eighteen (side 小梅)
名前を知った。
「鹿島さん、って言うんだって」
店長が、鼻高々に言う。
「鹿島アントラーズの鹿島?」
秋田さんが、惣菜をパックに詰めながら、聞き返した。
「そうそう」
「なにそれサッカーですか?」
スポーツに疎い私に、J1とか、J2とかあってだなあ、と秋田さんが説明してくれる。家にテレビはあるけれど、家に帰っても見る時間が無いのと、あとテレビをつけていると、なんだか孤独になったような気がして、寂しくなるので見るのをやめた。
誰もいない部屋に、音だけが響くのも、なんだか虚しくなってくるからだ。
それならいっそ、静寂の中で過ごす方が、私にとっては落ち着く。
透明なパックをずらっと二列に並べて置いて、そこへ秋田さんが作ったキンピラを入れては計りに乗せて、グラムをチェックし、フタをする。
私はいつもおまけしてしまうので、そこは秋田さんに怒られるところだ。
「おい、それ、」
秋田さんのチェックが入る。
「ちょっと多いだろ。小梅っ! てへぺろじゃねえぞ!」
「あ、てへぺろだなんて、よく知っていますねえ」
多過ぎたキンピラを少し取り上げて、容器へと戻す。
「流行ってんだろ? 娘に聞いたんだよ。ご丁寧に、絵まで描いてくれたぜ」
「流行っているのかどうかはわかりませんが……マユちゃん、絵も上手ですもんね」
「ありゃあ、どう見てもペコちゃんだろ」
あはは、と笑って、容器からキンピラをパックへと戻す。リターン。
少しだけ、量を多くしておいたパックを覚えておき、最近はビールとともにお惣菜を買っていってくれるようになった鹿島さんに内緒で勧めるのが、マイブーム。
秋田さんの目がキラリと光ったけれど、どうやら今回は見逃してくれたらしい。
「えへへ」
舌を出すと、秋田さんが「だから、それヤメろ」と言って、笑う。店長はそんな私たちの様子を、何も言わずにいつもの様子と、ニコニコと見ていてくれている。モリタの温かさに、私は救われている。




