2 イケてる親父
親父ガチャのおっさんのことは母にも友達にも言わなかった。誰に言ったところで現物が無ければ信じてもらえないだろうと思ったし、二千円も出してそんなものを買ったことを話すと、自分が親父というものにいかに執着しているかがばれて恥かしい思いをするからだった。
おっさんを埋めた日曜日、私はたっぷり昼寝して何もせずに過ごし、翌月曜日からいつもどおり学校に通った。
授業のほとんどを寝るかノートに落書きをしてやり過ごし、休み時間は理紗をはじめとした友達としゃべって過ごした。
その週の何曜日だったか、理紗が私を人気のない空き教室に連れ出して言った。
「また援交させてくれるおっさん見つけたけど深琴もやる?」
「二人一緒? いつ?」
「うん。二人でOKだって。時間は土曜の午後」
私はちょっと考えてから、
「いいよ」
と答えた。
この学年からクラスが一緒になって仲良くなった理紗は毎日携帯で出会い系サイトを漁っていて、援助交際をさせてくれる男を見繕っては私に紹介してくれていた。
少し説明すると、当時は「スタービーチ」という有名な無料出会い系サイトがあり、十代~二十代前半の若い男女の出会いの場になっていた。そしてその姉妹サイトで「ムーンナイト」という出会い系サイトがあって、こちらは二十代後半~四十代くらいのアダルトな年齢層の男女に利用されていた。そこへ援助交際目的で入り込む十代の少女が少なからずいて、理沙はその一人だった。この日私に紹介してくれた男も、「ムーンナイト」で引っかけたらしかった。