演奏したい曲
2011/10/11(火)<2>
ちょっと探偵気分なヨッシーですよ(ぇ
まあ、エンの待ち伏せをしてるだけですけどね。
ガミさんから、エンが何時に仕事終わるかって聞いたんです。
それで、少し前の時間から張ってみたんですよ。
とはいえ、普通に残業とかで遅くなることもあるわけだし、いつまで待てば良いですかね。
なんて考えていたら、普通にエンが出てきた~。
「エン!」
「何でいるんですか?」
「丁度近くを通ったんだよ。スタジオまで一緒に行こうよ」
「ベースを取りに一旦家に帰るので、先に行ってて下さい」
「じゃあ、家まで付き合うよ」
「え?」
まあ、ちょっとやり過ぎかなとも思ったんですけどね。
「バンドやるとなると、テクニックだけじゃなくてお互いの息を合わせないといけないじゃん?俺はここに来たばっかで、みんなのことあまり知らないし、少しでも一緒にいて仲良くならないと」
なんて言い訳してみます。
そしたら、エンが複雑な表情を見せましてね。
「僕も、みんなと仲が良いわけではないですよ・・・」
・・・何か地雷踏んだっぽい?
困りましたね。
てか、エンは恋愛がどうこうという以前に、人との関わりを避けてるみたいです。
う~ん、あまり深入りしようとすると、逆効果かもしれませんね・・・。
てことで、少しだけやり方を変えますよ。
「人って簡単に変われるものだよね」
「え?」
「現に俺はあることをきっかけに大分変わったと思ってる」
仕事も何もせず、ダラダラと過ごしていた自分が、今では一応社会人になってますからね。
「人は簡単に変われる。でも、そのためには変わろうとする意志って言うのかな?変えたいって気持ちが必要だと思う」
俺、良いこと言ってません?(自分で言うな
「エンが今のままで良いと思ってるなら、そのままで良いと思う。でも、それじゃダメだって思ってるなら・・・変えたいって思ってるなら、俺は力になるから」
まあ、この辺で止めるのが1番かなと思ったんです。
これ以上言うと、逆にエンは引いちゃうでしょうし。
とそこで、エンが何だか驚いた表情をしてましてね。
「どうしたの?」
「いえ、前に同じことを言われたので・・・」
あ、そうなんだ~?って感じに軽く聞いてたんですけど。
「僕、今のままだとダメだと思いますか?」
・・・え?
軽く答えに困る質問をしてきましたね。
まあ、個人的にはダメなんじゃないかなと思うんですけど。
「それは人に言われて決めるんじゃなく、自分で決めないと」
人に言われて無理やり変えたって、長続きしないですしね。
そしたら、エンは軽く笑いました。
「ちょっと考えてみます」
・・・何だか好感触?
まあ、だからといって変に押さずに、この辺で止めておきますけどね。
引き際を見誤って失敗するガミさんとは違うのですよ。
なんて思ったんですけど。
「人と付き合うって、どんな感じですか?」
「えっと、ミサ相手の話だと参考にならないかも・・・」
「え?」
「知ってると思うけど、ミサ変わってるしね。まあ、恋愛って良いことだけでなく、大変なこともあるけど、それでもやっぱり良いものだよ」
何か、俺の恋愛話を振られまして、それに答える形になりました。
てか、こんな質問をするってことは、エン、普通に恋愛とか、興味持ってるんですかね?
そんなこんなでベースを取りにエンの家に軽く寄りまして、それからスタジオに向かいました。
「ギター、どれぐらいやってるんですか?」
「まだ2年ちょっとかな・・・。エンはベース、どれぐらいやってるの?」
「僕だけでなく、みんな、1年ぐらいですよ」
・・・ホント、初心者の集まりじゃん。
16日のライブまでに、何とか出来るんですかね?
そんな不安もやっぱりありますが、とりあえず気にしないでおきましょう。
てか、エン、普通に色々と話してくれるし、人との関わりを避けようなんて雰囲気、全然ないです。
さっきの今で、こんなに変わるわけないし、元々こんな感じだったんですかね?
