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デッド・メモリー  作者: えあの
6/11

第6話

残酷な描写が含まれます。(血など)

幕間


様子を見に来たが終わっていたようだ、この有様を見れば結果はわかる。


背の高い青年が佑を抱えて帰ろうとしていた。




「な、な、うまくいかなったことは謝る!すまない、でも想定外だったんだ!」


この青年、迅と言ったか、こいつに興味はない。




「無理だ!佑に何かする気だろ、置いて帰るのは何があっても拒否する!」


邪魔だな…二人まとめた方が楽か。


戦闘系の能力だ。ここで逃してそれが染まっても覚醒しても面倒だしな…。


まぁ最後に一応聞いておくか。




「あ、え、男の子?何歳くらいだ?いなかったと思うが…」


まだ接触してないか?またズレている可能性もあるか…


そういえば他の3人がいないな。…まぁいいか、殺そう。


僕に戦闘向けの能力はない、ただ普通に首をナイフで刺し殺すだけ。もう慣れた作業だ。


二人の首を順番に、的確に刺した。佑は声を出していなかっただけで起きてはいたようだ。


二人はゔっと声を漏らす。


そのあと痛みか何かで声が出そうと口を開けるも、首から溢れ続ける血で声を出せない。


息の根を止める、が文字通りならこんな感じだろう………どうでもいいが。


首の傷口から、夥しいほどの量の血が溢れ地面へぼたぼたと零れていく。アスファルトがどんどん血で埋め尽くされてゆく、朝になればこの辺りは赤黒く見えるだろう。


この作業は一番やった作業で、……一番嫌いな作業だ。


まだこの時間の世界ではこいつらの死は記録に、世界の記憶に残らない。あの時間の世界はなんて都合よく変わったのだろう。


また失敗してもあいつがやればまた何もなかったように戻る命、価値は微塵も感じない。


いや、少しは感じているのかもしれない。


なら、二人の死体が消える前に『デッド・メモリー』…いやあの世界では『ディザイア』と呼ばれていたか。


欲望に、羨望に応える宝石なんて考え…本当にそんなものだったらあの国はどれだけ幸せだろうか。


…とりあえず取っておこう。


佑の体を持ち上げ右手を切り落とす、右手が落ちると同時に黄色く光る宝石が具現化し落ちる。


同じく迅の心臓をくり抜き引っ張り出す。青白く光る宝石が心臓のあった場所に現れる。


僕にはもう使えないが、このメモリがあれば


こいつらの死体はいずれまた必要とされるときのためにエネルギーとして吸収され、消える。


せめてでもなんてものではないがこの世界で死んだことをこいつらの大切な人たちに悲しんで貰えば十分だろう。


二人は完全に息絶えた。それを確認し、その場を後にした。



第6話


昨日は全く眠れなかった。


真二が死んだ、受け入れられないが事実ということはわかっていた。感付いていたのかもしれない。


ライが起きてきたようだ、深呼吸をして振り向いた。ライには元気なところを見せなければ。


「おはよ!ライ!」


「え、あ、隼人…」


驚いた顔をし、そのあと心配をするような表情を見せた。


僕はそのことを気に留めることもなく気丈にふるまった。


「朝ごはんもう出来てるよ、食べようか」


「う…うん…」


朝ごはんを食べている最中話すことはなかった、何も話題が思いつかなかった。


何事もなく朝ごはんを食べ終わりテレビをつけた。


ライは子供向けのものよりニュースのほうがいいだろう。


ライはずっとこちらを見てなにかを言いかけていた様子だった、ライはリモコンを取りテレビを消した。


「どうしたの?ライ、ニュース見たくなかったのか?」


ライは意を決した表情を見せてこちらに歩いてきた。


「私じゃ不十分かもしれないけど…」


と言いライは僕を抱き寄せ、頭を撫でた。


「あのね、いつかも覚えてない話なんだけどね、隼人は私を助けてくれたんだよ。

なにがあったかも覚えてない、でも絶望の中で隼人だけが私の光だった。それだけが強く記憶に残ってる。

あ、ごめんね、こんな話してもわかんないよね」


「隼人を守るって決めて、それで…」


「えっと、言いたいのはね隼人、無理はしないで」


ライとは少し前に会っただけのはずだった、でもこの感覚に、この声に懐かしさを感じる。


そっか…僕無理してたのかな…


とそう思った瞬間涙が溢れてきた。


真二が死んだ。


一番の友達で、小学生のころから一緒に遊んでいて、一緒の高校に受かったときはお前なら余裕に決まってるだろと思いながらも凄く嬉しくて…。


中2の頃にバレンタインで貰った僕のチョコを勝手に食ったバカ。


面倒と言いながらもテスト勉強を手伝ってくれたツンデレみたいなやつ。


僕の親友だった。


僕、どうすればいいのかな…真二…。


考えないようにしていた真二との思い出が山のように溢れてくる。


涙が止まらなかった。ライはずっとただ黙って僕の頭を撫でていた。


「ありがとう、ライ。少し気持ちが落ち着いた」


「うん」


とすぐアパートのチャイムが鳴る。


「誰だろ…」


涙を拭いて、ドアののぞき穴から見ると見知らぬ女子高校生が立っていた。


とりあえず、ドアを開けた。


「えっと、あの私、橘 歌音と言います。つまらないものですが」


と菓子の入った紙袋を出してきた。


「え?いや、どういうこと?」


「あ、えと、謝って済むようなことじゃないのも許されることじゃないのもわかってます、えっと…真二さんのことです」


後ろからついてきたライを見ると訝しげな顔で頷いている、ライの反応からおそらく能力者だ。


警戒は解かない方がいいな…。


「……」


とりあえず話だけは聞いた方がいいかな。


「詳しく聞いてもいいかな?中入ってもらって」


