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彼らの出会いの話

2011/10/14(金)<1>


仕事の有休としては、今日で最後なんだな~と思ったヨッシーですよ。

明日と明後日は普通に土日で休みですからね。

てか、こんなに休んで、俗に言う休みボケってのにならないと良いですね・・・。


さて、今日はとりあえず、店の手伝いをしてたんです。

「ムラさん、昨日はありがとうございました」

そんで、いつも通り来ていたムラさんに礼を言いましてね。

「仲間のために無茶をする奴なんて、久しぶりに見て嬉しくなったんだ。だから、力になれて良かった」

ムラさんはそんなことを言ってました。


「やっぱり、都会に帰ったりしないで、ずっとこっちにいたらどうだ?」

「いや、ですから・・・」

「そうだよ!ずっとこっちにいたらどう!?」

って、またガミさんが妙なタイミングで出てきてるし!


とはいえ、軽く考えてみましてね。

前に言った通り、自分は働かなくても生活出来るぐらい、裕福な家庭に生まれています。

なので、仕事をやめて、ここでガミさんの店を手伝いながら生活するってのも、普通に出来るんです。

ガミさんなんかと、ただ楽しいだけの生活をまた送るってのも悪くないですしね。

ただ、何か引っかかるというか、それだと納得出来ない気もしまして・・・。


そんなことを考えていたところで、客が来ましてね。

「お待たせ」

来たのは、ホノ、アツ、エンの3人です。

ホノは始めから何もないとして、エンなんかは仕事を休みにしたみたいですね。


「ホノ、もう大丈夫なの?」

「それも、ホノ差別だから」

「はいはい、すいませんね」

まあ、そんな風に返したんですけど、自分の言いたいことは言いますか。


「人それぞれ違うんだから、同じように扱うなんてありえないでしょ。てか、誰だって出来ることと出来ないことがあるわけで、俺は自分じゃ出来ないことに直面したら、誰か出来る人に手を貸してもらいたいっての」

この台詞、ガミさんに言った台詞でもあるんですけどね。

「そもそも、ホノに対してだけ特別扱いしてるわけでもないし。とりあえず、差別なんて俺はしてるつもりないから」

そんなことを言ったら、ホノは笑いました。

・・・てか、大笑いしてる?(ぇ


「別に私、冗談で言ってるだけだし!本気で返さないでよねー!」

うわ、何か思い切り殴りたくなってきた!(女性に手を上げちゃダメですよ

と思ったとこで、ホノの目から涙が零れましてね。

「もう・・・ヨーと同じこと言わないでよね」

そのまま、少しの間、ホノは泣いていました。


そして、泣き止んだ後は、また笑いましてね。

「話、聞いてもらっても良い?」

「え?」

「私達がバンドを組むことになった話よ」

ホノの提案に、俺はうなずきました。

それで、話を聞きましてね。


最初のきっかけは、ホノとヨーの出会いでした。

ホノはガンの治療や検査のため、病院に通院していました。

そして、ヨーはその病院で、ギターを演奏しては入院患者を元気付けるってなことをやってたそうです。

当然、ホノは病院に行った際、そうして演奏しているヨーを何回か見かけていたと。

ただ、話しかけたり、近くで演奏を聴いたりといったことはしないで、遠くで見る程度にしてたそうです。

でも、楽しそうに演奏しているヨーを見て、ホノは少しずつ惹かれていたとか。


まあ、この時点で、2人は出会っていなかったんですけどね。

出会いのきっかけは案外唐突に来ました。

その日も、ホノはヨーの演奏を遠くから聴いていたそうです。

「そんなところにいないで、もっと近くで聞こうよ!」

そこで、そんな風にある人物から声をかけられましてね。

はい、てか、このある人物ってのはガミさんですけど(ぇ

去年の4月頃の話らしく、ガミさんが実家に帰った直後ってことのようですね。


そんなわけで、ガミさんに巻き込まれる形でホノはヨーと知り合い、自然と仲良くなっていったそうです。

まあ、その過程でガミさんが良くも悪くもキューピッドになったようですけどね。

だから、ホノはガミさんのこと、心から感謝してるみたいです。


そんなこんなで、気付けば、ホノとヨーは恋人同士になっていたと。

それから、ヨーの提案でホノも楽器を始め、一緒にバンドでもやらないかという話になりましてね。

メンバー集めをガミさんの店でやったそうです。

その結果、罪を犯してしまった自分を変えたいと思っていたアツと、人との関わりを避けていたエンの2人がバンドに入ることになったというわけです。


「毎年、祭りでライブをやることは知ってたから、そこで演奏しようってヨーは言ってたの。たくさんの人に演奏を見せたかったみたい」

「人を感動させたい・・・だっけ?」

「ヨーは音楽を使って、人を感動させたり・・・幸せにしたかったみたいね」

だからこそ、ボランティアのような形で、病院で演奏したりしてたわけですね。

そして、誰でも見に行ける祭りのライブで演奏したいとも思ってたようです。


「それから少しして、私、妊娠してることがわかったの」

そこで、ホノは自分のお腹に手を当てましてね。

「当然、出産は危険だし、反対もされたけど、私はこの子を産みたいと思ってるの。ヨーも同じ気持ちだったから・・・」

「ホノはいつか自分の子に見せようと、ビデオで色んなメッセージを残してるんだ」

そういえば、ホノは練習の時もビデオを回してましたもんね。

それは全て、いつか生まれてくる子に動いている自分の姿を見せるためだそうです。


「あ、別に死ぬつもりじゃないわよ?私、ガミさんからもらったミサンガにちゃんと願ったんだから」

そこで、ホノは少しだけ笑いましてね。

「この子が立派に成長するまで、私がそばで見守っていられるように・・・ってね」

「・・・そっか」

「だから、いつかこの子と一緒にビデオを見ながら、何があったのかを話すのよ」

「そこに、僕らのライブの様子を入れたいんです」


そこで、3人は頭を下げましてね。

「ヨッシー、引き続き協力してほしいの」

「・・・え?」

「私と一緒だと、マサさんのことを思い出させちゃうことあると思うけど、ヨッシーと一緒にやりたいのよ」

「いや、ごめん、意味がわかんないんだけど?」

てか、自分は普通にみんなと一緒にやるつもりでいるんで、こんな風にお願いされる理由がわからないんですけど?


