マサが隠してたこと
2009/07/28(火)
どうも、マサの親友のヨッシーですよ。
うん、何となく、そう言ってみたかったんです。
今日もマサが遊べないというか、そもそも連絡も何もないしって感じだったんで、ガミさん宅に入り浸ってました。
まあ、最初はトランプなんかで遊んでたんですけどね(君達、トランプ好きだよね
「ヨッシー?」
「ん?」
「ギターは練習しないの?」
「ああ・・・」
正直、ギター練習はサボリ気味になり始めてます。
弾き語りのコツが未だにわからないってのと、マサがいないしってので、やる気がなくなっちゃったからなんですけどね。
「マサが来た時、弾けるようになってれば、マサ驚くよ!」
「いや、そんなサプライズ、用意する気ないし」
そのまま、マサの話になりましてね。
「ヨッシーさん、マサさんと知り合ったきっかけは何なんですか?」
「えっと・・・公園で偶然会ったんだよね」
フリスビーをぶつけたとか、その辺の話は省略しました。
何か、説明が面倒になりそうだったんでね。
「てか、ガミさんは、マサとどんなきっかけで知り合ったの?」
「僕から話しかけて、仲良くなったんだよ」
「それは、この前聞いたし。てか、どこで会ったの?」
「病院だよ」
「・・・は?」
うん、てか、病院って遊びに行くものじゃないですからね。
もしも、遊びに行ってるって話がホントだとしたら、ここらで止めましょう。
「ガミさん、病院には何しに行ってるの?」
「遊びに行ってるよ!」
「ホントだったんかい!?」
違う理由なのかな~とも思ったんですけどね。
さすが、ガミさん、ある意味期待を裏切らない男だぜ。
「病院って、元気のない人が多いじゃん?」
「ああ、まあ、病気とか怪我の人がいるからね」
「僕は、そんな人達が元気になってくれるよう、遊びに行ってるんだよ!」
「へ~」
よし、この話はここで止めよう(退避ー!
てか、困ってる人を元気付けるためだろうとかって、冗談交じりで予想してましたけど、そのとおりでビックリです。
俺、少しはガミさんのこと、理解出来るようになったってことかな?
うん、激しく嬉しくないですね。
・・・てか、ちょっと待って?
「マサとは病院で会ったの?」
「え、そうだよ?」
「マサ、何で病院にいたわけ?」
「さあ?僕と一緒で、誰かを元気付けるためかも!」
「いや、てか、病院にそんな目的を持って行ってる人、レアだと思うから」
病気や怪我を治しに行くか、お見舞いで行くってのが普通でしょ。
てか、ガミさんのせいで頭が上手く働いてませんが、ちょっと考えます。
そもそも、色々と違和感とか疑問点はあったんです。
まず、マサがユキさんと知り合い、そして深い関係になった理由。
マサが歌を歌わないことや、前はしていた録音をやめていたこと。
さらに言えば、ガラガラな感じのマサの声。
そして、マサと2人でユキさんのお墓参りに行った時、ユキさんの両親が言った言葉。
・・・てか、俺、普通にわかってたんじゃん。
「病院行ってくる」
「え?」
とりあえず、すぐに出発しましてね。
「ヨッシー、どうしたの?」
そしたら、ガミさんとミサがついてきちゃいましたよ。
まあ、この際、気にしません。
で、病院に着きましてね。
受付で、マサの名前を告げ、見舞いに来たことを伝えました。
そして・・・普通に病室を教えられました。
「ヨッシー、どういうこと?」
「ヨッシーさん、マサさんって?」
この辺りで、ガミさんとミサも、気付いたようでした。
でも、俺は答えることなく、病室に向かいましてね。
言われた病室の前で、少しだけ迷った後、ドアを開けました。
「やっぱり、来る気がしてた」
うちらの姿を見て、マサは笑顔で迎えてくれました。
「最近、勘がいいんだよね」
「・・・マサ、別に話したくないって言うなら、聞かないよ」
俺、普通に怒ってましたからね。
少し、強い言い方になってたと思います。
「でも・・・話してくれなくても、わかるから」
俺の言葉に、マサはため息をつきましてね。
「だって、うちら・・・親友じゃん?」
「・・・そうだね」
そこで、マサが笑って、俺も笑いました。
「マサ、どこか悪いの!?」
「マサさん、入院してるんですか!?」
「詮索すんじゃねえよ!」
