表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/50

forty six (side 小梅)


驚いてしまった。

私の前に鹿島さんが立っている。

しかも、こんな遅い時間に。私はメープルの閉店まで仕事をしているので、とうに夜中の12時を回っているはずなのに。


鹿島さんは先日の病院でのことを、何度も何度も謝ってくれた。


「怪我はしていないか?」


優しい声でそんな風に訊かれたら、胸がじーんと熱くなり、私はようやく、はい、と頷いた。

とにかく鹿島さんは必死に謝って、最後に私の手に名刺を置いていった。忙しいのだろうか、それとももうこんな時間だから眠たいのだろうか、そそくさと帰ってしまって、名刺を持った私はその場にぽつんと取り残されてしまった。


振り返りもせず、車を発進する後ろ姿。忙しい合間を縫って、謝りに来てくれたんだなあと思う。すぐに帰ってしまい、ちょっとだけ寂しさにまみれたけれど、私は首を振って内にめばえそうになる何かを否定してから、名刺を見た。


『鹿島コーポレーション 代表取締役社長 鹿島 要』


「わあ、本当に社長さんだあ」


本社ビルの住所を見ると、実はずいぶんとこの商店街からは距離があることを知った。


「さすがにこの近くではないかなとは思ってたけど、こんなに駅の近くだなんて……この住所、駅近の一等地ってやつだよね」


いつもは須賀さんの運転で来ているけれど、今日は鹿島さん自身が運転席へ乗ったことを考えると、わざわざの手間をかけてまで、謝罪しに来てくれたのだということはわかった。

連絡をくれ、と貰った名刺。ひっくり返すと、携帯の番号が殴り書きしてある。


「け、携番だ」


次第に心臓が早鐘のように鳴り出して、身体が小刻みに揺れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