第1話
プロローグ
「あ……ああ………」
ビルが立ち並ぶ街は全て中身を露わにするように崩れ、見る限りの景色は全て炎に包まれ、空であったものはすべて黒く染められていた。
中心にその少年はいた。
「ユイ…ごめんな……俺はお前を…」
血だらけになった青髪の少年は白く光る宝石を強く握りしめ、憎しみの表情を浮かべ言う。
「こんな世界…」
その瞬間握りしめられていた宝石は少年の言葉に呼応するかのように光を増し世界の存在は揺らぎ、少年の身は燃やされた花弁のように滅びの声を上げた。
少年は光を増す宝石を握りつぶし砕き、
その瞬間、世界が白く塗りつぶされた。
第一話
今日は天気もよく雲一つない晴天だ。
ふと見るとコンビニの駐車場に捨てられたごみに鳩が集まっているのが見える。
「はぁ…なんでこういうことするやつがいるんだろうなぁ…」
隼人はここで集まってると危ないぞと鳩を駐車場から逃げさせて、落ちていたごみをコンビニのごみ箱に捨てた。
本日5月1日、ゴールデンウィーク前最後の学校を終わらせその帰路についていた。
小学生以来の幼馴染ぐらいしかまともに友人はいない…その友人は同じ学校だが中学の3年生、15歳のときに記憶についての研究でノーベル賞を貰ったとかなんかで学校に籍はあるが不定期にきては研究をし続けているらしい。
あれであいつ単位大丈夫なのか?
まぁ…これならわざわざ僕と同じ学校を選ぶ必要はあったのだろうか、自分と一緒の学校を選ぶよりもっといい学校があったのではと少し申し訳なく思う。
まぁ、つまりは自分でも悲しくなるが高校二年生の今でも一緒に帰るような友人はいないのだ。
はぁ…めんどうだと部活に入らず帰宅部の自分が悪いのだがほかの皆は青春を謳歌しているのだろうと世界の不条理を嘆いた。
ぼーっと電車に乗り、住んでいるアパートに着く。
スマホを見ると15時だった、かなり早く帰れたな。ドアを開けると置いてある固定電話のランプが光っていた。
履歴を見てみると電話には不在着信が三件きていた。どれも同じ電話番号からのようだが…
携帯ではなく固定電話にかけてくる人は学校関連でなければ特に覚えはない。まぁかかってきていた電話番号も学校のものではないのだが…
うーん…誰だろう、クラスメートの可能性も考えられるしとりあえずはかけ直してみようか。
かけ直してみると受話器から思ってもいなかった音声が流れる。
「おかけになった電話番号は現在使われておりません」
今日かかってきていた番号なのにそんなことあるのか?と恐怖心を誤魔化し苦笑いをし、受話器を置こうと耳から離そうとした瞬間
不意に機械音声が止まりそれと同時、後ろでドサッと何かが落ちたような音が聞こえた。
なんだ?と後ろを見ようとしたその時
「おい?おーい?」
電話越しに声が聞こえてきた。その声の主は真二、幼馴染の声だった。
深呼吸を一度挟んで電話に応えた。
「すまんちょっとホラー現象が…」
と後ろを見たが何もなかった。さっきのは…
「あ、いや、なんでもない聞こえてるよ。なんだ真二?てかお前携帯持ってるだろ、携帯変えたのか?」
「いや、俺の携帯が電源押してもつかなくてな、アパートにある固定電話からかけようかと、普段はそんな使わないんだけどな…
それでかけたらお前の携帯にもつながらなくて、お前の家の固定電話に留守電でも残せるかなと思って、残ってるか?」
「いや、なかったけど…」
「立て続けに不幸だなぁ…あ、残ってないなら今言うからよく…」
プツッ…ツーツー……
突然切れた。
何度かかけ直してみる…がもう出てくることはなかった。
緊急の用事なのだろうか、とりあえずあいつの家に行ってみようと財布をもって外に出ようとすると
「待って」
背後から声がした。そこには少女が立っていた。
「おはよう、外に出てはだめだよ」
少女は話し掛けてきた
え―――
後ろから突然話しかけてきたのは小柄で白髪に綺麗な蒼い目の少女だった。見かけは8歳くらいだろうか…、身長は120センチほどに見える。
「えっと……君は?」
「ん…?名前のこと?あ…あれ…?思い出せない…」
と少女は後ろにかけていた青いリュックサックから手帳を出す。
その手帳は斜めに黄色い3本線が入っている黒い少し古びた手帳だった。
人のものを覗き見るのは不作法だろうかと思ったが好奇心が勝ってしまった。申し訳ないと心の中で謝りながら、手帳に写真が貼ってありそれには容姿が瓜二つの金髪の6歳くらいの少女が映っていた。
文字が書いてあるようだったがどうにも認識できないというか…これは…読めない。
「私の名前はライ…だと思う」
彼女は手帳で、なにかを見つけたような表情をしながらそう答えた。
自分の名前を忘れることってあるのか…
ふむ、らい…?雷、来、いや姿からして日本人ではないか。外国の人でもまあ珍しい名前ではあるとは思うが…
「というか一体どこから」
「…お家?それが過ごしていた場所を聞いているのだったら…あそこ…」
少女が窓の外を指差す。
指を差す先の風景、それはブランコに滑り台…あそこは……
「いや公園じゃねぇか!」
「公園?わからないけど、うん」
「そうじゃなくてここにどうやって」
「うん。そんなことよりも今カイト君が外に出るのは危険だよ。」
スルーされた。
「い、いやカイトって誰だ?俺は隼人だけど、それに危険…?」
「隼人?でもその色は…記憶違いだったかもしれない、ごめんなさい」
そういいつつも疑問を顔に浮かべながら続けて少女は話しかけてきた。
「あなたの能力はなに?それともそういうものを隠せるような能力なの?できればわかりやすく教えてほしい」
まったく言ってることがわからない。
「能力?なんのことだ?」
「説明は苦手…だけど知らないってことはわかったよ、見る限りここには知らない人しかいないみたいだし。じゃあ自分の周りで異変みたいなそんなことは起きてない?」
「異変か…電話が繋がらなかったことを言ってるのか?」
「それはあなたじゃない、あなたが原因で周りに異変とか…」
あなたじゃない?他に誰かが…?電話が繋がらなかったの一言で真二のことを思い出した。
「あ、ごめん、もし外が危険でも友達が呼んでるんだ、外に出なきゃならない」
「そっか…、でも正体の不明なディザイアの存在の損失は危険」
手帳を見ながらそう言った。
ライは僕の左手を触り、撫でた。
「な、なに?…」
左手が急に熱くなりそれと同時、視界がぼやけて意識が遠のいていく。左手が焼け焦げるかのように熱く感じたが痛くはなかった。
「少なくとも今日は出ちゃいけないよ。まぁ出れないと思うけど」
「外で何が起きてるか、そのうちすぐにでもわかるよ、か…じゃなくて、えっと隼人だっけ」
ライはそう言いながら僕をソファーに引っ張り仰向けに寝かせた。
視界が暗転する直前見えた窓の外では、5月にも関わらずなぜか雪が降っていた。