第9話
第9話
店を出た後も歩き回ってみたが何も手掛かりになりそうなものは見つからなかった。
「ライ、この辺でやめとこう。まぁ犯人のこと全く知らないわけだし見つかるはずもないよ」
「それもそうだね、ディザイアの反応くらいはあると思ったん…」
「どうした?」
と後ろを振り返ると紗良がいた。
「えっと…」
「別に私そんなにバカじゃないから
あなたたちを疑ってるわけじゃない、佑と迅が殺されたのは多分…
まぁ見かけたからちょっと聞こうと…」
「……」
どうあろうと真二を殺した相手だ、それほど友好的に話す気は起きない。
「あー、わかったわかった。じゃあ勝手に話すよ。
あくまで憶測だけど白髪の青年、年齢は多分18歳とかだと思う、そいつが佑と迅を殺したやつで私たちに命令をしてたやつ。
佑の様子がおかしくなったのも、佑がそいつを連れてきた時からだと思う。
そいつがどこに住んでるのか知らないけど、狙いはあなた、もしくはあなたたち二人を殺すこと。理由は知らないけど。
気をつけな、終わり」
「………なんで話したんだ?」
「いや、言い訳じゃないけどさ。真二?さんって人に手を下したのは佑のやつだけなんだよ、止められなかった私も悪いけどさ…。
私たちは人殺しなんてする勇気もないただの迷惑なだけの…不良だよ。
問い詰めるだけの計画だったし、あの日の夜別にあなたのことも攻撃する予定もなくてあの時…」
「あの時?」
「…真二って人を殺したのも、あなたに攻撃したのもただの事実だし、悪人でいいや。あと一つだけ」
「ちょ、質問に…」
と紗良は目を合わせないように下を向いた。
「私が死んだら、殺されたら確実にあいつが犯人だ。白髪のやつには警戒しときな。じゃ、二度と会わないかもしれないけど、またな。」
「お、おい!」
とすぐ路地に走り見えなくなった。
「ライ、位置わかるか?」
「ううん、言った通り探知じゃないから調べたいディザイアが発動してる時くらいしかまともに感じれない」
「そうか…」
「白髪の青年って誰だろうね、目立ちそうだけど。隼人は知ってる?」
「ライの方が知ってそうだけど、知らないのか」
「うん」
白髪の青年とやらはなんで僕たちを殺そうとしているのだろうか。
そもそもなんで佑と迅を殺したんだ?それに紗良も…
「あー…わからん!
もういいや、気晴らしにゲーセン行こう
それでさっさと帰って作戦会議でもする」
「そうだね…今どう動いても解決しない
奇襲なんてあるかわからないけど、警戒だけは解かないようにね」
「警戒ね…、どうすればいいか全くわかんないけどわかった」
とゲームセンターは駅前にあるショッピングモールの5階、すぐについた。
「ライ、コインゲームでもするか?」
「あ、えと…」
ライが見ているのはクレーンゲームの赤いリボンのついたクマのぬいぐるみだった。
「え、これが欲しいのか?前のぬいぐるみがあるじゃないか」
ライがえーという顔をする。あーしょうがねぇなぁ。
「これ全部100円にしてあるから、この数だけな」
「わかった、ありがとね隼人」
「ああ」
この辺ならあそこのクレーンゲームが視界に入るか…。
ライがお金を投入したのが見えた。
とりあえず僕はコインゲームを始めた。
特に景品みたいなのはないが時間をつぶすだけなら一番コスパがいい。
「隼人、取れたよ」
「はやっ、え、えっ!?もう?」
「うん、お金は返す」
「いや、大丈夫大丈夫。この分全部使っていいから」
「でも…」
判断を間違えていたことに気づいた、こういう時こんな行動するのは間違ってる。
バカだな僕。
「ごめん、ちょっとなにも考えてなかった。ライ、一緒に遊ぼうか」
ライは顔を見上げすごく嬉しそうな顔をして
「…うん!」
と言った。
「ライ、何する?」
「隼人がやりたいので」
「えー、僕の?じゃあ正真正銘のカエルのぬいぐるみが、クレーンゲームあるかな」
「ん?じゃああれ?」
と指さしたのは
「いやライ、あれはクマだって」
「え、じゃあ…カエルってどんな…」
と歩いていた目の前にカエルのぬいぐるみがあった。
「結構でかいな、取れるか…」
「じゃあさ、じゃあさ、交互にやろうよ!」
「じゃあ20回だ、二人で合計20回やって取れなかったら諦めよう」
「余裕だよ、私上手だもん」
「そいつはどうかな?」
「じゃあ隼人先行」
「よし」
100円を入れ、右に動かすボタンを押す。
クレーンゲームは真二と昔よくやった、位置取りだけでもかなり出来る方のはず…。
この位置か…?
ともう一つの奥に動かすボタンを押す。
アームが動く、ぬいぐるみの位置を捉え…
ここだ!
アームはぬいぐるみをつかんだ。…が少し持ち上がり落ちた。
「あぁ…アーム弱い…」
「隼人ドンマイ!私に任せて」
意気揚々にライはコインを入れた。
うまい位置に動かすが…取れなかった。
「ライあんなに意気込んてたのに」
「うー…次隼人!」
とこんなやり取りが続き全く取れる動きを見せないままあっという間に20回目が来てしまった。
「ライ何してんの…」
「おまじない」
ライはクマのぬいぐるみを目の前に置きなにかを唱えていた。よくわからん。
「よし、私に任せなさい!」
「お!やる気が1.2倍くらいに見える!」
「うん!やる気が!…って1.2倍、微妙だねそれ…」
「ライならいける!」
「うん!いける!」
ライはコインをいれ、早速ボタンに触れた。
中指で優しくボタンに触れボタンを押す、少し経ち優しく離す。
「その位置で大丈夫なのか?」
「勘だよ」
とライはボタンに触れる、ライは目を瞑った。さながら熟練かのような顔立ちだ。
「ここだね、…finale」
と手をさっと離し、かっこよく決めた。
ぬいぐるみが倒れアームはカエルの体の部分をつかんだ。これ大丈夫か…?バランス悪いけど。
とアームがぐらぐらと揺れながらもカエルを持ち上げた。
「おっ!持ち上がったのは初めてだな!」
「ふっ」
とドヤ顔で鼻を鳴らす、まだ取れたわけじゃないですよライさん。
とカエルはバランス悪いままも、アームに引っかかったまま運ばれていく。
そのまま…
アームはカエルを離し、穴に落ちた。
「マジかよ…」
「私に任せてって言ったでしょ」
「言ったけど…マジかよ」
「はい、どうぞ」
とライがカエルのぬいぐるみを取り出し渡してくる。
「ありがとうライ!一生の宝物にするよ!」
「私を崇めるといい」
「あ、それはいいです」
「えー」
気づくと時刻は4時になっていた。そろそろ帰らないとな…。
「今日は楽しかった、もう帰ろうか」
「そうだね、もう夕方になっちゃう」
ショッピングモールの地下と駅は繋がっている、家に材料はあったはずだから買い物は大丈夫かな。
まぁ寄り道はしないでそのまま帰るか。
すぐ電車に乗り早めに家に帰った。