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デッド・メモリー  作者: えあの
3/11

第3話

幕間

「こいつは見当たらなかったぞ、写真は貰ったが場所を教えてくれねぇと話にならないだろ」


佑という名の青年は不満をこぼす。





「そうすればいいのか?一応やってみるが…」


そこで気弱そうな少女が青年に訴えかけた。


「私もうやだよ、あそこまでするなんて思ってなかった。あの人優しそうだったしあんなことする人だとは思えない。それに私たちあの時の現場、実際には見てないんだよ?」


「じゃあなんでお前は昨日今日とここに来たんだ?それに証拠は十分だってお前も納得したじゃねぇか」


「そうだけど…でも…」


「それにお前一番弱いんだから黙って聞いとけよ」


「……」


それに便乗するかのように後ろに座っていた、服装からして大体17歳ほどの少女が喋り始めた。


「佑の言う通り、あなたが口を挟める場所なんてないでしょ」


「あまり責めすぎるなよ、仲間割れは良くない」


と制服姿の高身長の青年が割って入る。


後ろに背の低い私服姿の少年もいたがこの様子を一瞥して、興味なさそうにまたスマホを見始めた。



第三話


時刻は9時45分、もうすぐ10時になるというところだった。


「ライ、そろそろ…」


と言いかけた時、ふと気になるニュースがテレビの画面に映されていた。


『夜凪町で不審死体』


と夜凪町、つまりはここの地区のことがニュースで報道されていた。


ニュースによると夜凪町駅前の身元不明の死体があったようだ、詳細はそこまで語られていなかったが封鎖されている映像を見るにかなり近い場所だ。


あそこの路地裏だろうか。場所が近いとはいえ知らない場所で起こっていることだ。どうも他人事に感じる、なんとも物騒な…


そこで昨日のことを思い出し、隣にいたライに聞く。


「昨日いろいろ言ってたのは…これか?」


「多分そうだね…私は集団でいるのだと思ってたんだけど」


「集団か…」


「何か心当たりあるの?」


ライがリュックの中の荷物を見ながら聞いてくる。


心当たりともいえない不確定な情報として最近不良が集団で歩きまわっているらしいがどうも見たことがない、聞いた時は治安悪いなぁと思ったがあくまで噂だけの話だったと考えている。これは…余計な情報だろう。


「あー、いや、ないけどこれについて知ってるのか?」


「集団の方は特には知らないけど」


「そうか…」


昨日何が起こっていたか気になるところだが、なんにせよ僕ら一般人には関わり合いになれないものだろう。知らないふりをしているのがちょうどいいだろう。


10時半、ライがニュースの件で手帳の内容を見返すと言ったため、予定より少し遅れて家を出た。電車はこまめにあるし問題ない、多分…。


外は昨日と変わらず素晴らしく晴天だった


「いい天気だなぁ、雲がひとつもない」


「うん、あったかいし眠くなりそう」


ライはふぁぁとあくびをしながらそう言った。


「とりあえず服買いにいくか」


ここから真二の家は一駅先にある、まず駅前の店で服を買いに行くことにした。


「うん」


ライは眠そうに目をこすりながら返事をした。


駅前までは5分ほどしかかからない、特に問題は起きないだろう…。問題があるとしたら今朝のニュースのことだが…


「あ、ねこー」


ライが走っていった、わかってはいたが割とマイペースな性格なんだな…。


そして…普通に逃げられていた。そりゃあ、野生だろうしな。ライが負けじと負うが…。


あ、こけた。


「いったぁ…」


「大丈夫か?」


「擦り傷だけ」


そこまで大したけがではなかったが一応処置はしておこう…。


「絆創膏あるから、貼っとけ。」


ライは絆創膏が何かわからない様子だったが、まぁ…見たらわかるだろ多分。


そういえば、このクマの柄の絆創膏があったな…。


一昨日母さんが買ってきてくれたがこんな可愛い柄のもの恥ずかしくて貼れるわけなかった。出番来て良かったなお前…。


ライに絆創膏を貼るとライが


「可愛いね、カエル?」


「どこをどうみたらカエルに見えるんだよ」


そんな会話もしながらあっという間に駅前についた。思っていたより早く、5分ほどしかかからなかった。


今朝ニュースで見た光景が目に映る。


駅前の駐車場の路地裏がブルーシートで隠されていてパトカーが止まっている。ということはここはやはりニュースで報道されていた場所だ。


見た目どこにでもある路地裏だったからこんなことが起こるなんて思いもしなかった。


隣で歩いていたライが


「まだ残ってる…?どういうこと?」


と突然走り出しブルーシートで隠された路地裏に入って行った。


「ちょ、おい!」


止めようと追いかけ、悪いと思いつつも自分もブルーシートを除けて路地裏に入ってしまった。


「やっぱり残ってた…」


ドラマでよく見る事件現場の番号札、確か鑑識標識と言ったか。それはところどころにあったが、そこには遺体なども残っているはずもなかった、なにが残っているというのだろう。