「だから、俺はもうおまえらのとこには戻んねえよ!」
とそこで、そんな聞き覚えのある声が聞こえてきましてね。
見たら、アツが何だかガラの悪い人達と一緒にいました。
「そんなこと言わねえで、またみんなで楽しもうぜ」
「俺にはもう関わんなよ」
「俺達は諦めねえからな」
そんなことを言って、ガラの悪い人達はどっかに行っちゃいました。
てか、残されたアツは何か複雑な表情してます。
「ヨッシーさん、行きましょう」
「アツ!」
エンの言葉を無視して、俺はアツを呼びましてね。
アツはうちらに気付いて、何か困ってる様子でした。
「何かトラブル?」
「別に何でもねえよ」
アツはそれだけ言うと、そのまま先に行こうとしたんですけどね。
「・・・ホノには言うなよ」
立ち止まると、それだけ言ったんです。
「え?」
「これ以上、ホノに負担かけたくねえんだ。黙っててくれ」
「・・・了解」
何があったのかわかりませんが、アツが怖い雰囲気だったんで、従いましょうかね(ヘタレですしね
まあ、エンは何やら事情を知ってる様子ですし、そのうち聞いてみましょう。
そんなこんなでスタジオに到着しましてね。
「みんな遅いわよ!」
ホノが怒ってました。
「いや、うちら全員、同じ時間に来たわけだし、ホノが早過ぎるんじゃ・・・?」
「うるさいわね」
うわ、ホノが何か不機嫌だし・・・。
まあ、気を取り直して、今日もまずは軽く音合わせってことで、昨日と同じように『LALA』を演奏するとこから始めたんですけどね。
今日はそれよりもやるべきことがあります。
それは、ライブで演奏する曲を作るってことです。
「これが、昨日言ってた出来かけの曲よ」
てことで、ホノから1枚の紙を受け取りましてね。
『YEAH』という曲とのことですが、紙には数フレーズの歌詞とコードが書かれているだけでした。
「メロディー決まってるとこある?」
「サビはこんな感じよ」
それで、ホノに軽く歌ってもらいましてね。
アップテンポでロックっぽい曲みたいです。
あとはBメロだかで、
どうにも出来ない事は
“YEAH”って言って笑い飛ばせば良い
という詞があるぐらいです。
うん、一言で言えば、全然出来てないって状態です。
とはいえ、サビなんかからどんなことを伝えたい曲なのかってのはわかります。
まあ、『YEAH』ってタイトルからもわかりますが、『LALA』と同じポジティブな感じと言いますかね。
作詞作曲をする上で、十分過ぎるヒントが既にある感じです。
そんなわけで、まずは方向性を決めますよ。
「Aメロは問いかけにしてみようか?」
「え?」
「悩みはあるか?とか、するべき事はあるか?とか、答えに困りそうな質問を最初にしてみて・・・」
とりあえず、ペンを借りて、軽く書いてみましてね。
「Aメロで、問いかけ。Bメロでどうにも出来ない悩みを挙げて、そういった事は笑い飛ばせば良いって繋げるでしょ。それで、サビって流れでどう?」
俺がサラッと案を書きながら、そんなことを言ったところ、みんな固まりましてね。
「・・・ダメだった?」
「いや、良いわよ!」
「俺も良いと思う」
「ヨッシーさん、すごいですね」
意外に好評ですね。
「何で、そんなすんなりと浮かぶのよ?」
「一応、音楽理論とか作詞作曲のやり方とか、本読みながら勉強したしね」
まだまだ勉強不足ではありますが、自分に出来ること、しっかり増やしてたんですよ。
こんなとこで、それが役立つとは思わなかったですけどね。
「方向性は決まったから、みんなで考えようか?」
そんなわけで、いきなりですが作詞開始です。
「多分、Bメロが決めやすいよね?何か、どうにも出来ない悩みなんかを挙げていってよ。1番と2番で2つずつ挙げるから・・・計4つかな」
「それなら、YEAHの順にヨッシーから挙げようぜ」
「お、アツの意見、良いね。それじゃあ、まずは俺から・・・」
そこで、軽く考えてみましてね。
どうにも出来ない悩みと言うと・・・。
「親の仲が悪い」
・・・てか、ちゃんとこの辺の近況も説明しましょう。
自分の両親、一緒に暮らすようになって、夫婦としても上手くいくようになるかなと思ったんですけどね。
結局、夫婦としては上手くいかないって結果が出ちゃったんです。
まあ、今はまた別居中なんですよ。
「色々やった結果だから、もうしょうがないかなって諦めてもいるけどね。これが、どうにか出来るならしたいと思いつつ、どうにも出来ないことかな」
てか、ここまで話したとこで、知り合ったばかりの人にする話じゃないな~なんて思ったんですけどね。
「そんなの笑い飛ばしなさいよ」
「え?」
あっさりと流された!?
「いや、結構悩んでて・・・ミサと結婚の話とかする気になれないのも、結局のところ、両親の結婚が上手くいってないからで・・・」
「それも笑い飛ばしなさいよ」
「は?」
・・・まあ、変に同情されるよりは、これだけバッサリと流される方が逆に良いかもしれませんね。
「その調子で、次はエンの悩みを挙げなさいよ」
「え、僕も?」
「順番に挙げていくんだから、当たり前でしょ」
てことで、次はエンの悩みです。
とりあえず、エンは何にしようか考えてたんですけどね。
「・・・僕は、人を好きになれないことですかね」
その言葉に、みんな不思議そうな顔を見せました。
「僕、生まれた時から両親がいなくて、だから人を好きになるということが、どんなことなのかわからなくて・・・」
この辺の事情はガミさんから聞いてたんですけどね。
「別にそんなことなくても良いと思ってたんですけど、ヨッシーさんから恋愛の話を聞いて・・・自分を変えたいと思ったんです。だから、人を好きになれないってことが悩みになりました」
てか、ホント、さっきの今で、エンが変わろうとしてるんですけど!?
