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forty eight (side 小梅)


(どうしよう、電話なんて……できないよー‼︎)


名刺はエプロンのポケットに入っている。

ちら、と流し目でサービスカウンターの横を見る。そこには業務用の電話が鎮座している。


(携帯ないからって不便と思ったことはなかったけど……これはもう拷問だあ)


お客さんが来る。商品をレジに通す。お釣りを渡すと、またちらっと電話を見る。

店長に頼めば、電話くらい貸してくれるのはわかっている。けれど、何を話して良いのかまるでわからないし、お詫びをしたいと言っていたのだからそれを請求しているみたいで、何となく掛けづらい。


(でも、必ず連絡をしてくれ、って言っていたよね。はああー)


電話が来るのを待ってるのかも、と思うと大きな溜め息が出た。


「……須賀さん、来てくれないかなあ」

「小梅ちゃん、どしたの?」


古賀のおばあちゃんが、よいしょっと言いながら、レジカゴをカウンターへと乗せた。


「こ、古賀さん、こんばんは。カゴ重いんだから無理しないでね。私に言ってくださいよ」


手を素早く動かして、商品をレジカゴへと移動する。


「なんか元気ないみたいだけど」

「ええー、そんなことないですよ」

「なんか悩んでるの?」

「そんな風に見えます? 悩みなんて、なんもないですよっ。てか、今日もたくさん買ってくれてありがとうございます」


にこっと笑うと、古賀さんが足りるかしら、と言いながら一万円札を出してくる。


「ありがとうございます」


お釣りを渡し、レジカゴを荷台へと運ぶと、いつも通りレジ袋に商品を入れ始めた。

振り返ると、多摩さんの姿がないので、大きな声で呼ぶ。


「多摩さーん、ちょっと出てきますー! じゃあ、古賀さん、行こうか」


二つの袋を両手で持つと、その時、はたと気がついた。


(あ、行ってる間に須賀さんが来たらどうしよう……)


私は焦って、もたもたと財布にお釣りを入れている古賀さんを促した。


「さあさあ、行きますよ。いってきまーすっ」


スーパーの前を通り、交差点に出る。歩行者用の信号がちかちかと光り出して、私は思わず走り出しそうになった。


「小梅ちゃん、危ないわ」


その言葉で足が止まった。振り返ると、少し後ろでふうふうと古賀さんが背中で息をしていた。

はっとした。


「ご、ごめんね。急ぎ過ぎちゃったね」

「ふうふう、今日は何か用事でもあるの?」


赤になった信号を見る。目の前を何台も車が通り過ぎていく。ガガガッと大きな音を立てて猛スピードで走っていく大型トラック。


(何やってるんだ、私……古賀さんを危ない目にあわせるとこだった)


「別に用事とかはないの。ごめんね、ゆっくり行こう」


赤信号から目を離し、古賀さんを見る。その目に、おばあちゃんの顔が浮かんだ。


「小梅ちゃん、いつもありがとうね」


古賀さんが、にこっと笑う。

自然と笑みがこぼれた。

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