ただ、辺りの壁はと床は一面凍り付いており一部は氷が溶けたのかアスファスト全体は大雨が降っているかののようにふとももほどの高さで水に溢れていた。


とライがふぅとため息をつくように息を吹き、水の中に片手を入れたとたん周りの空気が重くなった。


うおっ、なんか寒気する。半袖で路地に入ったからだろうか…。


ライが何かしているのをぼーっと見ていると、徐々に重くなった空気が軽くなっていった。


ライが地面周りの氷が急に溶け出した。


なかなかに異様な光景だ。てかよく考えたらこの状況やばいな。外をふと見ると先ほどまでいなかった警官が見張りのように立っている、あまり言いたくはないが管理ずさんだな…。


とライが


「もう終わったよ、出よっか」


出よっかじゃねぇ…、どうすればいいんだ。


「あ、外に人いるね、ばれない用に出ようか」


ライは右のこめかみに右手を当てた、とライが消えた。


「あれ?どこ行った?」


「行くよ」


と虚空から聞こえる。とりあえず待ってと右手を伸ばした、しかし手が存在しなかった。否、存在しないというより風の当たる感覚などはあるのだが自分から手が見えなかった。


「あ、説明忘れてた。透明になってるからばれないで出れるよ」


ライが当然かのように答える


いやいや…。


居てもしょうがないか。先ほどの路地を出て反対の路地に来た、ライがついてきていたようで路地に入ると後ろからライが現れた。


「収穫ありだね」


「ああ言うとこには勝手に入るなよ。と言いたいがあれは何をしてたんだ?」


「まぁ、落とし物かな」


よくみるとライの顔色は良くなく、気まずそうな顔をしていた。


というか落とし物?何もあそこには無さそうだったが……


「まあ、もう一度言うけどああいうとこ急に入るのはやめような」


「次からは気をつける」


行かないとは言わないんだな…。


路地を出て服屋ついた。


一度も来たことがない服屋だがかなりおしゃれな外見だ。


「じゃあ、ここに座ってるから好きなやつを僕のとこに持ってきてくれ」


「イエッサー」


と買い物カゴ渡すとすぐに受け取ってを少し嬉しそうに歩いていった。女の子なんだな…ファッションとか全くわからないんだが、服を見るの楽しいのだろうか。


なんというか姪を見る叔父の気分だ。


その後青いワンピースを自分に当ててドヤ顔を決めていたり、買い物カゴに大量に Tシャツを突っ込んでいたりした。部屋着だろうか、全くわからん。


まぁひととおり下着や靴下など必要な衣類を揃えた。


好きなやつとは言ったが15万……今日だけで15万が飛んだ。こんなにかかるものなのか…?15万の言い訳が思いつかない、バイト禁止の高校のためお金は父さんに仕送りとしてもらっているのだ、父さんになんて話そうか。


その後電車に乗り何事もなく真二の家に向かった。


インターホンを鳴らすとすぐに真二は出て、


「よお」


と言った。


「電話では結構話してたが、直で合うのは久しぶりだな」


「1週間前くらいに話した気がするけど」


「そうだっけか?覚えてないな」


なぜか気まずく感じた、とライが真二を疑うような目で見ていた。


「この子が、ライって言うんだけどえっと…………は、母さんが留学してた時の友達の子で日本に遊びに来てるんだ。この辺に住んでるのが俺しかいなくて…まあ預かってるんだ」


我ながら嘘がポンポンと出てくるものである…。よくないなぁこういうの。


「そうなのか。昔からお前頼られてたからなぁ」


「まあ中に入ったらどうだ」


「おーけー、お邪魔しまーす」


真二、こいつは社会的には研究者として知られている。しかし根はただのオタク、そして幼馴染だ。

学校に部室を改造した研究室を持ち平日はほぼそこで過ごしているためこちらのアパートにはほとんど物がない。学校にもう住んだらどうだ?と話したことはあるが、こっちにはグッズを買える店が近くにあるらしく学校に土日もいるつもりはないと言っていた。


