表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デッド・メモリー  作者: えあの
7/11

第7話

幕間


もうすぐ0時になるぐらいか…、月明かりが眩しい。


「ありがとう、隼人のことも思い出せたし、やらないといけないこともある程度思い出した」


ライが誰かに向けてそう言う。


「ん?何を言ってるかわからないけど、どういたしまして。


とりあえず何があっても隼人さんのことを守っていてほしい、必要なことなんだ」


相手は夜、少年だった。ここに…いたのか。


「それは当然、私は隼人を守るためにこの力を振るう。


あんなこと二度と起こさせるつもりはない。ただ、一つ聞きたいことがある」


「ん?どうしたの?」


「あなたは何?なんで私たちのことを知ってるの?」


「別に教えても構わないけど、君自身が自身を何者なのか、覚えてないんでしょ。それに妹のことも」


「妹のこと?待って。まず話を逸らさないで」


「ごめんね、やっぱり僕は君に話したくないみたいだよ。それにそこで誰かが盗み聞きしてるみたいだし…」


バレてるか、流石だな。どのくらい状況を知っているのか知りたかったが…


仕方ない、離れるか…




第7話


ふと目が覚める。時刻は0時を過ぎたところだった。


緊急時に対処できるようにと、ライの提案で和室に布団を敷いて隣で寝ていたのだが隣にライがいない。


隣で寝るという提案を認めたのに特に理由はない。別に変なことは考えてない、


…考えてないよ?うん。


誰に言ってるんだ俺。


とふと玄関がのドアが開き、ライが戻ってきた。


「だ、大丈夫だった!?何かあった?」


「問題ないよ隼人、外の空気吸ってただけ。


あ、そういえば月出てたよ。すっごく綺麗だった」


「ここから見えるかな」


「多分見えるんじゃない?あ、ほら」


とベランダの窓を開ける。冷たい風が入ってくる、めっちゃ涼しい。


「久しぶりに月見たなぁ…、そういえばさディザイアってなんか満月で強くなるみたいなのはないの?」


「うーん、どうなのかな。てかこれ満月じゃないけど…


私が知る限りではないかなって思うけど」


「あ、満月じゃない、さいですか…」


「多分明日だよ、満月」


「そうなのか、満月といえばなんか力感じるよね。なんか魔力が満ちるみたいな、やる気出てくる感じがする」


「そ、そうなのかな」


とライが苦笑いする。ちょっと考えが子供っぽかっただろうか…


「まぁ隼人の言ってることもわからなくはないよ、満月って占いとか宗教とかそういうものの基準になったり、吉兆の証だったりするからね」


「そうだよね!満月ってなんか最強みたいな感じがする」


「さ、最強だね…」


ライがこちらを見てまた苦笑いする。


どうも最強じゃないらしい


……空気が苦しい、話題変えよう。


「じゃあ寝よっか、明日は何時くらいに起きる?」


「6時か7時くらいかな、………ふああ…眠くなってきた。

ん?どしたの?」


「いや、なんか、やっぱりまだ真二のことが気になって」


「気にするなとか、早めに忘れようとか言う気もないし、そのことをすぐ気にしなくなる隼人なんて私は考えたくもない。


だから今は真二さんが救われる方向を、まずディザイアの制作は本当だったのか、ディザイアは本当に真二さんが町中にばら撒いたのか


このことが嘘だったら、能力者の人たちに嘘だってことを証明するのが真二さんが疑われない、恨まれない理由になるんじゃないかな」


「そうだね、…うん、そうだよね。真二はそんなことしない、真二はそんな他人が犠牲になることを自らするような人じゃないって」


「安心して、私も協力する。隼人のためになるんだったらなんでも」


「ありがとう、ライ」


それからすぐ寝床につきすぐに眠りについた。


目を開けるともう朝になっていた。くっ…目覚ましかけ忘れた…


時刻は7時半だった。


部屋から出るとライがキッチンに立っていた。


「おはよ、隼人。凄い寝相だったね」


ライがこちらを見てそう言いながら右手を振る。


とりあえずこちらも振り返す。


「おはよう、ライ。そんな寝相悪かったのか…ごめん」


「大丈夫だよ、途中蹴られた時はびっくりしたけど」


「あ、え!?嘘…やっぱり僕リビングで寝た方が」


「気にしなくていいよ、私も気にしてないし。びっくりしただけだよ」


「お、おーけー…。ちょっと思ったんだけど何してるの?」


そうキッチンに立っているライが料理をしているように見えるのだ。


「見たままだよ朝ごはん作ってるの」


「ライって料理できるのか…?」


「凄く練習したからね、今日は簡単にだけどスクランブルエッグとかで洋食に寄せてみたよ、あとエンドウを茹でておいたよ。食パンはチーズ乗せて食べてね。隼人チーズ好きでしょ?」


