言って笑い飛ばせる気がします。
てか、うちら初心者だし、プロ並の演奏なんて無理です。
だけど、これで十分パーフェクトでしょって考えます。
うん、この曲、自分達も元気付ける曲だったんですね。
そんなわけで、楽しい気分のまま、1曲目を歌い終わりましてね。
「ありがとうございました」
そう言うと、みんなから大きな拍手をもらえました。
そんで、周りに目をやったら、ホノ達も楽しそうに笑ってましてね。
さて、次の曲ですね。
「次の曲で、実は最後になるんですけど・・・自分の大切な親友であるマサからもらった曲になります」
そこで、俺はマサの話をすることにしました。
「マサはガンに侵されてしまって・・・今はもういません」
この時、みんな真剣に俺の話を聞いてくれましてね。
「マサはこの曲で何を伝えようとしていたのか、その答えを今も自分は探しています。でも、1つわかったことがあるんです」
それは、今の自分だからこそ出せた答えです。
「この曲を1人でも多くの人に聴かせたい。きっと、マサはそう思ってたんです。だから、自分にこの曲を託してくれたんです。マサの代わりに自分がこの曲を多くの人に伝えるだろうと、信じてくれたんです」
最近まで、このことに気付かなかったんですけどね。
俺って、ホントバカですよ。
「だから、下手くそでも、精一杯歌いたいと思います。聴いて下さい。『道』」
そこで、俺はアツに目をやりましてね。
この曲は、アツのカウントから入ります。
アツは真剣な目で、タイミングを計りましてね。
4回、カホンを叩いたとこで、前奏に入りました。
まあ、この曲を歌ってる間のこと、俺はあまり覚えてないです。
とにかく必死に、マサの伝えたかったことを伝えたいと思っただけでした。
そして、気付いたら、演奏が終わってました。
そんな状態だったんで、上手くいったかわからなかったんですけどね。
大きな拍手が聞こえて、俺は思いました。
ああ、とりあえず、今の自分達に出来る、最高のライブだったんだろうなって。
そんなわけで、ACOUSTIC YEAHのライブはこれで終わりなんですけどね。
まだやることがあります。
でも、結構長くなってきましたからね。
ここで一旦区切ってみる1日の途中でした。
作中でヨッシー達が演奏した曲『YEAH』と『道』は、それぞれ以下で公開中です。
YEAH:
https://soundcloud.com/susumu_nanashino/yeah
道:
https://soundcloud.com/susumu_nanashino/acoustic-yeah