第5話
第5話
「ライ…?」
そう、後ろに立っていたのはライだった。
「ごめんね、言われた通りに留守番出来なくて。でも間に合ってよかったよ」
「そ、それはいいんだけど…なに?この氷…」
「そんなこと話してる場合じゃないよ、隼人」
如月が早くもこちらに攻撃をしようと構えていた。
「隼人は後ろに下がってて、私が必ずあなたを守るから」
「あ、うん…」
何が起こっているのかいまいち理解ができていない。
ともかく自分が前に出ていても邪魔だと思い、言われた通りに後ろに下がった。
ライが左手の周りで小さな氷の粒を回し、辺り一帯にタイヤほどの大きさの氷を大量に浮遊させた。
辺りの気温は一気に下がり、夕焼けの橙色の空を黒い雲が覆っていった。
昨日見たばかりの光景が目の前に映る。
そう、雪が降り始めたのだ。
如月が引き攣った顔になり言う。
「どういうことだ?これは、まるで昨日の仲並がやったやつと一緒じゃねぇか」
「昨日…?なるほどね。
その仲並さん?が誰かは私知らないけど、あなたが氷の扱える能力者を殺したんだね…」
「そうだがなにか問題あるか?ただの敵討ちだ、これくらいの罰あって当然だろ」
如月の言っていることはわからない、ただ反論がしたかった。
「真二がなにをしたって言うんだよ!あいつは思い立ったことをすぐやるアホだけど、それに人を巻き込むようなやつじゃない!」
ライが振り向き驚いたような表情を見せる。
「真二…?もしかして氷のディザイアの持ち主は…」
そう言うライに構いもなく、如月は話を進める。
「まだそんなこと言うのか?あいつはもう認めたぞ、『それを作ったのは僕』とか。お前もさっさと知らないふりするのをやめろよ、うぜぇぞ」
また雷の槍を作り出し自分に向かって投げてきた。
ライが防ぐかのように浮遊していた氷の塊を槍に当てかき消した。
「お前は仲並のやつより使いこなしてるんだな、やりがいがあるな」
ライは悲しげな顔をして如月に向き合った。
「あなたが何のためにこんなことをしているかはわからない。
隼人にとって危害で、隼人の大事なものを奪う存在なのだったら…容赦はしない。」
「なんでこいつの味方なんかしてるんだよ、意味わかんねぇ」
如月はそう吐き捨て、右手を構えた。
戦いは圧倒だった。
ライの方が手練れで、氷の塊を3つほど飛ばすと同時に新しく生成し、また飛ばす。如月は攻撃をする隙間も与えられずただただ防ぐのが精一杯のようだった。
誰が見ても絶対にライが勝つようにしか見えない、そんな戦いだった。
と不意打ちを食らわせるかのように如月の後ろに氷を生成する。
これで終わりかのように見えた。
しかし
「佑!危ねぇ!」
一瞬で如月の後ろに背の高い男が現れた。
背の高い男は氷を両腕で受け止めた。
「迅!助かった」
いきなり現れたのその迅という男によってライの不意打ちは防がれた。
とその時
「隼人!危ない!」
ライが叫ぶ。
後ろから空気を掻き切るかのような斬撃が飛んできた。
咄嗟に僕は左手で防いだ。
「いてっ」
左手を見ると切り傷があり血が滲んでいた。
「やっぱり、首とか狙わないと無理だね…」
斬撃が飛んできた方向からは女の声が聞こえた。
「紗良も来たのか!」
と如月が言う。
「ま、まぁ」
と応える、おそらくこの人が紗良という人、如月の友人だろうか。
見たことはないが同級生なのだろうか。
「佑、目標がいたからって急ぐんじゃねぇ」
「あ、いやたまたま…」
と如月が迅という男の言葉に返す。
「この女の子が、橘の言ってた子かな。佑、あなたこんな小さな女の子に苦戦してるの?」
と笑いながら紗良という女が言う。
「まぁ、でも助かった。二人ともありがとう、あいつは来てないか」
如月の質問に紗良が応える。
「あいつってどっち?
あー、そっちか。まぁアニメでも見てるんでしょ」
「そうか、まぁ見ての通り劣勢で。俺ダサいなw」
「佑、俺たちに任せろ」
「なにもお前らに任せるってわけじゃない、3人で共闘と行くか」
決まったかのように3人は僕たちを挟み撃ちにした。
後ろに下がりライに近寄った
「やばいね…隼人。想定外かも。」
「ライでも難しいか」
「あまり私を強いと過信しないで」
「あ、あぁ」
「でも、任せて隼人にだけは…」
「そんなの大丈夫だよ、年下の女の子に守られる男なんてださいし、僕も多少は体を鍛えてる」
「…うん。じゃあ任せるね」
とその言葉のすぐあと目の前に拳を構えた迅が現れる、能力か。瞬間移動とかかな…。
この速さ程度ならまだいける、拳を躱して頭を抱え、腹に蹴りを入れる。
そのタイミングが狙ったかのように上空から雷が降ってくる。
氷が上部に精製され雷を防いだ。
合間なく斬撃が5つほど飛んでくるそれもすべて氷で防ぐ。ライのコントロールは素晴らしく、攻撃をほとんど防いでいた。
だが防ぐことは出来ても攻撃をすることができなかった。
迅の攻撃は直接的に拳で来るためそちらは五分五分だが、残り二人は遠距離で攻撃してくるため劣勢といったところだった。
「いくよ、佑!」
紗良という女性が叫んだ。
「ああ!」
如月が応え、四方八方を覆うように雷と空気の槍が乱雑に並ぶ。
絶体絶命だ…。
ライが
「仕方ない…かな…」
と言う。
途端に空気が重くなり、体も動かなくなる。
違った。体が動かなくなっていたのではなく、時間の流れが遅くなっていた。
その中でライは何もないかのように普通に動く。ライは如月佑の右手、紗良の右手、迅の背中に触れ、パシッ、パシッと手を払う。
空気が軽くなったのと同時に周りにあった雷と空気の槍も消え去る。
「うぐっ」
3人が同時に倒れ、苦悶の声を漏らす。
「失神しないね…思ってたより3人は優秀なんだね」
とライが言い、3人ともどうにかと立ち上がる。
「もうやめておいたほうがいいよ、私は隼人に危害が及ばなければいいだけ。
あなたたちを殺したり、再起不能にするつもりはない」
「俺は…」
如月が立ち上がり右手を構える。
嫌そうな顔をしてライが右手を上げ、振り下ろす。
その瞬間如月の数歩手前に、先ほど如月の落としたものより大きな雷が落ちる。
「わかった?もう隼人に手は出さないでね」
如月は気絶し倒れた。
迅が
「あ…あぁ、わかった。僕らは危害を加えない」
「迅!なんで!」
と紗良が言うが迅がそれを止めた。
「隼人、帰るよ」
「う、うん…」
その場に3人を残したまま僕たち二人は家へと帰った。