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4 ノワール怒ってない?

「アレックス、どうしたんですか?」

 顔を上げると、ノワールが心配そうな顔で見つめてくる。


 いつの間に?

それに、怒ってない?


 ほっとして、ノワールにしがみつく。今更ながらにノワールの胸板が厚いことに気がつく。

 すっかり頬のラインの甘さが無くなり精悍な大人の男性になったノワールになんだか恥ずかしくなって顔に血が昇る。

 真っ赤になった顔を見られたくなくてノワールの胸に顔をうずめた。

「ノワール、昨日は寝ているところにごめんね。怒ってない?」

 ノワールの胸の中でモゴモゴ呟く俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でながら、ノワールがちいさく笑った。


「どうして怒るんですか?むしろ逃げ出して来てくれて良かったです。万が一毒牙にかかっていたらと思うと…。それにアレックスの大切な秘密も私だけに打ち明けてくれましたし。」

「本当?」

 甘い。甘いよ、ノワール。そんなだから俺みたいな悪役令息が付け上がるんだぞ。もっとガツンと言わないと。

「本当です。これからも、私を頼って。」

 ノワールの声が優しくて彼の顔を見上げた。目が合うとにっこりと微笑むノワールの優しい目元が艶っぽい。

 朝の光を浴びて輝くノワールが、尊い。後光か?もはや拝みたい。

 いや、駄目だ。これ以上甘えずにきっちり謝らねば。


 俺は悪役令息から抜け出し、平和な日々を謳歌するんだ。


「ノワール。ノワールが学園に行ってから淋しくて、行事の度に呼び出してごめんね。俺、ノワールと一緒に学園に通いたかったのに…。俺だけ通えなくて意地悪した。謝って許されることではないけど、ごめん。」


 あー、ヤバい。涙目になる。ノワールひいてないかな?上目遣いでそっとノワールの事を見る。

 ノワールが目を見開く。あれ?なんか耳が少し赤くなっている。

「アレックス、私はあなたに呼び出されるのが、本当は嬉しかったんですよ。でも、流石にあなたのいない学園生活は淋しすぎました。だから、先程あなたのお母様、リヴィエラ公爵夫人に掛け合って学園に通う許可をいただいてきました。」

 めっちゃ嬉しい。

 それに、こんな早朝から母に談判するなんて、よく許可が降りたな。

 ん?母は朝が弱いから丸め込まれた?

ま、いいや。ノワールの事だ、しっかり言質取ってそうだし。


「ノワール、ありがとう。」

 嬉しさにかまけてぎゅーうっと抱きついた。ふふふ、堪能してやるもんね。ノワール良い香りがする。


「但し、あなたは男性として入学します。部屋は二人部屋なので卒業まで私と一緒です。」 

「いいの?」

 ノワールと一緒なら心強いし、部屋が一緒なんて夜もお話とかできるし、勉強だって一緒にできる。ノワールを一人占め、パラダイスじゃないか。

「卒業までにバレたり問題が起これば私が責任をとることになります。くれぐれもよろしくお願いしますね。」


 念を押すように言うノワールが心配になる。母は、どうしたって認めてくれなかったのに。

 ノワールはどんな交渉をしたのだろうか?それに責任って…。

「アレックスそんな顔をして、大丈夫ですよ。あなたには強力な暗示がかかっています。あなた自身にも、そしてずっとあなたの側にいたこの国一の魔力量を持つ私にすら疑問を持たせないくらいの。他の人に見抜けるとは思えません。」

 確かに、前世を思い出して自分が女だと気付くまでなんの疑問ももたなかった。

 それに、今も一人称は俺のままで、無意識のうちに男として行動している。

「大丈夫かな?」

「暗示であって、魔力は使用していないので、学園の魔力解除のゲートをくぐっても何も問題は起こらないでしょう。さすがは東方の巫女姫ですね。」

 あの年齢不詳の我が儘母にそんな能力があったなんて。でも、母も父もあのゲームにはでてこなかった。

 両親はもともと仮面夫婦だし、父なんて腰にくる低音ボイスと色気駄々漏れの悪い大人キャラとして人気が出そうなのにな。

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