「ヨッシー、マサのこと、辛いかもしれないけど、乗り越えないとダメだよ!」

・・・ガミさん、あなたがいらんことを言ったんですね(確信

「てか、俺はとっくの昔に乗り越えてるし、今もホノ達と一緒にやるつもりでいるっての」

「え?」

「ガミさん情報、あまり当てにしない方が良いよ・・・」

ガミさん、ホント俺のことをわかってくれないですね。


「それじゃあ、一緒にやってくれるの?」

「てか、ここまで来て抜ける理由がないし」

というわけで、知らぬ間に出来ていた謎の誤解を解きましてね。

時間もあまりないし、4人でスタジオ練習しちゃいましょう!


てことで、スタジオに行きましてね。

曲としては完成してるんで、あとは全員で合わせるだけです。

そんなわけで、軽くやってみたんです。

そしたら、メチャクチャ良い感じなんですよ!

てか、普通にバンドになってますよ!


「良い感じじゃん」

「私も同感よ」

「俺達、やれば出来るんだな」

「僕も驚きました」

それぞれの感想も良い感じですね。


そんなわけで、今日はビデオで撮った映像をみんなで見返したりもしましてね。

「緊張する本番でどれだけ出来るかってのはあるけど、こんな感じに出来れば十分パーフェクトでしょ」

ちなみに、十分パーフェクトでしょってのは、『YEAH』の歌詞で出てくるフレーズなんですけど、気に入ったので使ってみてます。

ホント、『YEAH』も『道』も良い感じですし。

・・・ただ、良い感じじゃないのもありましてね(ぇ


「『LALA』どうしようか・・・?」

基本、アドリブというか、適当に演奏すれば良いって感じにしちゃったんで、あまり練習もしてないですからね。

他の2曲と比べて、これだけ完成度が低いんです。

「アドリブではなく、ちゃんと何を演奏するか決めれば良いんじゃないでしょうか?」

「それだと、この曲の良さが出ねえだろ」

「そもそも、この曲をライブでやろうというのが間違いかもしれないわね」

ただ、『LALA』を演奏しないとなると、持ち歌が2曲になってしまいます。

てことで、どうするべきか考えましてね。


「みんなに提案があるんだけど・・・」

「提案って何よ?」

「ガミさんのために、ちょっとやってみたいことがあるんだよね」

そこで、軽く説明しましてね。

まあ、簡単に言うと、ガミさんに対するサプライズなんです。

ヒロとの会話の中で、軽く思いついてたことなんですけどね。


「それ良いわね!私、ガミさんには世話になったし、そんな恩返しがしたかったのよ!」

「俺も賛成だ」

「僕も賛成です」


てことで、みんな賛成してくれましたからね。

次の段階として、ヒロに電話しました。

そして、ヒロも喜んで乗ってくれましてね。

これで、うちらがするべきことは決まりました。


「それじゃあ、『YEAH』と『道』を集中して練習しよう」

そんなわけで、練習再開って感じだったんですけどね。

ここで、トラさんから電話が来たんですよ。

まあ、どうしたのかな?と思いつつ出たんです。


「休み中にすまない。トラブル発生だ」

トラさんはそんな言葉から切り出しましてね。

内容は、先週前倒しで終わらせた仕事についてでした。

まあ、お客さんへの納品も前倒しでやったらしく、それでお客さん側での確認なんかも行われてたみたいなんですけどね。


「仕様のミスがあったんだよ」

「え?」

「それで日曜までに修正を頼まれたんだけど・・・」

まあ、詳しい話を聞いてみましてね。

状況的に相当やばいってことがわかりました。


てか、システム開発とかって各機能ごとにプログラムを分けるんです。

まあ、機械なんかに例えると、プログラムはたくさんの部品で、それらを併せて1つのものを作るってイメージですかね。

こうすることで、並行して複数のプログラムを修正出来たり、完成までの進捗が把握しやすくなったり、利点は多いんです。

そんで、今回トラさんから話を聞いて、確信したことは、そうしてたくさん作ったプログラムのほとんどが修正対象になるということです。

どう修正すれば良いかはわかってるんで、ひたすらキーボードを打つだけの作業になりそうですが、数が数なだけに人手が必要でしょうね・・・。


「今から会社に行って、手伝いますね」


俺は考えるまでもなく、そう言ってました。

「良いのか?」

「呼ぶつもりで電話したんですよね?帰りにそのまま寄るので、私服になりますけど、良いですか?」

まあ、私服で行く許可をもらいまして、すぐ行くことにしました。


「どうしたのよ?」

「仕事のトラブル。やっぱ、社会人だし、仕事優先しないと」

「ライブはどうすんだよ!?」

まあ、その心配は当然でしょうね。

でも、俺には考えがあります。


「徹夜してでも今日中に終わらせて、明日にはまた戻るよ。悪いけど、ガミさんとかに状況を伝えておいて」

はっきり言って、土日も使わないと無理な状況だと思います。

ですが、意地でも終わらせるつもりですよ。


というわけで、急遽仕事のために家へ帰ることになった1日の途中でした。

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