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1.星が落ちた日

 森の木こりヨサク・ヘイヘイホは、今日も鉄の斧をかついで山を登る。


「今年は山菜もキノコもぜんぜんだな。獣でも狩れればいいんだが、モンスターに食べられていなくなってしまったのだろうか」


 山の麓にあるオルドス村にはお腹をすかせた十六人の子供や三人の老人たちがいるのに、村に残された食料は心もとない。

 もはや、荒廃した村で山に入って木を切ったり食べ物を探せる大人はヨサク一人であった。


 薄暗い森の山道を、ひゅーと風が吹き抜ける。


「うう、少し冷えてきたなあ」


 ヨサクは、着古した粗末な毛皮の外套(コート)の留め金を止めて、しっかりと着直した。

 冬が近い。


 ヨサクは、黒髪黒目の凡庸なおっさんである。

 取り柄と言えば、近くの街で十五年間以上も冒険者をやってきたので、そこらのモンスターくらいは相手ができるというくらいか。


 三十五歳で、少しくたびれてはいるがまだ働き盛りであり、元Dランク冒険者なので(現在は引退して故郷に帰ってきたので、職業はただの村の木こりということになる)たいていのことはどうにかなるとはいえ……。

 これだけの数の人間を食わしていくのは無理があった。


「フィアナのばあさまには、俺ならなんとかなると言われたんだがなあ。歩き巫女の占いもあてにはならんか」


 これまで、何があってもなんとかなると楽観的に生きてきたヨサクも、こう何日も山を巡って何の収穫もないと堪える。

 モンスターの異常発生以降、厳しくも秋には豊かな恵みをくれたヒルデ大森林は、不気味に静まり返っている。


 山の神に祈り、泉の神に祈り、あとは何に祈ればいいのやら。

 そう思って、不意に森が開けたところまできて何気なく青く澄んだ空を見上げる。


「おや、めずらしい」


 それは、流れ星であった。

 流れ星が消える前に祈りを唱えれば、願い事が叶うと言われている。


「星の神様、どうか村のものを食わせてやってください」


 まるでヨサクの願いに応えるように、紅い流星は瞬き、その輝きを増していく。

 これはもしや、願いが叶うのでは……そう喜んだ矢先に気がついた。


「なんかこれ、こっちに落ちてくるのか……うわぁああああああ!」


 紅く光る巨大な物体は、ヨサクの近くに飛来して山の斜面に激突した。


 ドカーン!


 凄まじい爆発に巻き込まれて、ヨサクは天高く弾き飛ばされた。

 なんとか、落下したところに木の枝がクッションになって無傷で地面に転がったのは奇跡的だった。


「ゲホゲホ……。なんだこりゃ、もうむちゃくちゃじゃないか……」


 身体にかかった土砂を振り払って、ヨサクは起き上がる。

 ともかくも、被害を確かめねばならない。


「あーあ」


 幸いなことに山の(ふもと)にあるオルドス村は遠いから被害はないだろうが、山の中腹では木々がむちゃくちゃになぎ倒されて、大きなクレーターが開いている。

 そこは、村に残された貴重な財産である炭焼小屋もあった場所だ。


 森に食い物がなくても、炭を街まで持っていって売ればなんとかなると思ってたんだが……。


「いや、命があっただけめっけものと思おう」


 後少し落ちた場所がずれていたら、きっと爆発に巻き込まれて死んでいたに違いない。

 昔から何かしらトラブルに巻き込まれる事が多いヨサクだが、これは極めつけだ。


 九死に一生を得るとはこの事、これだって運が良かったと思っておこう。

 ともかく助かったとひたすら前向きに神様に感謝したヨサクだが……。


 それは、ほんの少し早かったようだ。

 見上げる先に、ヨサクが紅く光る流星だと思っていた巨大な物体がいる。


 それは、隕石などではなくエナメル質の輝く紅い鱗を持つ巨大なドラゴンだった。

 恐ろしい金色の巨大な眼が、じっとこちらを睨みつけている。


「レッドドラゴン!?」


 ドが付くほどの田舎者だが、これでもヨサクだって十五年も冒険者をやってきた男だ。

 最強生物たるドラゴンの伝説は知っている。


 しかし、英雄譚に聞くその巨大な魔物に睨みつけられたら、足はブルブルと震えて、まるで蛇に睨まれたカエルのように身動きが取れなくなるとは知らなかった。

 どうしようかと足元を見たら、さっきなくしたと思っていた鉄の斧が落ちている。


 しめた!


「俺は、こんなところで死ぬわけにはいかんのだぁあああああ!」


 俺を待っている人がいるのだ!

 ヨサクは勇気を振り絞って斧を拾い上げると、全身全霊の力を込めて投げつけた。


 ブンブンと唸る斧は、一直線にレッドドラゴンの額へと飛び!


 ガコンッ!


 ドラゴンの頭に当たると、硬い鱗にあっけなく弾かれた!


「グォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」


 怒ったドラゴンは、ヨサクを丸呑みにしようと大きく(あご)を開いた。


「やっぱ、無理かぁああああああああああああ!」


 ああ、こりゃ死んだかなあ……。


 ヨサクの視界が、ほとばしる鮮血で真っ赤に染まった。

優しい森の木こりが世界を救う話が書きたいと思って始めました。

コンテストの締め切りがあるので、第一部の終わりまでガンガン更新していきます。

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