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第1羽、男性は女性向けソシャゲがお嫌い?(1)

桃ノ湯──桃源郷の桃を使用した湯を堪能でき、桃饅頭やピーチミルク、マッサージチェア等が光線により負担がかかった放浪者の心身を癒してくれる。

建物は三階になっているが、放浪者が利用出来るのは二階まで。

そこでは銭湯に次ぐ彼らへのサービス『異世界転生』が行われていた。


(気持ち良かったなあ)

一番風呂をいただき、マッサージチェアに腰掛けた紅月百は心地良さを覚える。どうやらここでは朝の掃除を終えた後、従業員が先に入浴しても良いことになっていた。

腰から背中にかけてごりごりとマッサージされ、「嗚呼〜」と声を出してしまう。

「ついに初出勤だね!」

「あ、あ……いっ」

そこに現れたのは桃色髪の雇い主──モモだ。今朝から変わらず笑顔を浮かべ、覗き込まれる。

「そんな緊張しなくても大丈夫、大丈夫。最初は私が間に入るから」

どうやら声が震えたのは緊張のせいだと捉えられたようだ。

一応、百の肩書きは異世界案内係兼、モモのサポート役のはずなんだが。

(どっちがサポート役なんだ?)

スイッチを切り、ペタンと磨かれたフローリングへ足をつける。目線はモモの膝小僧。肌つるで長さもある脚を見上げても桃のような胸で顔が見辛い。

元から小柄なわけではない。背が縮んだのとは少し違う。

「桃ノ湯開店以来、初のペンギン従業員に放浪者さん達もきっとメロメロだよ〜」

そう。全身黒と白のツートンカラーで決めたフォーマルスーツ……だったら良かったのだが、フリッパーと嘴がある時点でコメディチックだ。つまり、ペンギン。日本で一番多く飼育されていると呼ばれるフンボルトペンギンだった。

頬を緩ませ、指で四角いカメラを作るモモにフリッパーで顔を隠す。

「もう、揶揄わないでください!」

「まあまあ。可愛いのは本当でしょ? 湯船に浸かっても不安に押し潰れてしまう放浪者さんがいるのは事実だし、よく似合っているよ」

隣にある全身鏡にはホットパンツとタートルネックセーターを着る美人の前に愛らしいフンボルトペンギン。

(見た目は可愛いけど、中身が僕なんだよな)


『ぼ、僕、ずっとこのままなんですか?』

あの日、人間でなくなった百はさらに問い詰めた。

『いいや。一日の中で元に戻る時はあるよ。元は人間だからね、君』

深刻な状況下に冒されパニクっていたが、害はなさそうで安堵の息をつく。ペンギンは好きでもペンギンになりたいとは望んでいなかった。

『ただ、さっきも話したように本来、人間……というか放浪者はあまりここに長く留まってはいけないの。銭湯や飲食物、私のまじないもめちゃくちゃ強力じゃない。それだけは覚えておいてね』


なぜ、そんなことを突然言い出したか。

雇い主として大事な注意事項だったのだろう。百も大切なことは言え、と反論はしていた。

だが少し、背筋がゾッとした。

「おーい、紅月百君。そろそろ今日のお客様が来るよー!」

気がつけばモモは暖簾を頭に被せながら手招きをしている。

(なんにせよ、現世に戻って高校生活を送るために頑張るぞ!!)


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