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孤独の幻影  作者: 咲夜
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5、謎の男

最後のお客さんを見送り片付けを済ませた後、シエルさんがまかないで作ってくれたオムライスを食べながら、今日の出来事やそれに対する考えを頭の中に何度も巡らせていた。


何か思い出せそうな気がする。

自分の過去について。

きっと、この出会いはただの偶然ではない。

なぜかそんな気がする。


「……あの」

「あ!」

「あら?気がついたのね」


その時、奥の部屋からあの女性が恐る恐る顔を出した。

朝、見かけた時より随分顔色が良くなっている。

シエルさんの言う通り、大きな怪我はしてないみたいでとりあえず本当によかった。


「あれ?もしかして店に来てくれた方ですか?」

「あ、あの……はい」


とても怯えた様子だった女性は顔見知りである俺の姿を見つけて少しだけ安心したようだった。


「あら、2人は知り合いだったの?」


そんな俺達を見て首をかしげるシエルさん。

そういえば帰り道にこの人が倒れていた事は話したけどそれ以外の詳しい事はまだしてなかったっけ。

あの時はそこまで頭が回ってなかったから。

俺は慌てて昨日の事を説明した。


「えっと……すぐ近くの花屋さんで働いてる方で、昨日少しだけ帰りに立ち寄ったので」

「なるほど、そうゆう事だったの。綺麗な花をありがと。あなた、名前はなんて言うの?」

「……白井梨沙といいます」


白井梨沙……聞き覚えはないな。

やっぱり、以前どこかで会った事がある気がするのは俺の気の所為なのだろうか?


「リサ、可愛い名前ね♪私はシエル。この店の経営者で彼は手伝ってくれているルイってゆうの」

「あの……よろしくね」


シエルさんに紹介されて引きつった顔で頭をさげる。

どうも知らない人と話すのは苦手だ。

でも、きっとリサさんは今もっと辛くて不安な気持ちだろうからそれを少しでもとってあげたい。

無理やりに口角をあげて笑顔を作る。


「お腹すいてない?よかったら一緒に食べましょ」

「え……いいんですか?」

「もちろんよ。多めに作っておいたから」


そう言って、カウンターの奥から俺が食べてるのと同じオムライスを1つ持ってきて机に並べるシエルさん。

さすが、準備がいいな……

この人、初めて会った時にも思ったけど優しすぎるとゆうか凄く世話好きな人だよな。


「……いただきます」

「どうぞ♪」


おずおずと席に座ったリサさんは遠慮がちにスプーンを手に取りオムライスを1口、ゆっくり口に運ぶ。

その味を感じたのと同時にさっきまで固かった表情が次第に落ち着いた優しい顔へと変わっていった。


いつもの見る優しい顔だ。

うん、よかった。


俺とシエルさんも安心して食事を再開した。


「これ、とっても美味しいです」

「そう?口にあってよかったわ♪」

「シエルさんは料理がとっても上手だから、ここに来る人はみんな笑顔で帰っていくんだよ」

「やだ、褒めても何もでないわよ?ふふ」


食卓にはいつしか3人の笑い声が響いている。

家族で食事ってこんな感じなのかな?

俺の家族は今どうしているのだろうか。

突然居なくなって心配してるかな?


顔も性格も一切思い出せないけど、そう思うとなんだかとっても申し訳ないと感じる。

早く思い出したいな。


食事を済ませた後、改めてリサさんから何があったのか話を聞く事になった。

事によってはやはり警察に連絡が必要になるかもしれないし、こんな傷だらけで何も無いわけがないから。


「店の掃除をしていたら、いきなり知らない男の人に声をかけられて……急に襲ってきたんです」

「男の人?どんな奴だったの?」


リサさんはその時の事を思い出したのか体を小さく震わせながら話を続けた。

誰かは知らないが酷い奴もいるもんだな……。


「黒いマント?みたいなのをまとっていて顔は見えませんでしたけど声は男の人みたいでした。私を見てやっと見つけたとか言ってました」

「……何者かしらその男。見つけたって事はあなたを知っていて探してたって事よね?心当たりは?」

「いえ……多分知らない人だと思います」


やっと見つけた……か。

店の客ならそんな事いわないよな?

まるで随分前からリサさんを探していたような……?

見ず知らずの人間にそんな事を言われて彼女がどれだけ恐怖を感じたか。

ストーカーとかそうゆうたぐいなのか?

なにんせよ危険な奴に間違いはないだろう。


眉間に皺を寄せて考え込むシエルさん。

3人の間に緊張感のある沈黙が流れる。


「やっぱり、警察に連絡したほうが……」

「そうね、でも信じてもらえるかしら?何か特徴とかがわかればいいけど、今の状況じゃ証拠も手がかりも何もないし動くに動けないって言われるでしょうね」

「そんな……」


確かに一理あるよな。

警察は証拠がなきゃすぐには動いてくれない。

しかも、唯一の手がかりが黒いマントをまとった男だなんてそれだけじゃ探しようがないし。


にしてもその男……一体何者なんだ?

彼女の為にも何とかしてあげたいけど……

あまりに謎が多すぎる。


でもこれは、これから起きる様々な出来事のほんの始まりにすぎなかったんだ。

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