「でどうしたんだ?ゲームとかならお前の家の方が良さそうだが…」


「いや昨日真二が何かに気づいたって」


「ん?…………あーそんなこともあったな」


真二は言葉を濁すように右上に目線をそらした。


「いやあったな、じゃなくて」


「勘違いだったわ、すまん!忘れてくれ!」


「えぇ……」


「もしかして…そのために来たのか?そうだったら、なんか…すまねぇな」


「一駅とはいえ…」


と不満をこぼすように言ってみる。


まぁ別に何も思っているわけじゃないが、がめついな自分…。


「お詫びとは言えないが、あっそろそろ12時だな、昼飯おごるわ」


「まじか!いいのか?」


「そりゃ俺のせいだからな」


「ごちそうになります!ライ、外でご飯だが何食べたい?」


「さっき見た看板にあったカレー?ってやつが食べたい」


「カレーか、わかった。真二、駅前のとこの店のカレーにするよ」


「じゃあ少し多めに、このくらいかな」


と財布から五千円札を取り出し、渡してきた。


「あれ?真二も行かないのか?」


「すまねぇ今から用事が」


こいつはいつまでも忙しいやつだな。


「まあ、またゴールデンウィークが明けたら学校で話そうぜ」


玄関口で真二に手を振り家を出た。


その時ライが


「あの人は…能力者…」


その言葉に僕は気づかなかった。



その後駅前のカレー専門店に直行した。


普段あまり寄ることはないが美味しいとの噂は聞いている。


「これがカレー…このオレンジのはなに?」


「にんじんだな」


「はむ…」


「うええ…私にんじん苦手、苦い」


普段食べているからか苦いと思わないが、苦手な人にはにんじんが苦く感じるのだろうか。


「にんじんは食べてやるから、他全部食べろよ?」


「了解した!」


勢い良く言うその笑顔に嬉しくなり反射的によしよしと撫でた。迷いもなく甘やかすとか、おじいちゃんかよと思ってしまった。


とその瞬間違和感を感じた。


違和感と言えるのだろうか、右手で撫でているにも関わらず急激に左手が熱くなる。


怪我でもしたのかと自分の手を見ると何も起きていない。左手を見ていると


「どうしたの?」


「あ、いやなんでもない。食べよう」


「カレー、美味しいね」


「今度作り方教えようか、ライなら多分できると思うよ」


とそこでライに言葉を遮られた。


ライが手で待てと示すようにしながら外を見ている。


視線の先には如月佑、クラスメイトが信号待ちをしていた。


あまり関わり合いになったことはないが不良とつるんでいるという噂を耳にしたことがある。見た目ではわからないものだが…。


信号が青になり如月が歩き始めると、ライは思案するように顔に疑問を浮かべた。


「あいつがどうかしたのか?」


「少し気になっただけ、多分、大丈夫だよ。」


ライが気にすることということは…


「能力のことか?」


「隼人、あまり人前で話さない方がいいよ」


それもそうだな…


「そうだ、朝のことも含めて帰ったら話してくれるか?」


「隠し事も良くないと思うし話せる部分は話すよ。でも私は見た方が早いと思う」


続けてライが言う、


「ここまで来てるのなら直接見るのはすぐだと思うよ」


ライはそう言いながらいたずらに笑った。



家に帰ると時刻はもう2時を指していた。


「服着替えてみるか?」


「うん」


「ちょっと部屋出るからまあ、好きなやつに着替えてみろ」


と服の入った紙袋の中をみて


「あっ!」


とライの声が聞こえた。


「どうした?」


部屋を出ようとドアを開ける手を止めて振り返った。


「服屋さんでこっそり入れてたぬいぐるみがない…」


「そんなことしてたのかよ…」


「話してる間暇だったから隼人の友達の部屋で出した時にそのままにしちゃったかも…」


「忘れてきたかぁ…」


「取りに行く!」


今から行ったら帰るのは17時になるだろう…5月とはいえ危ないだろう。


「明日とかじゃダメか?」


「い…いいけど…うぅ…」


少し涙目になる。そんなに大事なのか、どんなのかは見てないけど、気に入ってたのかな…


「じゃあ俺が取りに行くから留守番を頼めるか?」


「え?取りに行ってくれるの?」


一瞬嬉しそうな顔をしたがその後すぐ申し訳なさそうな顔をした。


「ちょうど真二に用事があったの思い出したんだ、すぐ帰ってくるから」


まぁ用事は嘘だが、今真二の家にいかなければならない気がする。


「う…ごめん…」


「誰か来ても開けるなよ?そこにゲームあるから暇だったらやってて」


ライが携帯型ゲーム機の使い方がわからなさそうに見ていた、それを見て僕はすぐ走って外に出た。

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