twenty three (side 鹿島)
「どういうことだよ、貧乏って。あんなにまだ若いんだぞ。親はどうしてるんだ、親は」
「知らん」
「ネグレクトかよ。小梅ちゃん、俺より働いてるぞ。一体、周りの大人は何してやがんだ」
「まあまあ、そう荒ぶるな」
ビールを止めて日本酒に乗り換えると、途端に鹿島と大同の酔いは回り始めた。
「貧乏って、どういうことだよ……」
何度も同じ言葉が口から飛び出していく。見ると大同の口からは、枝豆が飛び出している。
「んんっ」
口をすぼめて、枝豆の皮をかじっているが、ことごとく失敗している。手元の皿に転がってきた枝豆を摘むと、大同の口めがけて放った。
「てっ」
「何だよ、たいして痛くねえだろ」
ギロリと睨むと、大同が気にしないとばかりに、続けて枝豆を口に運んだ。
「ははは、痛くねえー」
大の男の酔っ払いが二人、すっかり出来上がっている。
「とにかく、俺はなあ、この世のふじょうりを感じるんだ」
鹿島が、呂律の回らない舌で言う。
「お前がどうこうできる問題じゃないだろ」
「……そりゃ、そうだけどよ」
「やめておけ。その歳の差は犯罪だぞ!」
大同の茶化した言葉に、すっと酔いがさめる思いがした。
「……別に、そんなんじゃねえよ。ただ……」
大同が頭をふらふらとさせながら、訊いた。
「んー……ただ、何だよ?」
「ただ、俺は……これからもポテトサラダを食いたいだけなんだ」
「んー、そうか」
大同は分かったのか分からなかったのか、よく分からない返事をして、そのまま机に突っ伏して眠ってしまった。鹿島はその様子を苦笑しながら見ると、最後のひとくち、日本酒を呑み干した。




