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悪役令息アレックスは残念な子なので攻略対象者ノワールの執着に気付かない  作者: 降魔 鬼灯


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55/55

55.深淵

ぐいっと手を引かれてとすんっと包みこまれたのは、ノワールの胸の中。

 ノワールの『鎖』がシャラシャラと鳴る。


 そうだ。ゲームのノワールに『鎖』は無かった。安心していいんだ。現実のノワールは俺のもの。


 ギラリと殺気だった眼差しでギルバートを睨みつけるノワールが怖すぎる。

 うわー。ゲームだけじゃなく、このふたり今も犬猿の仲じゃん。


 バチバチと火花を鳴らす2人。キラキラした目でこちらを見つめるオリビエちゃんとヴィヴィアンちゃん。電飾イカがうさぎと共にジリジリと後ずさる。


 ああ、カオスだ。


 痺れを切らしたガルシアお兄様がトロフィーを手に取ろうとした。


バタン

 さっき外に連れ出された筈の娘が扉を開けて入って来た。胸に光る赤い宝玉。舞台上のガルシアお兄様の元へと駆け上がる。

   

 駄目だ。


 咄嗟に身体が動いた。ガルシアお兄様を突き飛ばす。


 娘のペンダントから発せられた赤い光がトロフィーを貫いた。


「えっ、そんな……。」


 娘が呆然としたように呟きその場にへたり込んだ。


「このペンダントをつけていれば、殿下の寵愛が得られると。」


 寵愛欲しさに、唆された娘。だが、その罪は重い。死刑は免れぬだろう。

 そもそも王族の心を操ろうだなんて、あってはならぬ一大事だ。


 それだけでも罪は重いのに、逮捕を振り切り舞い戻った罪、王太子暗殺未遂。どこまで飛び火するのか。


 後味の悪い結末に下を向いたその時、床がたわんだ。

 ゴゴゴゴゴ


 床に暗闇が出現し、トロフィーを台ごと呑み込む。

 次第に広がる闇はガルシアお兄様をも呑み込もうとその触手を伸ばす。


 無我夢中でガルシアお兄様と闇の間にたった。


 って、あれ?

 

 駄目だ。俺が闇に呑み込まれてる。いや、違うさっきまで彷徨うように触手を広げていた筈の闇の目標が俺一人に集中していないか?


 うわーん、詰んだ。足がすっぽり包まれている。


「アレックス」

 ノワールが俺の腕を掴む。


 魔力で闇を塞ごうとするが闇はびくともしない。それどころか魔力を取り込み勢いづいているようにさえ見えた。


どんどん引きずり込まれる俺達を突如ふわりとやわらかな光が照らした。



 母がいた。


「深淵に呑まれて無事なのは巫女姫と『鎖』持ちのみ。アレックスの神力は目覚めたばかりで、まだ不安定。ノワールの『鎖』も不完全ゆえ、この深淵の中では持ちこたえられぬ。ノワールが消滅したら嫌であろう。最期に母らしい事をさせておくれ。」


 真白き光に包まれた美しき巫女姫。


「深淵よ。まがいものの巫女姫では満足出来まい。二人を離せ。わらわが参ろう。」



 母におもねるように深淵が俺達を吐き出し、母の元へとズルズルと移動する。


 「何者かが、禍々しき禁呪を使った。その代償として深淵が出現した。巫女姫は贄となり深淵を浄化するのが宿命。わらわは自分の仕事を果たすまで、泣くな、アレックス。」


 神々しいまでに美しき巫女姫がじわじわと深淵に呑み込まれてゆく。


 その時、父が母の腕を掴んだ。

 

「レオナルド、危ない。離せ。」


 深淵に触れれば消滅するというのに父は母を離さない。


「離すものか。」


 必死に母を引き留めようとする父


「レオナルド離して、『鎖』をもたない貴方は此処に入れば消滅してしまう。」


 父を引き剥がそうとする母


「消滅か、永遠の別れ。究極の選択だな。」

 

 狂気をはらんだ父


「レオナルド、どうしても離さぬのだな。どうなっても知らぬからな。」


 母の瞳が揺らぐ

 

「例え消滅しようとも、魂となっても付き纏うさ」

 

 そんな父に手を伸ばした母は父の耳朶に唇を寄せた。


 『我が愛を憑坐にこの者を一生側に』


 父の片耳に透明感のある虹色に輝く『鎖』が出現した。

 

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