思わず、怒鳴ってしまいまして、ガミさんとミサは申し訳なさそうな表情になっちゃいました。
うん、てか、2人がKYだってのは知ってるわけだし、あまり強く言ったら、かわいそうですね。
「ごめん、言い過ぎた」
ここは謝っておきます。
「・・・ヨッシー?」
「ん?」
「いや、ガミさんとミサも・・・話聞いてもらっていい?」
「・・・ああ、聞くよ」
「僕も聞く!」
「私も聞きます」
マサはまた軽く笑った後、話を始めました。
「俺、前は弾き語りやってたんだよ。歌うのが、ホントに好きだった」
どこから話そうか、マサは迷っているようでした。
それだけ、話すことがたくさんあるってことなんだと思います。
「最初の異変は、声がかすれ出したことかな。でも、歌うのが好きで、ずっとほっといてた」
その先の言葉、俺は正直、聞きたくなかったかもしれません。
「俺、喉頭ガンだったんだよ」
「・・・喉頭ガン?」
「大分、進行しちゃってて、大きく摘出する必要があったみたい。おかげで、声が出なくなった」
「え、でも・・・?」
「今、話してるのは、食道発声っていう、特殊な発声を使ってるんだよ」
初めて聞くことや、よく知らないことばかりで、ほとんど理解出来ていなかったと思います。
でも、マサの気持ちや、今置かれている状況は理解出来たつもりです。
「それで、歌えないって言ったの?」
「うん、話すぐらいは出来るけど、歌うのは大変だから」
「ごめん、俺、そんなこと知らなくて・・・」
「別にいいよ」
この時、俺は、その質問をしようか、大分悩みました。
でも、やっぱり知りたかったんです。
「でも、治ったんだよね?」
「え?」
「その、声を失ったりしたとは思うけど・・・ガンは治ったんでしょ?」
「うん、喉頭ガンはね」
そのマサの言い方で、はっきりとわかりました。
てか、もしも今、元気なんだとしたら、入院なんてしませんもんね。
「発見が遅かったからね・・・」
「・・・治るんだよね?」
ガミさんの質問、俺も聞きたかったことです。
でも、ここまで聞いた結果、聞けなかった質問でもありました。
「・・・治るって信じてるよ。難しいとは言われてるけどね」
俺は、こんな答えが返ってくる気がしてましたからね。
それから、みんな何も言えなくなってしまいました。
ミサなんかは泣き出しちゃいましたしね。
てか、マサは今まで、入院とかすることなく、それなりに普通の生活をしている様子でした。
それが今、突然入院することになったということに、俺は嫌な想像しか持てませんでした。
そして、そんな想像を必死に考えないようにしようと思いましてね。
「マサ、うちらに出来ることないかな?」
この質問が浮かびました。
てか、出来ることなんてないと思うんですけどね。
うちら、医者でも何でもないですし。
だけど、何かないかって思ったんです。
マサは少しだけ笑いましてね。
「だったら、歌を歌ってよ」
「え?」
意外すぎる言葉に、俺は変な声を出しちゃいました。
「ヨッシーにあげた、『道』って歌を、俺の代わりに歌ってほしい」
いや、俺、弾き語りなんて全然出来ない状態なんですけど?
上手くなる気配も全くない感じですし・・・。
まあ、大分、無茶振りなことを言われたんですけどね。
俺の答えは決まってます。
「わかった。頑張る!」
「うん、頑張って!」
「歌、歌えるようになったら、披露するから、聴いてね。・・・これ、約束だから」
「・・・うん、わかった」
マサは嬉しそうに笑ってました。
それから、しばらくの間、その場にいたんですけどね。
マサが疲れた様子だったため、帰ることにしました。
病院を後にし、ガミさんとミサは複雑な表情でしてね。
「ガミさん、ギター練習に付き合ってよ。色々とアドバイスが欲しいからさ」
「うん、いいよ」
「ミサは明日・・・用事があって一旦家に帰るんだよね?」
ミサは、大学のテストを受けないといけないですからね。
「いえ、ここに残ろうかと・・・」
「マサのことは大丈夫だからさ。ミサは自分のこと、頑張りなよ」
「あ・・・はい」
てか、テストを受けないってのは、さすがにまずいですしね。
てことで、マサとの約束を守るため、絶対に弾き語り出来るようになってやる!と誓った1日でした。
だって俺、マサの親友ですからね・・・。