「あ、うん、チーズ好き。凄いね…」


何か様子がおかしい、この間までカップラーメンはおろかパンすら知らなかったはずだ。そもそも僕は好きな食べ物をライに言った記憶はない。聞いてみるべきかな。


「隼人、どうしたの?」


「な、なんでもないよ」


作ってもらってる手前なんか言いにくい…。理由つけるなら記憶が戻ったとかかな…。


「出来たよー!隼人ー!あさごはーん!」


皿を何枚か手に持って現れた。


…?3人分?


「ライ、なんで3人分用意してあるんだ?」


「あ、え!?間違えちゃった!分けて食べちゃおうか」


「ライどうしたの?なんか記憶が戻ってきてるとかか?」


「そうかもしれないね、ドジしちゃった」


誤魔化されてる気がする。


まず一昨日の夜からか、そもそもあの時点では1日ほどしか僕と会ってから経っていなかったはずだ。襲われた状況ではあったが、急に僕のことを絶対に守るなどと態度が変わっていた。


好意的なのはうれしいのだがここまでおかしいと恐怖が勝る。


「ライ、どうしたんだ?なんか、人が変わったみたいだよ…」


「あ、ちょっと気分がね」


誤魔化す態度に少しむかついてしまった、同時に頭が少し痛む。


「…あのさ、心配してるんだ。俺はライのことを真剣に考えて言ってるから、もしなにかあったんだったら本当のことを言ってほしい」


ライは驚いた表情を見せる。少し言いすぎただろうか…。


「ごめんね隼人、最初から全部話すべきだった。

昨日の夕方に男の子が急にドアを開けて入ってきてこのペンダント渡されたの」


と白い宝石のついたペンダントをポケットから取り出した、なんかこれ見覚えがあるような…。


「これに触ったら記憶が流れ込んできてね、いろいろ思い出したの。ううん、思い出したとは違うと思う。


でも、偽物の記憶とかでもないと思う」


「思い出したとは違う?」


「うん、言いにくいことなんだけど、流れ込んできた記憶の中で隼人は…」


「僕がどうしたの?」


「記憶は部分的で曖昧で…、完全なものじゃなかったと思う。


だからなんで隼人の髪が真っ白に染まってたのか、建物がどんどん壊れて、崩れて行ってたのかわからない


ただあの時私はその景色を見てもなにもできなかった」


「隼人の近くに行けて、それで隼人に話しかけて。


隼人はこっちを見て笑って


『もうこれを壊すのには間に合わない。世界が今の記憶を失う前に俺を殺してくれないか?』


って、


それで私は隼人を…」


言葉を途中で止め何かを思い出したか驚いた表情を見せる。


ただライは動揺で目の焦点が合っていなかった、その表情だけで答えはわかる。


もう知ってたのかもしれない。


「………あ、あ…」


ライが嗚咽を漏らし涙を流す。


「は…隼人…ごめんね、ごめんね。私…」


「大丈夫だよライ。僕はここにいる」


と手に触れた。


「うん…。


あの時、隼人の体が目の前でボロボロになっていって、それでも隼人は左手を右手で抑えようとしてた。


隼人は私の前で一度も痛いとか、言わなかった。


でも隼人が抑えてた右手が抑えきれず吹き飛んで右手のは壊れて…その傷口から消滅するようにどんどん体が崩れて…


隼人が


『こんな最期に付き合わせてごめんな、ライ。この頼み事がライにとって酷なこともわかってる。

この時間の俺一人が死ぬだけでみんなもっと生きられるんだ、記憶が染まる前に俺を早く殺………いいや、楽にしてくれないか?』


って…


私は…私は…………




隼人を


殺した」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