seven (side 鹿島)
重そうな足取りで、鹿島が戸惑っているのに気づいたのか、小梅が振り返って手招きしてくる。
「どうぞどうぞ、ちょっと見てみてください」
そこには青いバケツに入れられた、色とりどりの花。ビニールのラッピングフィルムに二、三本で包んであり、値札には『特売』498円とある。
(……ああ、やっぱりフラワーショップには劣る)
ショボイな、率直にそう思った。断って、すぐに退散した方が良い。けれど、背中を丸めて花を選ぶ二人の姿に、なかなか声はかけづらい。
「これなんて、どうでしょう」
小梅が数本、バケツから引き抜く。
花に疎い鹿島でも知っている、有名な花だ。
「カラーですけど、」
そして、さらに数本。
「オレンジのガーベラと、」
重ねると、白とオレンジが混ざり合った。
(悪くはないが……カラーの茎が長過ぎるし、色合いも子どもっぽい)
茎の短いガーベラと茎の長いカラーが、ノッポとチビのように不釣り合いだ。
(やはり、期待できないな)
鹿島が断りの文句を頭の中で考えているうちに、小梅がさらに数束、ガーベラを引き出した。けれど、その手は途中で止まった。
「そういえば、彼女さんはどんな印象の方なんですか?」
「え、」
気がついて辺りを見渡すと、さっきまでそこにいた店長はどこかへ行ってしまって姿は見えない。
「可愛らしい方ですか? それとも美人さんですか?」
小梅が腰を折ったまま、見上げてくる。
(花奈のイメージ……?)
鹿島は、花奈を思い浮かべた。誕生日である今夜は、きっと着飾っているはずだ。
「っと、一言で言えば……」
視線を戻すと、小梅と目が合った。
小梅の見上げてくる瞳は、吸い込まれそうなくらいに黒、だ。
「ご、ゴージャス?」
語尾を上げて、自分にも問う。咄嗟に出てきたのは、その言葉のみだ。
「わあ、素敵」
にこっと笑って、引き抜きかけていたガーベラを持っていた手を戻す。
「それならガーベラより、このラナンキュラスの方がボリューミーですね」
「そ、そうだな」
薄ピンクの大ぶりのラナンキュラスを白いカラーに重ねると、花嫁の持つブーケのようになり、鹿島はへえ、と意外に思った。
「予算がアップしちゃいますけど……」
カラーとラナンキュラスを束ねていくと、結構なボリュームの花束になった。鹿島はこれはなかなかのものだ、と感心した。
「予算はいいのだが……」
「じゃあ、緑も入れましょう」
そこへ緑の葉っぱを追加する。
鹿島は正直、緑の葉は無い方がシンプルで良いんじゃないかと思った。
小梅は持っている花の束をくるくると回しながら、色々な角度から見て、「あ、緑は無い方が良いかな」と言って、葉を下ろした。
「緑って、絶対にあった方が良いんじゃないかって思ってたから、意外……」
ぶつぶつと独り言を言いながら、ビニールのラッピングフィルムを剥がしていって、一つにまとめる。
「小梅ちゃん、これ」
いつの間にか戻ってきた店長が、ハサミを差し出す。小梅はカラーが入っていた青いバケツの中に茎を入れると、水の中で茎を揃えて斜めに切った。
その切り口に濡れたキッチンペーパーとホイルをまとわりつける。すると、花嫁が持つブーケのように、なかなか豪華な花束ができた。
「これで、どうですか?」
「うん、すごくいいのが出来たね」
鹿島が感心しながら言うと、小梅は笑顔を見せた。けれど、直ぐにそれを曇らせる。
「でもどうしよう、ラッピングが……」