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1-4

 それから一年余りが経っていた。たった一年前のことなのに、あまりに遠のいてしまった美しい思い出を思い浮かべながら、中学二年生の私はその文房具店に入り、奥に向かった。


 あの親父ガチャのことは、あれからずっと気になっていた。そうして今私は自由に使える軍資金を持っている。少し高揚しながら、私は店の三つの棚の脇を歩いて通り過ぎた。一番奥の棚と壁の間の通路に、やはりあの白いガチャポンマシンがあった。


「親父ガチャ 全6種……」


 私は改めてPRチラシを一読すると、ショルダーバッグから財布を出し、しゃがんで二千円をマシンのスリットに入れた。意外にもスリットは自販機のそれのようにウィーンと機械音を鳴らして千円札を二枚、吸い取った。


 ガチャハンドルをぐいっ、ぐいっと二回回す。マシンの上部に詰め込まれているカプセル群ががちゃがちゃっと動き、


ことっ


と音がして取り出し口にカプセルがひとつ落ちてきた。私はそれを手に取った。


 カプセルは真白で大きかった。前述したとおりソフトボールくらいはあるだろう。軽い。私は軽すぎるのが気になって振ってみた。かさかさ音がした。空ではないらしい。開けてみようと思い、両手でカプセルを掴んだところで背後に視線を感じた。振り返ると店主がこちらをじっと見ていた。なんだか気まずくなって開けるのをやめそのまま外に出た。


 バッグにカプセルを突っ込み、店を出てファミリーマートで夕食用のオムライスを買うと、ワーッと自転車をこいで家へ帰った。

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