合戦
まさに戦国。
平野に展開する陣形を見下ろすと、兵力は互角といったところか。
しかし、戦は兵力ではなく勝機にある。
わたしは総大将としてこの戦を勝利へと導かねばならない。
正午、戦いの火蓋が切られた。
敵軍に先制を許したためか、早くも隊列が崩されてしまった。これにより我が方もいくつかの部隊が敵に破れ、捕らわれてしまったようだ。
しかし、この戦で負けるわけにはいかない。
少しずつだが、確実に敵陣に斬り込んでいった我が軍は、騎馬隊による強襲の戦果もあって、ついに敵の大将を射程に捉えることに成功した。
首を挙げるときは近い。
その刹那、目の前に現れた雑兵が刺客となってわたしに刃を向けた。
なんという不覚。
攻勢に転じる余り、戦力を前線に偏らせすぎたのだ。
ほんの少し刃を進めればわたしの首が飛ぶ。
側近たちは身動きできず、ただただ動向を見守っている……。
わたしは敵の総大将に聞こえるよう、こう訴えた。
「ま、待った! ……というか、これは二歩だぞ!!」
(筆休めシリーズ『合戦』 おわり)