「よし、それも笑い飛ばして、次はアツよ」
って、これまたあっさりと流されてるし!
エンが変わろうと頑張ってるとこなんだから、もっとちゃんと聞こうよ~!
まあ、そのまま先に進んでしまいまして、次はアツの悩みですね。
「流行がわかんねえってことかな」
・・・え、そんなこと?
もっと重い悩みとかあるんじゃないの~?なんて思ったんですけどね。
「それはどうにも出来ないわね・・・」
「うん、申し訳ないけど、僕もそう思います」
え、俺やエンの悩みは軽く流したのに、これは流さないの!?
どんな基準なんだよ!?
なんて、思ったんですけどね。
「ミサンガ、私つけてるけど、今も流行ってると思ってたのよね?」
「え?」
それはちょっと・・・と思いつつ、何となくフォローしてみます。
「いや、昔流行ってたのを知らなければ、今になって流行ってるって思う可能性も・・・」
「昔、流行ってたのは知ってる。そのまま今もずっと流行ってると思ってたんだよ」
・・・いや、流行がわからないとか、それ以前の問題じゃん!
随分とぶっ飛んでますね。
その他、ローラースケートとか、ポケベルとか、懐かしい単語を次々に言っては、それらがつい最近まで流行ってると思ってたなんて発言もしましてね。
確かに、笑い飛ばせないほど、重いな~と思っちゃいましたよ。
「はいはい、それも無理やり笑い飛ばして、次に行くわよ」
でも、ホノは無理やり次に進めてましたけど。
てか、最後はホノですね。
「私は・・・」
そこで、ホノは軽く笑いましてね。
「長生き出来る気がしない」
そう言った時、エンとアツの様子が明らかに変わりました。
「2人とも、そんな反応しないでよ」
ホノはそう言いながら、また笑ったんですけどね。
エンとアツは、特に何も答えませんでした。
「私にとっては笑い飛ばしたいことなのよ」
「・・・それじゃ、良いか」
「・・・そうですね」
てか、この方々、みんなそれぞれ何かあるみたいですね。
とはいえ、変に詮索してもしょうがないし、今は作詞作曲を進めます。
そんで、ササッと書いてみましてね。
適当に言葉を繋げただけなんで、数分である程度出来ました。
「こんなのはどう?」
そんで、3人に見せましてね。
「すごいわね・・・」
「俺達の伝えたい事が、ちゃんと出てるな」
「僕は良いと思います!」
良い感じみたいですね。
てか、これもうちらの息が合っているからこそ、すんなり出来ることのような気がします。
「じゃあ、サビ以外のメロディーはコードつけながら俺の方で作ってみて良い?」
「うん、任せるわよ」
「時間もないし明日までに何とか作るよ」
「そんなにすぐ出来るんですか?」
「もうイメージは固まってるし、こういうのはむしろすぐ作らないと」
まあ、頭の中にあるイメージを形にするだけなんで、何とかなるでしょう。
ただ、そこであることを思い出しましてね。
「あと1曲はどうしようか?」
現状、どんな曲にするかってことすら決まってないんで、正直きついです。
「何か演奏したい曲はないの?」
「そうは言われても・・・」
まあ、最悪はメジャー曲のコピーでも良いかなと思ったんですけどね。
演奏したい曲というと・・・。
「『道』を演奏したいかも」
「え?」
「マサの話はしたじゃん?そのマサがくれた曲で・・・とりあえず歌った方が早い」
それで、俺は軽く深呼吸しましてね。
「あ、待って!ビデオ回すわね!」
・・・またかよ!?
てか、ここで練習する時、ホノは毎回ビデオカメラでうちらのことを撮るんですよね。
まあ、気を取り直して、いきますよ。
てことで、マサからもらった曲である『道』を歌いました。
人前でこの曲を歌うのは、ガミさんと別れた時に歌った以来ですかね。
でも、練習はしてたんで、前よりも良い感じに出来ましたよ。
「どうかな?俺、この曲をやってみたいんだけど・・・」
マサのことを多くの人に伝えたいって考えた時、それならマサからもらったこの曲を歌うのが1番だと思ったんですよ。
ただ、みんなはそれを受け入れてくれるかなと心配だったんですけど・・・。
「良いわね」
「俺は賛成」
「僕もこの曲、良いと思います」
みんな、受け入れてくれましたね。
「じゃあ、これをバンド用にアレンジしないとね」
これで、ライブで歌う3曲が決まりました。
あとはしっかり作って、練習して、本番で披露するだけです。
うん、とても簡単に言ってみましたが、かなり厳しいですね。
でも、ゴールが決まったようなもんだし、何とかやってみますよ。
そんな風にやる気になってみた1日でした。