「あ、は…、はい」


多分如月の関係の人だろう、まぁあの不良と繋がりがあるようには見えないが…。


リビングの椅子に対面で座った。


自分の隣でライがちょこんと座っている、気づかなかったが足が床についてない。かわいい。


「一応聞くんですけど、真二は…」


深呼吸を挟んだ、やはり実際に聞くとなると辛い。


「…真二は死んだんですか?」


「………はい…」


「君は、如月のやつに協力したってことなの?」


「そうなりますね…」


「えっとなんで殺…なんで真二が」


殺したと言いかけてやめたがきちんと聞こえていたようだ。彼女の口調に焦りが見えた。


「あ、あそこまでするなんて思ってなくて、あの、で、でも私は目の前にいたのに止められなかったのは事実です…」


かなり彼女の口調はどもっていた、そもそもなぜ彼女はここに来たのだろうか。


「えっと事の発端から話しますね…」


しばらく彼女の話が続いた。まとめるとこうだ。


能力の使える宝石が1カ月ほど前から町中に転がっているのが見られた。それに触れるとなんらかの能力が一つ使える、ライの言うディザイアで間違いないだろう。


戦闘系の能力を得た学生は個人で使うに飽き足らず、戦闘系の人たちで対人で扱い始めたらしく怪我人が出始めた。


それが10日ほど前、如月の妹が能力を持っていたが故にしつこく狙われしまいには大けがを負ってしまった。


如月は激怒しその学生を殴り込みに行ったようだが能力を使われ反撃された。


その帰りにディザイアを見つけ、その時白髪の青年に話しかけられたらしく、

それの開発者がいることを聞き根を潰すと共に妹の復讐をしようと計画建てたようだ。


メンバーは如月を筆頭に、元々絡みのあった迅と紗良、如月の妹の友達の橘さん、名前は聞いてないらしいクラスメイトの男の子の5人で構成されていた。


開発者が真二と僕だという情報が流れるとすぐに向かったらしく2日前のことだ。


復讐とは言えども気が済むまで殴るだけの予定だったらしい。


人が怪我をしているということを伝えディザイアを回収させるという計画だったが、真二が逃げたことに如月は腹を立て、その後路地裏に逃げ込んだ真二を見つけた。


迅と橘さんは止めようとしたが、そのまま…らしい。


聞いてみれば割と納得のいく筋書きだが、あの真二が開発者なことは1%でもあり得るとしてばら撒くような真似、失態をするとは到底思えない。


「ちなみに白髪の人って言ってたけどその人には会ったことあるのか?」


「私たちに指示を出していたのはその人です、未来に起こることを知ってるみたいですべてあの人の言う通りに動いてました」


この話で黒幕というならおそらくこの人だろう、なにが目的だ…?


「話してくれてありがとう」


と話を終わろうとすると


「あ、あの、すみません、まだ話してないことがあります」


と言った。


「昨日真二さんに会いましたよね、あとあの日の夜に電話で。

ちょっとだけ待ってください」


と言いリビングを出た。そのあとすぐ戻ってきた、戻ってきたのは真二だった。


「あ、えっと私です、あの…騙してすみません」


真二の姿だがそれは橘さんの声だった。


「それが橘さんの能力…

ライ、この能力に覚えはあるのか?」


「うん、物を形状を変化させる系統のもの。でも多分使いこなせてない」


「どうしてだ?」


「多分だけどまず見たことのある人にしかなれないよね?」


とライが問うと姿を戻して帰ってきた橘さんはこくりと頷いた。


「そして自分以外変化させることができない」


「使いこなせばそこにあるコップでも、他の物質とか大きさが完全に違うものにも変化させることができる」


とライは説明する。


「そうなのか…」


「ライちゃん、宝石のことよく知ってるの?」


ライはむん、と頷いた。


「宝石を手放す方法とか知らない…?」


「一応そういう能力の情報もあったけどまだ正確には知らないよ」


「そっか…、ありがとうライちゃん」


「手放したいのか?」


と橘さんに聞く


「うん、綺麗な宝石が落ちてて落とし物かと思って触っただけだもん、私は雪ちゃんのためになるならこの能力を使うけど…」


雪ちゃんと呼ばれているのは如月 雪、如月の妹だ。


「橘さん、話してくれてありがとう。


如月…、佑のやつのことは許せないけどもっと注意しないといけなさそうな人物がわかった。真二の仇討ちとかそんなんじゃないけど調べてみようと思う」


「何か出来ることあったら手伝うから、呼んでね‥あ、じゃなくて呼んでください」


と帰っていった、そういえば送って行ったほうが良かっただろうか。


「なぁ、ライ、取り出す方法がないならディザイアってどうやって集めるんだ?」


「言ってなかったね。ディザイアは能力者の、主のいる状態だと見えなくなる。

具現化するのはディザイアのある場所に直接ダメージを与えたとき、ディザイアが覚醒したとき、あとは能力者が完全に死亡したとき。

あとは医療系のディザイアだね、応用としてディザイアを取り出すことができる」


「それを使うってわけか」


「うん、もう誰かの能力になってるかもしれないしまだ落ちたままかもしれない。誰かの能力になってたらもうお願いするしかない」


「戦闘系のディザイアも持ってて返り討ちにされるかもしれないぞ」


ライはふふっと笑った。


「それはないから安心して、ディザイアは一人につき一つしか宿ることができない」


「逆に言えば能力を隠し持つみたいな可能性とかは考えれないってわけか」


「そうだね」


きっかけは真二のことの私怨だったかもしれない、ただ心のもやを晴らしたかった。


こうして能力者を、ディザイアを探す日々が始まった。

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