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twenty six (side 小梅)


新しい服が必要になった。お気に入りのスカートに、穴が開いてしまったからだ。


「ありゃりゃ、これは……」


気がついたのは、メープルから帰った夜のこと。お風呂に入ろうとして、スカートのウエストのホックに手をやった時、見慣れぬブラックホールのようなものが目に飛び込んできて、私は驚愕した。


「ああっうそっ! なにこれ⁉︎」


すそを掴んで目の前まで引っ張り上げる。そこには大きな裂け目があって、破れた穴から糸がボロボロほつれていて、それはそれは無残な姿を晒している。


「全然、気がつかなかったあ。どこでやっちゃったんだろ」


お気に入りのスカートなので二年ほどの間、ヘビロテしていた。まだまだ履けるはずだったのに、穴が大きすぎて修復は無理なようだ。裁縫は得意なので、だいたいのものは直せるが、さすがにこれはワッペンでも貼らなければ修復はできないだろうと判断した。


「ワッ……ペンは、ちょっとなあ」


幼い子供なら可愛いものもたくさんあるし許されるけれど。苦く思いながら、開いた穴に指を突っ込んだ。


「こんなの、鹿島さんに笑われちゃう、かも」


リビングに戻り、財布の中を確認する。給料日はもうすぐなので、安いスカートなら買えるかも知れない。

そう思いながらも思わぬ出費に、一気に気が抜けてしまった。疲れが二倍になった気がして、布団に潜り込む。


目を瞑った。お気に入りのスカートは残念だけど、すっぽんぽんで仕事するわけにもいかないから、仕方がないと割り切ろう。


気持ちを前向きへと軌道修正。新しいスカートのことを考えよう。すると、少しだけふわふわとしてくる。新しい服を買うのは、何ヶ月ぶりだろう?

布団から飛び起きて、メープルから貰ってきた新聞紙のチラシを、テレビの横のラックからごそっと取る。中から、服飾系のチラシを取ると、穴が開きそうなほど、食い入るように見た。


「……鹿島さんは、どんな服が好みなのかな」


私はモデルが履いているスカートが、あ、これ可愛いなと思った。けれど、モデルが履いているくらいだから、このショップの目玉商品に間違いない。視線を彷徨わせると、やっぱり。『3800円』とあり落胆する。


結局、次の日ショップに駆け込んで、私はワゴンの中から、498円のライムグリーンのパンツを選んで買った。


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